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2023年1月19日 (木)

2022年12月統計に見る貿易赤字はそろそろ反転し縮小に転じたか?

本日、財務省から昨年2022年12月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列で見て、輸出額が+11.5%増の8兆7872億円に対して、輸入額は+20.6%増の10兆2357億円、差引き貿易収支は▲1兆4484億円の赤字となり、昨年2021年8月から17か月連続で貿易赤字を計上しています。しかも、2022年通年の貿易赤字は▲19兆9713億円に上り、統計として比較可能な1979年以降で最大の年間貿易赤字だそうです。まず、日経新聞のサイトから記事の最後の2パラだけ引用すると以下の通りです。というのは、記事の多くの部分が2022年通年の統計で占められていますので、12月統計に言及している最後の2パラだけを引用します。

貿易赤字最大の19.9兆円 22年、円安と資源高響く
22年12月単月の貿易収支は1兆4484億円の赤字だった。赤字は17カ月連続で、12月としては最大の赤字となった。輸入は前年同月比20.6%増の10兆2357億円、輸出は11.5%増の8兆7872億円だった。石炭や原油などの輸入額が膨らみ、大幅な赤字が続いた。
12月は中国向けの輸出が1兆6178億円と前年同月比6.2%減った。減少は7カ月ぶり。自動車や自動車部品が減った。新型コロナウイルスの感染拡大などが影響したとみられる。

包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、▱兆6800億円あまりの貿易赤字が見込まれていて、予想レンジの貿易赤字の下限は▲2兆円あまりでしたので、実績の▲1.4兆円あまりの貿易赤字は大きなサプライズない印象です。加えて、引用した記事にもあるように、季節調整していない原系列の統計で見て、貿易赤字は昨年2021年8月から今年2022年11月までの17か月連続なんですが、上のグラフに見られるように、季節調整済みの系列で見ると、貿易赤字は昨年2021年4月から始まっていて、従って、21か月連続となります。しかも、直近時点では貿易赤字額がかなり大きいのが見て取れます。季節調整していない原系列の統計で見ても、季節調整済みの系列で見ても、グラフから明らかな通り、輸出額もそこそこ伸びているのですが、輸入が輸出を上回る水準で推移しているのが貿易赤字の原因です。ただし、ここ数ヶ月ではさすがに輸入の伸びは反転した可能性すらあり、貿易赤字がこのまま一本調子で拡大するとは考えにくく、むしろ、昨年2022年後半に毎月▲2兆円超の貿易赤字を記録していたころから赤字幅は着実に縮小しています。円安も一時に比べて落ち着きを取り戻しているのは多くのエコノミストの意見が一致するところです。ですので、私の主張は従来から変わりなく、エネルギーや資源価格の上昇に伴う輸入額の増加に起因する貿易赤字であり、輸入は国内生産や消費などのために必要なだけ輸入すればよく、貿易赤字や経常赤字は何ら悲観する必要はない、と考えています。
11月の貿易統計を品目別に少し詳しく見ると、まず、輸入については、国際商品市況での石油価格の上昇から原油及び粗油や液化天然ガス(LNG)の輸入額が大きく増加しています。しかし、前年同月比の伸び率は大きく縮小しました。すなわち、原油及び粗油は数量ベースで+1.2%増に過ぎないのですが、金額ベースでは+41.4%増と円安を含む価格要因によって大きく水増しされています。でも、昨年2022年10月統計までは原油及び粗油の輸入金額はほぼほぼ倍増でしたので、伸びは大きく鈍化してきている印象です。LNGも同じで数量ベースでは▲13.8%減であるにかかわらず、金額ベースでは+36.8%増となっています。加えて、食料品のうちの穀物類も数量ベースのトン数では+2.3%増に過ぎませんが、金額ベースでは+33.2%増とお支払いがかさんでいます。また、ワクチンを含む医薬品も増加しています。すなわち、前年同月比で見て数量ベースで+26.5%増、金額ベースではこれが膨らんで+50.9%増を記録しています。でも、当然ながら、貿易赤字を抑制するために、ワクチン輸入を制限しようという意見は少数派ではないか、と私は考えています。目を輸出に転じると、輸送用機器の中の自動車は季節調整していない原系列の前年同月比で数量ベースの輸出台数は▲8.2%減ながら、輸出金額では+16.2%増と伸びています。また、一般機械+23.9%増、電気機器+12.4%増と、我が国リーディング・インダストリーはそこそこ高い輸出の伸びを示しています。ですから、繰り返しになりますが、輸出額の伸びを上回る輸入額の伸び、中でも価格要因が貿易赤字の原因であり、私はむしろ、少ない輸出で多くの輸入が出来ているお得感すらあると感じています。

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