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2023年1月 6日 (金)

米国雇用統計は堅調だが賃金と物価の上昇は一段落か?

日本時間の今夜、米国労働省から昨年2022年12月の米国雇用統計が公表されています。非農業部門雇用者数の前月差は昨年2021年から着実にプラスを記録していましたが、直近の12月統計では+223千人増となり、失業率は前月からさらに低下し3.5%を記録しています。まず、USA Today のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を6パラ引用すると以下の通りです。

Live updates: Jobs report is out today. Economy added 223,000 jobs in December.
Hiring slowed modestly in December as employers added 223,000 jobs to close out an otherwise booming year, possibly foreshadowing the deeper pullback and recession that many economists expect in 2023.
The unemployment rate fell from 3.7% to 3.5%, the Labor Department said Friday.
Economists surveyed by Bloomberg had estimated that 200,000 jobs were added last month.
For all of 2022, the U.S. added 4.5 million jobs, second most behind the 6.7 million gained the previous year, as the nation continued to heal from record job losses in the early days of the COVID-19 pandemic.
What the Fed really wants:Putting the brakes on runaway wage growth could help avoid a recession in 2023, but it won't be easy.
Job gains for October and November were revised down by a total 28,000. October's was revised from 284,000 to 263,0000 and November's, from 263,000 to 256,000, painting a slightly weaker portrait of job growth in the fall.

よく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。NBERでは2020年2月を米国景気の山、2020年4月を谷、とそれぞれ認定しています。ともかく、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが広がった2020年4月からの雇用統計は、やたらと大きな変動があって縦軸のスケールを変更したため、わけの判らないグラフになって、その前の動向が見えにくくなっています。少し見やすくしたんですが、それでもまだ判りにくさが残っています。

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ということで、米国の雇用は非農業部門雇用者の増加がまだ+200千人をかなり超えているわけですし、失業率もさらに低下して3%台半ばのここ50年来の水準を続けているわけですので、労働市場の過熱感は継続していると考えるべきです。もちろん、インフレ高進に対応して連邦準備制度理事会(FED)が極めて急速な利上げを実行していますので、ひとまず、景気には急ブレーキがかかりつつあり、このままリセッションまで突き進むことを危惧する見方も少なくないようです。ただし、引用した記事の3パラ目にあるように、Bloomberg による市場の事前コンセンサスでは+200千人程度の雇用増との見通しだったので、実績はやや上振れた印象です。加えて、失業率も金融政策が決定される米国連邦公開市場委員会(FOMC)のメンバーが長期的な均衡水準と考える+4%を下回った状態が続いています。

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続いて、上のグラフは、米国における時間あたり賃金上昇率と消費者物価上昇率の推移です。連邦準備制度理事会(FED)による強力な金融引き締めに従って、賃金上昇率も、消費者物価上昇率も、ともにピークを超えた印象ですが、消費者物価指数の伸びで計測したインフレ率は、FEDが目標とする+2%をと比較して高い水準にあり、金融引締めが終了する段階に達したとは見受けられません。私がいつも大学の授業で強調しているように、市場経済では価格をシグナルとする資源配分が効率的であるわけですから、インフレで価格シグナルに撹乱が生じるのは効率性を大きく阻害します。ですから、インフレを抑制すべく、極端にいえば、景気を犠牲にして景気後退を招くことをいとわず物価の安定を目指すべき、という経済政策運営上のコンセンサスがあります。ですから、私は、コトここに至っては、米国や英国をはじめとする他の先進諸国のうち、インフレ抑制=物価安定のために景気後退を覚悟の上で金融引締めを継続する国は決して少なくないと考えています。

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