帝国データバンク「金利上昇による企業への影響アンケート」の調査結果やいかに?
やや旧聞に属する話題ながら、ちょうど1週間前の1月17日に帝国データバンクから「金利上昇による企業への影響アンケート」の調査結果が明らかにされています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。まず、帝国データバンクのサイトから調査結果の概要を3点引用すると以下の通りです。
調査結果
- 今後金利が上昇した場合、自社の事業に「プラスの影響の方が大きい」と見込む企業は8.5%にとどまった一方、「マイナスの影響の方が大きい」は40.0%で最も高くなった。他方、「どちらとも言えない(プラスとマイナス両方で相殺)」としている企業は31.4%だった
- 「大企業」において、「マイナスの影響の方が大きい」とした企業は全体より4.4ポイント高くなった。業界別では『不動産』における「マイナスの影響の方が大きい」割合は54.8%と突出して高く、全体を大幅に上回った
- 金利上昇で見込んでいる具体的な影響について、「借入金の支払利息が増える【マイナスの影響】」が56.5%でトップ。次いで、「輸入価格の低下(物価高騰の抑制)【プラスの影響】」が38.3%、「利息が高くなり資金調達しづらくなる【マイナスの影響】」が30.7%で続いた
私自身は、金利上昇は企業にとってはメリットは小さい、というか、デメリットのほうが大きいと考えているのですが、私の想像にマッチした結果が示されていると思います。ということで、リポートからいくつか図表を引用しつつ、簡単に取り上げておきたいと思います。
まず、上のグラフはリポートから 金利上昇による事業への影響 を問うた結果です。大雑把に、マイナスの影響が40%、プラスの影響が10%、プラス・マイナスで相殺が30%、となっています。当然、金利上昇が金利負担を増加させるので、マイナスの影響はそこから生じます。他方で、相殺というのは、このマイナスの影響を為替の動向が打ち消すからだという回答が多いようです。プラスの影響は為替の円高化による輸入価格の低下や為替安定が上げられていますが、何と、金融政策の正常化を上げる企業もあります。地銀や信金・信組なのではないかという気はします。というのは、利ざやの回復が収益につながる、といった趣旨の信用金庫・同連合会の回答が示されているからです。
続いて、上のグラフはリポートから 金利上昇による事業へのマイナスの影響 を規模別と主要業界別に問うた結果です。グラフの順は逆になりますが、右側の主要業界別では、借入れの大きな業界が並んでいるのではないかと私は受け止めています。左側のグラフでやや不思議なのは、規模別で大企業ほど金利上昇のマイナスの影響が大きいと回答している点です。金利負担という点から考えれば、規模の小さい企業ほどマイナスの影響が大きいと、私は単純に考えていたのですが、どうも違うようです。私の勝手な解釈ですが、一般的な論調が金利引上げ、というか、我が国でも先進各国にならって金融引締め、という方向に傾いているので、世間一般の議論を受け入れている割合を示している可能性があるかもしれない、と考えないでもありません。まあ、違っているかもしれません。謎です。
伝統的な経済学では、マクロ経済を構成する4主体のそれぞれの貯蓄投資バランスは、政府と海外がバランス、家計が貯蓄超過、企業が投資超過、と考えられてきました。家計の貯蓄を企業が投資するわけです。でも、バブル経済崩壊後の日本では企業までが貯蓄超過になって、その分、政府が大赤字になっています。ですから、ひょとしたら、貯蓄超過の企業において金利受払いはネットで収益をもたらしている可能性がある、のかもしれません。
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