1月統計に見る企業物価指数(PPI)上昇率はピークアウトしたか?
本日、日銀から1月の企業物価 (PPI) が公表されています。ヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は+9.5%まで上昇幅が拡大しました。まず、日経新聞のサイトから統計を報じる記事を引用すると以下の通りです。
企業物価指数、1月9.5%上昇 企業の価格転嫁続く
日銀が10日発表した1月の企業物価指数(速報値、2020年平均=100)は119.8と、前年同月比9.5%上昇した。指数は過去最高だった前月から横ばいだった。上昇率は前月の10.5%から鈍化したものの、高水準で推移している。エネルギー関連を中心に企業が原材料コストの負担を価格転嫁する動きが続いている。
企業物価指数は企業間で取引するモノの価格動向を示す。上昇率は民間予測の中央値である9.6%を0.1ポイント下回った。22年12月の上昇率は10.2%から10.5%に上方修正され、1980年11月(11.8%)以来の高水準となった。
品目別にみると、電力・都市ガス・水道や金属製品などで高い伸び率が続く。電力・都市ガス・水道は49.7%上昇、金属製品は12.8%上昇した。消費者に近い飲食料品(8.0%上昇)などでも上昇が目立つ。公表している515品目のうち前年同月比で上昇した品目は88%と、幅広い品目で値上がりがみられる。
一方、国際商品価格の下落や円安進行の一服を背景に、サプライチェーン(供給網)の川上に近い品目では価格が下落している。石油・石炭製品は12月に前年同月比8.1%上昇していたが、1月は0.5%の下落に転じた。木材・木製品も1月は8.2%下落と、12月(4.8%下落)からマイナス幅を拡大させた。
輸入物価の伸びも減速している。輸入物価指数の円ベースの上昇率は17.8%と高水準ではあるものの、直近ピークの22年7月(49.2%)からは大きく低下している。
注目の指標のひとつであり、やや長くなりましたが、包括的によく取りまとめられています。続いて、企業物価(PPI)上昇率のグラフは下の通りです。国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率をプロットしています。また、影を付けた部分は景気後退期を示しています。
引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、企業物価指数(PPI)のヘッドラインとなる国内企業物価の前年同月比上昇率は+9.6%と見込まれていましたので、実績の+9.5%はほぼほぼジャストミートしたと私は受け止めています。PPI上昇の要因は主として2点あり、とりあえずの現象面では、コストプッシュが大きな要因となっています。すなわち、第1に、国際商品市況の石油価格をはじめとする資源価格やエネルギー価格の上昇とその波及を受けたの上昇です。ただ、この要因は、グラフからも明らかな通り、輸入物価上昇率がピークアウトしたのは明らかで、国内物価についても上昇幅が縮小しはじめたように見えますが、現段階では、国内への波及の方が主役となりつつあると私は考えています。消費者物価への反映はまだしも、企業間ではある意味で順調に価格転嫁が進んでいるという見方も成り立ちます。さらに、第2に、ディマンドプルの要因も含みつつ、前年同月に比べて為替レートが減価している円安要因です。ただし、これも広く報じられている通り、日銀に金融政策スタンスの微妙な変更により、円安は一定修正され始めています。
品目別には、引用した記事にもあるように、前年同月比で見て、電力・都市ガス・水道+49.7%、鉱産物+35.4%のほか、鉄鋼+19.2%、パルプ・紙・同製品+14.6%、金属製品+12.8%、窯業・土石製品+11.7%が2ケタ上昇となっています。しかし、ウッド・ショックとまでいわれた木材・木製品は先月統計からマイナスに転じて、1月統計でも▲8.2%の大きな下落を記録していますし、石油・石炭製品もとうとう▲0.5%のマイナスに転じました。もちろん、上昇率は鈍化しても、あるいは、マイナスに転じたとしても、価格としては高止まりしているわけですが、そろそろ、エネルギー価格についてはすでにピークアウトした可能性があると考えるエコノミストが多いと私は考えています。例えば、上のグラフでは資源価格に牽引された輸入物価上昇率が最近時点で大きく上昇率を鈍化させているのが見て取れます。ただし、飲食料品については+8.0%とまだ高い上昇率です。生活に不可欠な飲食料品ですので、政策的な対応は必要かと思いますが、市場価格に直接的に介入するよりは、消費税率の引き下げとか、所得の増加などが市場メカニズムを生かした望ましい政策と私は考えています。
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