先行き期待が垣間見える景気ウォッチャーと黒字幅縮小続く経常収支
本日、内閣府から1月の景気ウォッチャーが、また、財務省から昨年2022年12月の経常収支が、それぞれ、公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは、季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から▲0.2ポイント低下の47.9となった一方で、先行き判断DIは+1.9ポイント上昇の47.0を記録しています。また、経常収支は、季節調整していない原系列の統計で+1兆8036億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
1月の街角景気、現状判断指数は3カ月連続悪化
内閣府が8日発表した1月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整済み)は48.5、前の月より0.2ポイント低下(悪化)した。悪化は3カ月連続。家計動向が悪化した。
2~3カ月後を占う先行き判断指数は49.3で、2.5ポイント上昇した。上昇は2カ月連続。家計動向、企業動向、雇用が改善した。
内閣府は景気の基調判断を「持ち直しの動きがみられる」に据え置いた。
22年12月の経常収支、334億円の黒字 民間予測984億円の黒字
財務省が8日発表した2022年12月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は334億円の黒字だった。QUICKがまとめた民間予測の中央値は984億円の黒字だった。
貿易収支は1兆2256億円の赤字、第1次所得収支は1兆7952億円の黒字だった。
同時に発表した22年の国際収支状況(速報)によると経常収支は11兆4432億円の黒字だった。
いつもながら、よく取りまとめられている印象です。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしており、色分けは凡例の通りです。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

現状判断DIは、ここ半年ほどを見れば、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大にほぼ従う形で、やや荒っぽい動きを示しています。上のグラフの通りです。すなわち、COVID-19の感染拡大により、昨年2022年8月45.5、9月48.9、10月50.8と、緩やかに改善してきていたものの、11月49.4、12月48.7の後、今年2023年1月48.5とわずかながら低下しています。足元では、新型コロナウイルスの感染者数も、死者数もピークを超えたと見られるものの、食品やエネルギーを中心に物価上昇が続いていることから、現状判断指数もやや低下気味です。ただ、全国旅行支援や入国制限の緩和が後押しとなってホテルや飲食店などから来客数が増加しているという見方も出始めていて、先行き判断DIは昨年2022年12月統計でも1月統計でも上昇しています。従って、統計作成官庁である内閣府では、引用した記事にもある通り、基調判断を「持ち直しの動きがみられる」に据え置いています。1月統計の現状判断DIを前月差で少し詳しく見ると、家計動向関連が▲0.6ポイントの悪化となった一方で、企業動向関連は+0.4ポイントの改善を示しており、差引きで▲0.2ポイントの悪化という結果になっています。しかし、1月統計の先行き判断DIを見ると、小売関連・飲食関連ともに前月から+2.8ポイント改善しており、物価上昇の先行きは不透明な一方で、繰り返しになりますが、全国旅行支援やインバウンドに対する期待が現れている可能性があります。

続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。2011年3月の東日本大震災と福島第一原発の影響を脱したと考えられる2015年以降で経常赤字を記録したのは、季節調整済みの系列で見て昨年2022年10月統計▲6093億円だけです。ただし、赤字ではないとしても、経常黒字の水準は大きく縮小しています。グラフから見て取れる通りです。その要因は貿易収支の赤字です。もっとも、注意しておくべき点があります。すなわち、広く報じられているのでついつい信じてしまうのですが、昨年2022年2月末に始まったロシアのウクライナ侵攻による資源高、あるいはこれに対応した欧米での金融引締めに起因する円安が原因で貿易赤字になっているわけではない点は理解しておくべきです。正確には、季節調整済みの系列で見て、貿易赤字は一昨年2021年8月から2022年12月まで1年半近くに渡って継続しています。サービス収支も合わせた貿易サービス収支ではさらに2か月さかのぼって2021年6月から一貫して赤字が続いています。この期間で貿易収支も、貿易サービス収支も、黒字を記録した月はありません。季節調整していない原系列の貿易収支で見ても、一昨年2021年11月から1年余り連続して貿易赤字となっています。ですから、貿易赤字はウクライナ危機による資源高や円安の半年近く前から始まっている点は見逃すべきではありません。もちろん、国際商品市況で石油をはじめとする資源価格が値上がりしているのは事実であり、資源に乏しい日本では輸入額が増加するのは当然です。消費や生産のために必要な輸入をためらう必要はまったくなく、経常赤字や貿易赤字は何の問題もない、と私は考えていますので、付け加えておきます。
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