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2023年2月22日 (水)

企業向けサービス価格指数(SPPI)はそろそろピークアウトするのか?

本日、日銀から1月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は+1.6%を記録し、変動の大きな国際運輸を除くコアSPPIも+1.5%の上昇を示しています。サービス物価指数ですので、国際商品市況における石油をはじめとする資源はモノであって含まれていませんが、こういった資源価格の上昇がジワジワと波及している印象です。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

企業向けサービス価格、1月1.6%上昇 23カ月連続プラス
日銀が22日発表した1月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は107.4と、前年同月比1.6%上昇した。23カ月連続でプラスだった。観光振興策「全国旅行支援」の割引率縮小やインバウンド(訪日外国人)需要の回復を背景に、宿泊サービスが全体を押し上げた。
機械修理サービスも価格が上がった。光熱費や人件費の上昇を転嫁する動きがみられる。新聞広告も旅行関連の出稿需要の高まりで押し上げられた。
タンカーなどの国際運輸は下落した。海運市況の悪化や円高傾向が影響した。
調査対象となる146品目のうち、価格が前年同月比で上昇したのは98品目、下落したのは16品目だった。

コンパクトによく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは下の通りです。上のパネルはヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、下のパネルは日銀の公表資料の1ページ目のグラフをマネして、国内価格のとサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。企業物価指数(PPI)とともに、企業向けサービス物価指数(SPPI)が着実に上昇トレンドにあるのが見て取れます。なお、影を付けた部分は、日銀公表資料にはありませんが、景気後退期を示しています。

photo

上のグラフで見ても明らかな通り、企業向けサービス価格指数(SPPI)の前年同月比上昇率の2022年中の推移は、2022年6月に上昇率のピークである+2.1%をつけ、その後も、7月と9月は+2.0%を記録しましたが、10月+1.8%、11月+1.7%、12月1.5%、そして、本日公表された1月統計では+1.6%と、ジワジワと上昇幅を縮小させ始めているように見えます。もちろん、前年同期比プラスは2年近い23か月の連続となっていますし、石油価格の影響の大きい国際運輸を除くコアSPPI上昇率は昨年2022年9~11月に3か月連続で+1.5%まで拡大した後、1月でもまだ+1.5%を記録しています。すなわち、上昇幅が縮小し始めたと判断するのは早計かもしれませんが、他方で、少なくとも上昇率がグングン加速するという段階は脱したといえそうです。しかも、ヘッドラインSPPI上昇率は日銀の物価目標に届かない+1%台半ばですから、私の見方からすれば高止まりしているとすら表現しかねます。もう何度も指摘されている点ですが、基本的には、石油をはじめとする資源価格の上昇が円安と相まってサービス価格にも波及したコストプッシュが主な要因と考えるべきです。もちろん、ウクライナ危機に起因する資源高の影響に加えて、新興国や途上国での景気回復に伴う資源需要の拡大というディマンドプルの要因も無視できません。
もう少し詳しく、SPPIの大類別に基づく直近1月統計のヘッドライン上昇率+1.6%への寄与度で見ると、引用した記事にもある通り、機械修理や宿泊サービスなどの諸サービスが+0.71%と大きな寄与を示し、ほかに、石油価格の影響が強い外航貨物輸送、鉄道旅客輸送などの運輸・郵便が+0.32%、リース・レンタルが+0.32%、などとなっています。また、寄与度ではなく大類別の系列の前年同月比上昇率で見ても、特に、運輸・郵便が+2.0%の上昇となったのは、エネルギー価格の上昇が主因であると考えるべきです。ただし、この上昇率も昨年2022年12月の+2.5%からはいくぶん縮小しています。もちろん、資源価格のコストプッシュ以外にも、リース・レンタルの+4.1%、広告の+2.8%の上昇など、ヘッドライン上昇率を超える上昇幅を示している項目は、それなりに景気に敏感な項目であり、需要の盛り上がりによるディマンドプルの要素も大いに含まれている、と私は受け止めています。ですので、エネルギーなどの資源価格のコストプッシュだけでなく、国内需要面からもサービス価格は上昇基調にあると考えていいように私は受け止めています。

最後に、本日公表された企業向けサービス価格指数(SPPI)だけでなく、幅広く物価動向について一般的に考えると、第1に、私はクルーグマン教授がニューヨーク・タイムズで述べているように、一貫して Team Transitory の一員、すなわち、高インフレは一時的とみなしています。第2に、物価上昇が中小企業の価格転嫁を認めないという大企業の過酷な取引慣行によって阻害されるのは好ましくないと考えています。例えば、朝日新聞NHKで報じられているように、中小企業庁では「価格交渉促進月間(2022年9月)フォローアップ調査の結果について」と題して、中小企業10社以上から名指しされた発注元150社の実名を公表しています。こういった点を考え合わせると、あるいは、下請けに対する価格転嫁の受入れ拒否などの不当な取引慣行によって物価が上昇しないのも、日本経済の弱点のひとつかもしれません。ただし、これは企業担当者や経営者の気持ちの問題ではなく、価格転嫁のシステムに関して制度的な裏付けが必要です。

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コメント

下請けに対するイジメ禁止を、是非制度化してほしいものです。中小企業の悲哀をどうにかしたいですが、欧米などは、何か良い仕組みを持ってるんでしょうね。

投稿: kincyan | 2023年2月23日 (木) 08時09分

>kincyanさん
>
>下請けに対するイジメ禁止を、是非制度化してほしいものです。中小企業の悲哀をどうにかしたいですが、欧米などは、何か良い仕組みを持ってるんでしょうね。

まったくです。日本における企業の規模格差はホントに大きいものがあります。でも、アトキンソン流に生産性の低い中小企業を減らそうとするのは間違った方向です。中小企業の生産性が低く見えるのは、大企業による下請けイジメがあるからです。誠に残念ながら、私にも妙案はありません。

投稿: ポケモンおとうさん | 2023年2月23日 (木) 16時07分

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