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2023年3月 7日 (火)

労働政策研究・研修機構(JILPT)のディスカッションペーパー「職業の自動化確率についての日米比較」の試算結果をどう見るか?

10年前のオックスフォード大学研究チームの研究成果 "The future of employment" から人工知能(AI)などの発達によって自動化される、というか、代替される職業に関する関心が高まっています。これに基づいて、先月2月28日付けで労働政策研究・研修機構(JILPT)から「職業の自動化確率についての日米比較」と題するディスカッションペーパーが公表され、かなりあからさまに試算していたりします。こういったマイクロな労働関係は私には専門外なのですが、とても興味ある分野ですので、簡単に取り上げておきたいと思います。まず、参照すべき労働政策研究・研修機構(JILPT)とオックスフォード大学のペーパーへのリンクは以下の通りです。なお、Frey and Osborne のワーキングペーパーは2017年にジャーナルに収録されています。Technological Forecasting & Social Change 114, 2017, pp.254-80 です。中身が違うのかどうかについて、私はチェックしていません。査読が入っているのであれば、多少とも修正はされているのだろうと想像するだけです。

そして、私の興味の対象である 日米における職業12(13)カテゴリー別自動化確率と就業者割合 をJILPTのディスカッションペーパーから引用すると以下の通りです。

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大雑把に理解できなくもないですが、やや疑問あるのは、第1に、日米間で自動化確率に差があるのは当然ですが、総計での差が▲0.035であるにもかかわらず、カテゴリー別に見て、どうして、ここまで大きな差があるのか、という点です。いわゆるボリューム・ゾンで、日本の就業人口割合が10%を超えるカテゴリーを見ると、サービス職業従事者、販売従事者、事務従事者、生産工程従事者ではその差が▲0.1を超えており、▲0.2を超えているカテゴリーすらあります。にもかかわらず総計での確率の差が▲0.035という結果です。やや不思議な気がします。第2に、なぜかすべてのカテゴリーで日本の自動化確率が米国を下回っています。ディスカッションペーパーでは「同じ職種でも日本の方が,職務の遂行において,総じて知覚と巧緻性,創造的知性,あるいは社会的知性のいずれかについて米国より高い水準が求められることを意味している」(p.17)と指摘していますが、経営者団体から盛んに指摘される日本の労働者の生産性の低さは、アレは何だったのだろうか、という気がしますし、何よりも、日本では非正規雇用がこれだけ多いにもかかわらず、自動化確率が低いのは、大きな疑問です。

私の直感では、上のいずれの点においても、特に、第2の点については、客観的に計算された労働政策研究・研修機構(JILPT)の試算結果が正しいと考えています。ついでながら、ちょっとしたご縁もあって、労働政策研究・研修機構(JILPT)の研究者の中には何人か私と面識ある人もいて、このディスカッションペーパーは労働政策研究・研修機構(JILPT)の研究者が書いたものではありませんが、それなりに高い研究能力が認められます。ですから、日本の労働者はほぼほぼすべてのカテゴリーの職種で米国よりも総じて高い水準を維持しているにもかかわらず、低い賃金しか支払われていない、というのが私の直感に従った解釈となります。

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