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2023年3月 3日 (金)

堅調に推移する2023年1月の雇用統計をどう見るか?

本日は、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が公表されています。いずれも1月統計です。失業率は前月から▲0.1%ポイント低下して2.4%を記録し、有効求人倍率は前月から▲0.01ポイント悪化して1.34倍となっています。まず、日経新聞のサイトから各統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

1月求人倍率1.35倍、求職増で低下 失業率2.4%に改善
厚生労働省が3日に発表した1月の有効求人倍率は1.35倍(季節調整値)と、前月から0.01ポイント低下した。2年5カ月ぶりに前月を下回った。有効求職者数は178万1603人で前月から0.6%増え、有効求人数は256万2353人で0.1%減少した。物価高を背景に収入を増やそうと転職を希望する人が増え、求職者1人当たりの求人数を示す求人倍率が低下したとみられる。
総務省が同日発表した1月の完全失業率は2.4%と前月比0.1ポイント低下し、2020年2月以来の水準となった。失業率の改善は2カ月ぶり。
有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人、1人当たり何件の求人があるかを示す。倍率が高いほど職を得やすい状況となる。新型コロナウイルス禍で2020年9月に1.04倍まで落ち込み、その後は上昇傾向にある。22年8月以降は1.3倍台で推移する。
景気の先行指標とされる新規求人数は93万9104人と前年同月比4.2%増えた。業種別では、コロナの感染拡大下でも訪日外国人など客足が堅調だった宿泊・飲食サービスの伸びが大きく、27.0%増加した。原材料の高騰で生産を減らした製造業は4.0%減少した。新規求人倍率は2.38倍で2カ月連続の横ばいだった。
就業者数は6689万人で前年同月比43万人増えた。6カ月連続で増加した。完全失業者数は21万人減少して164万人となった。非労働力人口は65万人減って4161万人だった。休業者数は219万人で30万人減少した。

続いて、雇用統計のグラフは下の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。よく知られたように、失業率は景気に対して遅行指標、有効求人倍率は一致指標、新規求人数ないし新規求人倍率は先行指標と見なされています。なお、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

photo

まず、失業率に関する日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、前月から横ばいの2.5%と見込まれ、有効求人倍率に関する日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスも、これまた、前月から横ばい1.35倍と見込まれていました。ともに前月から横ばいと予想されていましたが、実績では、失業率はわずかに改善し、有効求人倍率は市場予想からやや下振れしました。総合的に見て、「こんなもん」という気がします。いずれにせよ、足元の統計はやや鈍い面もあるとはいえ、雇用は底堅いと私は評価しています。季節調整済みのマクロ統計で見て、労働力人口が前月から+12万人増加し、就業者が+18万人、雇用者も+12万人増加する中で、非労働力人口は▲22万人減少しています。失業者が労働市場から退出して非労働力人口化するわけではなく、逆に、非労働力人口から職を得て雇用者・就業者になるわけですので、失業率の低下の要因としては好ましいと私は考えています。マイクロに産業別の雇用を見るため休業者数に着目すると、昨年2022年12月統計では前年同月から+42万人増と、やや増え方が大きくなっていたのですが、直近で利用可能な本日公表の今年2023年1月統計では▲30万人減となっていて、産業別では、宿泊業・飲食サービス業の▲9万人減が目立っています。また、引用した記事にもあるように、雇用の先行指標とみなされている新規求人数でも宿泊業・飲食サービス業では前年同月比で+27.0%増と大きく伸びており、さらに、+27%の内訳では、パートタイムの+24.2%増に対してパートを除く常用雇用は+32.6%増ですから、質的な中身もいいと考えるべきです。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染状況に応じ、また、インバウンド観光客の水際対策の緩和や国内旅行でも全国旅行支援など、一連の旅行に関する需要の増加が感じられる統計となっています。

最後に、日本時間の本日夜に米国雇用統計も公表される予定となっています。コチラは2月統計です。夜遅くになっても、本日中に取り上げたいと思います。

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