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2023年3月 2日 (木)

いよいよ企業収益が停滞し始めた2022年10-12月期法人企業統計をどう見るか?

本日、財務省から昨年2022年10~12月期の法人企業統計が公表されています。統計のヘッドラインは、季節調整していない原系列の統計で、売上高は前年同期比+6.1%増の372兆5850億円だったものの、経常利益は▲2.8%減の22兆3768億円と8四半期ぶりのマイナスを記録しました。そして、設備投資は+7.7%増の12兆4417億円を記録しています。季節調整済みの系列で見ても原系列の統計と同じ基調であり、売上高と設備投資は前期比プラスながら、経常利益はマイナスとなっています。ただ、GDP統計の基礎となる設備投資については前期比+0.5%増にとどまっています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

法人企業統計、経常益8期ぶりマイナス 22年10-12月
財務省が2日発表した2022年10~12月期の法人企業統計によると、全産業(金融・保険業を除く)の経常利益は前年同期比2.8%減の22兆3768億円だった。マイナスは8四半期ぶり。製造業が15.7%の大幅減で全体を押し下げた。物価高や世界経済の減速が影を落とし、企業業績の拡大にブレーキがかかった。
経常利益の額は10~12月期として過去最高だった前年を下回ったものの2番目に高い水準となっている。
主要業種をみると、製造業は化学が26.9%の減益だった。石油・石炭は赤字に転落した。原材料価格の上昇が響いている。化学は研究開発費もかさんだ。情報通信機械は海外需要の減少を背景に34.4%の減益だった。
非製造業は5.2%の増益だった。新型コロナウイルス禍からの回復基調を保っている。政府の「全国旅行支援」の補助効果があり、運輸業・郵便業は93.7%増と目立って伸びた。
非製造業でも一部の業種は電気料金の高騰が響き、減益となった。22.9%減の情報通信業は電力消費量の多いデータセンターの経費が膨らんだ。サービス業も11.8%減少した。
売上高は6.1%増の372兆5850億円だった。業種別では製造業が9.2%増。輸送用機械関連が13.6%増えた。非製造業は4.9%増で、電気料金の高騰を背景に電気業(44.8%)の売上増が目立った。
設備投資は全体で7.7%増の12兆4417億円と7期連続のプラスだった。デジタル化や省人化などで旺盛な投資が続いているとみられる。非製造業で8.6%、製造業で6.0%伸びた。
製造業は化学(26.2%)や金属製品(56.4%)が大きく増えた。脱炭素やデジタル関連の投資が旺盛だ。非製造業は新規出店が進んだサービス業で21.9%伸びた。
財務省は今回の法人企業統計について「緩やかに持ち直している景気の状況を反映している」と説明した。先行きについては「物価上昇などの影響を注視する」と、コスト高が企業経営を圧迫するリスクに懸念を示した。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がしますが、やや長くなってしまいました。次に、法人企業統計のヘッドラインに当たる売上高と経常利益と設備投資をプロットしたのが下のグラフです。色分けは凡例の通りです。ただし、グラフは季節調整済みの系列をプロットしています。季節調整していない原系列で記述された引用記事と少し印象が異なるかもしれません。影を付けた部分は景気後退期となっています。

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ということで、法人企業統計の結果について、海外景気に依存する割合の高い製造業と内需に基礎を置く非製造業で少し差が出始めた気がします。すなわち、今年2022年に入って1~3月期から内外で物価上昇が進み、日本を除いて先進各国は軒並み金融引締めに転じています。従って、海外経済の停滞から製造業に逆風となる一方で、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止のための行動制限がなく、5月のゴールデンウィーク明けからは5類の季節性インフルエンザと同じ分類に見直されると決定されていることから、水際規制の緩和に伴うインバウンドの復調も合わせて、非製造業には追い風となっています。ですから、前年同期比で見る限り、売上高については増収が続いています。引用した記事にもあるように、物価上昇による名目の売上増という面があります。数量ベースの増加にどこまで支えられているかは不明です。他方で、経常利益は製造業と非製造業で明確な差が出ました。非製造業では+5.2%の増益でしたが、製造業では▲15.7%の大きな減益を記録しています。季節調整済みの系列で見ても同様で、季節調整済みの系列の経常利益では、非製造業が前期比+16.5%となったのに対して、製造業は▲23.7%と大きく落ち込みました。このあたりの産業別の跛行性については、キチンと把握しておく必要があります。同時に、上のグラフを見ても理解できるように、売上高はリーマン・ショック直前のサブプライム・バブル期のピークには達していませんが、経常利益はとっくに過去最高益を突破しています。企業サイドからすればカッコ付きで「体質強化」をいえるのかもしれませんが、従業員や消費者のサイドから考えれば、企業利益ばかりが溜め込まれるのがどこまで現在の日本経済に好ましいのかどうか、もちろん、日本経済がかつての高度成長期のように拡大基調であればまだしも、トリックルダウンはほぼほぼ完全に否定され、ほとん経済成長なしに賃金も上がらない中で、企業部門ばかりが利益を積み上げるのが経済社会的に見ていいのかどうか、疑問とする意見もありそうな気がします。

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続いて、上のグラフは私の方で擬似的に試算した労働分配率及び設備投資とキャッシュフローの比率、さらに、利益剰余金、最後の4枚目は件費と経常利益をそれぞれプロットしています。労働分配率は分子が人件費、分母は経常利益と人件費と減価償却費の和です。特別損益は無視しています。また、キャッシュフローは法人に対する実効税率を50%と仮置きして経常利益の半分と減価償却費の和でキャッシュフローを算出した上で、このキャッシュフローを分母に、分子はいうまでもなく設備投資そのものです。人件費と経常利益も額そのものです。利益剰余金を除いて、原系列の統計と後方4四半期移動平均をともにプロットしています。見れば明らかなんですが、コロナ禍の中でを経て労働分配率とともに設備投資/キャッシュフロー比率が大きく低下を示しています。他方で、ストック指標なので評価に注意が必要とはいえ、利益剰余金は伸びを高めています。また、4枚めのパネルにあるように、人件費が長らく停滞する中で、経常利益は過去最高水準をすでに超えています。繰り返しになりますが、勤労者の賃金が上がらない中で、企業収益だけが伸びるのが、ホントに国民にとって望ましい社会なのでしょうか、それとも、現在の経済社会は誰にとって望ましくなるようになっているのでしょうか?

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最後に、本日、内閣府から2月の消費者態度指数が公表されています。2月統計では、前月から+0.1ポイント上昇し31.1を記録しています。指数を構成する4指標のうち、2指標が上昇しています。すなわち、「雇用環境」が+0.8ポイント上昇し38.0、「収入の増え方」が+0.6ポイント上昇し36.2、他方で、「暮らし向き」が▲0.8ポイント低下して27.0、また、「耐久消費財の買い時判断」も▲0.5ポイント低下し23.0を記録しています。「雇用環境」も「収入の増え方」も改善しているにもかかわらず、「暮らし向き」が悪化しているのは明確に物価上昇が原因です。たぶん、「耐久消費財の買い時判断」についても、いく分なりとも物価上昇の影響が見られると私は考えています。統計作成官庁である内閣府では、消費者マインドの基調判断について、先月1月統計で「弱い動きがみられる」と修正し、今月2月統計ではそのまま据え置いています。

なお、本日の法人企業統計を受けて、来週3月8日に内閣府から2022年10~12月期のGDP統計速報2次QEが公表される予定となっています。私は1次QEから設備投資を中心として小幅に上方修正されるであろうと考えていますが、大きな修正ではなかろうと予想しています。この2次QE予想については、また、日を改めて取り上げたいと思います。

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