6月調査の日銀短観予想では7四半期ぶりの景況感の改善を見込む
来週月曜日7月3日の公表を控えて、シンクタンクから6月調査の日銀短観予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って、大企業製造業/非製造業の業況判断DIと全規模全産業の設備投資計画を取りまとめると下のテーブルの通りです。設備投資計画は今年度2023年度です。ただ、全規模全産業の設備投資計画の予想を出していないシンクタンクについては、適宜代替の予想を取っています。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しましたが、可能な範囲で、先行き経済動向に注目しました。短観では先行きの業況判断なども調査していますが、シンクタンクにより大きく見方が異なっています。注目です。より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開くか、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。
機関名 | 大企業製造業 大企業非製造業 <設備投資計画> | ヘッドライン |
3月調査 (最近) | +1 +20 <+3.9%> | n.a. |
日本総研 | +3 +22 <+10.6%> | 先行き(9月調査)は、全規模・全産業で6月調査から+1%ポイントの小幅な上昇を予想。製造業では、海外景気の減速による需要の鈍化が景況感を下押しする一方、自動車生産の増加が景況感を下支えする見通し。非製造業では、引き続き訪日外国人の増加が見込まれるほか、国内の行楽需要も強く、対面型サービスを中心に景況感は良好となる見通し。 |
大和総研 | +6 +22 <+9.7%> | 大企業製造業では、挽回生産の継続が予想される「自動車」の業況判断DI(先行き)が上昇するとみている。更に、自動車産業における増産への期待感が、「鉄鋼」などの関連業種の業況判断DI(先行き)を押し上げるとみている。 大企業非製造業については、「小売」の業況判断DI(先行き)の低下を見込む。物価高が家計の購買力を低下させることへの警戒感が強まっているとみられる。 |
みずほリサーチ&テクノロジーズ | +2 +22 <+8.8%> | 大企業・製造業の業況判断DIの先行きは2ポイントの改善を予測する。欧米経済は根強いインフレ圧力を受けた金融引き締めの影響で、当面は弱い動きが予想され、輸出の先行き見通しは明るくない。しかし、輸入物価の低下が先行きの企業の収益環境改善に寄与するほか、供給制約の緩和により高水準の自動車生産が続くことが改善要因となろう。 大企業・非製造業の業況判断DIの先行きは1ポイントの改善を予想する。国内のサービス消費については、感染分類の変更や春闘賃上げ率の高まりを背景に、回復傾向での推移が続く見通しだ。インバウンドについては、多くの国からの訪日客は既にコロナ禍前に近い水準まで回復が進んだものの、中国人旅行客の回復は道半ばであるため、今後の増加への期待は強い。 |
ニッセイ基礎研 | +6 +23 <+10.7%> | 先行きの景況感については総じて小幅な悪化が示されると予想している。もともと、短観においては、足元の景況感が改善する際には、先行きにかけて弱含みやすいという統計上のクセがある。また、そうした事情を除いたとしても、製造業では利上げに伴う欧米経済の悪化や中国経済の回復の遅れ、米中対立、原材料価格の再上昇などへの警戒感が先行きにかけてのマインドを圧迫しそうだ。一方で、自動車の挽回生産への期待が支えになるだろう。 非製造業でも、原材料価格の再上昇に加え、物価高に伴う国内消費の下振れや人手不足の深刻化などへの警戒感から、先行きに対する慎重な見方が台頭しやすいだろう。 |
第一生命経済研 | +2 +23 <大企業製造業+12.3%> | 7月3日に発表される日銀短観の6月調査では、大企業・製造業の業況判断DIが前回比+1ポイント改善すると予想される。これは、自動車生産において半導体不足が改善してきているからだ。 |
三菱総研 | +4 +21 <+9.1%> | 先行きの業況判断DI(大企業)は、製造業+5%ポイント(6月時点から+1%ポイント上昇)、非製造業+22%ポイント(同+1%ポイント上昇)と、いずれも改善を予測する。製造業では、引き続き自動車が業況改善を牽引するだろう。ただし、米欧経済減速により輸出が下押しされ、改善幅は小幅にとどまるとみる。非製造業では、抑制されていたサービス消費の回復に加え、賃金上昇による消費押し上げも見込まれることから、業況改善が続くと見込む。 |
三菱UFJリサーチ&コンサルティング | +1 +22 <大企業全産業+8.4%> | 大企業製造業の業況判断DI(最近)は、前回調査(同年3月調査)から横ばいの1と予測する。世界経済の減速を受けて化学や生産用機械等の業況感は悪化する一方、半導体不足の緩和により自動車の業況感が大きく改善し、6四半期ぶりに悪化に歯止めが掛かろう。先行きは、原油価格の下落を受けた交易条件の改善や自動車生産の持ち直しが期待され、2ポイント改善の3と楽観的な見通しになると予測する。 |
農林中金総研 | +3 +24 <+4.2%> | 先行きに関しては、引き続きコスト高止まりによる値上げの動きが収益圧迫につながるとの懸念が強いほか、欧米での本格的な金融引き締めによる世界的な景気後退への警戒などが景況悪化につながるとみられる。以上から、製造業では大企業が1、中小企業が▲8と、今回予測からそれぞれ▲2ポイント、▲3ポイントの悪化予想と見込む。非製造業も大企業が22、中小企業は8と、今回予測からそれぞれ▲2ポイント、▲3ポイントの悪化予想を見込む。 |
明治安田総研 | +2 +21 <+9.3%> | 6月の先行きDIについては、大企業・製造業は+4、中小企業・製造業は▲3と、いずれも2ポイント改善を見込む。中国景気の回復ペースの鈍さに加え、米国では金融引き締めの影響が浸透することで、海外景気は徐々に減速すると見込まれる。一方で、供給制約の改善傾向は続くとみられるほか、エネルギーや穀物などの一次産品価格が落ち着いた推移に転じていることから、内需のプラス要因が外需のマイナス要因を上回る形で、先行きの業況は改善したと予想する。 |
大雑把に平均的な日銀短観予想を見ると、ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIが7四半期ぶりに改善するとの予想が多くなっています。ただし、その改善幅は決して大きくなく、せいぜいが1~2ポイントとの予想になっています。大企業製造業の業況判断DIが改善する大きな要因は、世界的なインフレの沈静化に伴う輸入物価の落ち着きが収益構造を改善する点に加えて、我が国のリーディング・インダストリーである自動車産業などで半導体などの供給制約が緩和されることです。ただし、先行きについては、そのインフレ沈静化のコストとして金融引締めが及ぼす先進国をはじめとする世界景気の停滞が懸念されます。非製造業においても、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の分類変更に伴うサービス消費の拡大やインバウンド消費の回復に支えられて、それなりに景況感は回復しているものの、先行きについては物価高による消費停滞の可能性、人手不足といった供給サイドの要因に加えて、インバウンド需要についても中国からの観光客の動向といった懸念が残り、少なくとも一直線の景況感の改善を見込むエコノミストは少ないように私は感じます。一昨日に日銀から公表された企業向けサービス価格指数(SPPI)を見ても、エネルギー価格からの波及や需要に支えられた物価上昇も始まっているように私は感じていますが、賃金上昇と消費増加の好循環の拡大が望まれます。
最後に、下のグラフは三菱UFJリサーチ&コンサルティングのリポートから業況判断DIの推移を引用しています。
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