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2023年6月26日 (月)

+1%台半ばの上昇が続く5月の企業向けサービス価格指数(SPPI)をどう見るか?

本日、日銀から5月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は+1.6%を記録し、変動の大きな国際運輸を除くコアSPPIは+1.9%の上昇を示しています。サービス物価指数ですので、国際商品市況における石油をはじめとする資源はモノであって含まれていませんが、こういった資源価格の上昇がジワジワと波及している印象です。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

企業向けサービス価格、5月1.6%上昇 訪日客増が寄与
日銀が26日発表した5月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は108.5と前年同月比1.6%上昇した。27カ月連続で前年同月を上回った。伸び率は前月と同じだった。訪日外国人(インバウンド)の増加で宿泊サービスの需要が増えた。大型連休で飛行機や新幹線を使った移動が増えたことも、指数を押し上げた。
宿泊サービスは前年比で38.4%上昇し、過去最高の伸び率だった。ダイナミックプライシング(変動価格制)を導入する企業が増えていることも、宿泊費の上昇につながった。鉄道運賃の改定も影響した。
リース・レンタルも物件価格の上昇で、同4.6%上がった。
一方、運輸・郵便は0.7%下落した。ウクライナ侵攻に伴う原油価格の高騰が一服し、外航海運や国際航空貨物の運賃が下がった。
調査対象となる146品目のうち、価格が前年同月比で上昇したのは98品目、下落したのは22品目だった。

コンパクトによく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは下の通りです。上のパネルはヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、下のパネルは日銀の公表資料の1ページ目のグラフをマネして、国内価格のとサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。企業物価指数(PPI)とともに、企業向けサービス物価指数(SPPI)が着実に上昇トレンドにあるのが見て取れます。なお、影を付けた部分は、日銀公表資料にはありませんが、景気後退期を示しています。

photo

上のグラフで見ても明らかな通り、企業向けサービス価格指数(SPPI)の前年同月比上昇率の2022年以降の推移は、2022年6月に上昇率のピークである+2.1%をつけ、その後も、7月と9月は+2.0%を記録しましたが、本日公表された5月統計では+1.6%と、ジワジワと上昇幅を縮小させているように見えます。もちろん、前年同期比プラスは2年超の27か月の連続となっていますし、+1%台半ばの上昇率はデフレに慣れきった国民マインドからすれば、かなり高いインフレと映っている可能性が高い、と私は受け止めています。ただし、インフレ率は高止まりしつつも、物価上昇が加速するという時期は脱したといえそうです。しかも、繰り返しになりますが、ヘッドラインSPPI上昇率は日銀の物価目標に届かない+1%台半ばです。
もう少し詳しく、SPPIの大類別に基づいて5月統計のヘッドライン上昇率+1.6%への寄与度で見ると、引用した記事にもある通り、インバウンド需要に支えられた宿泊サービスや機械修理や土木建築サービスなどの諸サービスが+0.96%と大きな寄与を示し、ほかに、リース・レンタルが+0.35%、情報処理・提供サービスやソフトウェア開発やインターネット附随サービスなどの情報通信が+0.15%、その他の不動産賃貸や不動産仲介・管理や事務所賃貸などの不動産が+0.12%などとなっています。逆に、石油価格の影響が大きい外航貨物輸送や国際航空貨物輸送や国内航空貨物輸送などの運輸・郵便は▲0.11%のマイナス寄与となっています。寄与度ではなく大類別の系列の前年同月比上昇率で見ても、運輸・郵便は▲0.7%の下落となっています。エネルギー価格の上昇はほぼ反転したように見えます。他方で、現在の物価上昇については、エネルギーなどの資源価格の波及に加えて、需要サイドからの圧力による物価上昇も始まりつつある、と考えるべきです。

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