そろそろ下降局面に入りそうな機械受注と上昇率はピークアウトしたもののインフレ続く企業物価指数(PPI)
本日、内閣府から5月の機械受注が、また、日銀から6月の企業物価 (PPI) が、それぞれ公表されています。機械受注では、民間設備投資の先行指標であり、変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注が、季節調整済みの系列で見て前月比▲7.6%減の8,315億円となっていて、PPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比で+4.1%上昇したものの、伸び率は6か月連続で鈍化しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
機械受注、5月7.6%減 2カ月ぶりマイナス
内閣府が12日発表した5月の機械受注統計によると、設備投資の先行指標とされる「船舶・電力を除く民需」(季節調整済み)は前月比7.6%減の8315億円だった。マイナスは2カ月ぶりとなる。非製造業からの発注が19.4%減って全体を押し下げた。
QUICKが事前にまとめた市場予測の中央値(1.0%増)を下回った。内閣府は全体の基調判断を7カ月連続で「足踏みがみられる」とした。
業種別では非製造業が2カ月ぶりにマイナスとなった。4月はプラスだった金融業・保険業や運輸業・郵便業からの受注が反動でマイナスに転じた。
金融業・保険業は42.2%減、運輸業・郵便業が13.5%減だった。大型コンピューターといった電子計算機などの需要が低下した。
製造業は3.2%増と3カ月ぶりにプラスだった。造船業が約7.9倍伸びた。エンジンなど内燃機関が寄与した。
単月のぶれを除くために算出した3月から5月の3カ月移動平均は前期に比べて2.1%マイナスだった。
企業物価指数、6月4.1%上昇 伸びは6カ月連続鈍化
日銀が12日発表した6月の企業物価指数(速報値、2020年平均=100)は119.0と、前年同月比で4.1%上昇した。伸び率は6カ月連続で鈍化した。輸入物価上昇による押し上げ圧力が弱まるなかでも、消費者により近い品目を中心に価格転嫁の動きが続いている。
企業物価指数は企業間で取引するモノの価格動向を示す。6月の上昇率は民間予測の中央値である4.3%を0.2ポイント下回った。
いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、機械受注のグラフは下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注で見て前月比+1.1%増の予想でしたから、実績の▲7.6%減は大きく下振れた印象です。統計作成官庁である内閣府では基調判断を「足踏みがみられる」に据え置いています。7か月連続での基調判断の据え置きだそうです。上のグラフで見ても、トレンドとして下向きとなっている可能性が読み取れると思います。ただし、受注水準としてはまだ8,000億円を超えており決して低くはなく、また、4~6月期の見通しでは、前期比+4.6%増の2兆7926億円と見込まれていますので、海外景気が停滞していることを反映していることは確かですが、もともとが振れの激しい統計でもありますし、トレンドとして反転したかどうかはもう少し見極めたい気もします。ただ、そう強気に構えながらも、1~3月期の見通しでは前期比+4.3%増と見込まれていたにもかかわらず、実績では+2.6%増とやや下振れたことも事実ですし、景気局面が回復ないし拡大の後半に差しかかっていることも事実ですから、機械受注のような先行指標は下向きに反転したとしてもおかしくないと考えるのも自然かと思います。5月統計について産業別に少しだけ詳しく見ると、製造業が+3.2%増の4,230億円であった一方で、船舶と電力を除く非製造業は▲19.4%減の3,934億円となっています。非製造業をさらに細かく見ると、金融業・保険業が▲42.2%減、リース業が▲24.8%減、卸売業・小売業が▲19.5%減、運輸業・郵便業が▲13.5%減などとなっています。

引用した記事にはありませんが、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、企業物価指数(PPI)のヘッドラインとなる国内企業物価の前年同月比上昇率は+4.3%と見込まれていましたので、実績の+4.1%はややこれを下回ったと私は受け止めています。引用した記事には、「伸び率は6カ月連続で鈍化」となっていますが、特に輸入物価は4月養鶏から前年同月比でマイナスに転じ、6月統計では▲11.3%の下落となっています。私が調べた限りでも、輸入物価のうちの原油については、これも4月統計から前年同月比マイナスに転じており、6月統計では▲27.9%まで下落幅を拡大しています。6月統計の時点ではまだ1ドル140円ほどの円安が続いていましたが、足元ではやや円高が進行しており、先行きいっそうの輸入物価の下落が数か月は続くものと私は見込んでいます。したがって、今後は、資源高などに起因する輸入物価の上昇から国内物価への波及がインフレの主役となる局面に入ると私は考えています。消費者物価への反映も進んでいますし、企業間ではある意味で順調に価格転嫁が進んでいるという見方も成り立ちます。
国内物価の前年同月比を少し詳しく見ると、ウッド・ショックとまでいわれた木材・木製品が▲22.2%の大きな下落を記録している一方で、電力・都市ガス・水道+5.3%、鉱産物+10.9%のほか、パルプ・紙・同製品+15.7%、窯業・土石製品+15.6%、金属製品+9.4%、鉄鋼+7.8%となっていて、数か月前まで2ケタ上昇の品目がズラリと並んでいたころからは少し様相が違ってきています。もちろん、上昇率は鈍化しても、あるいは、マイナスに転じたとしても、価格としては高止まりしているわけですし、しばらくは国内での価格転嫁が進むでしょうから、決してインフレを軽視することはできません。特に、農林水産物はまだ+10.0%の上昇率ですし、その影響から飲食料品についても+7.4%と高い上昇率を続けています。生活に不可欠な飲食料品ですので、政策的な対応は必要かと思いますが、市場価格に直接的に介入するよりは、消費税率の引き下げとか、所得の増加などが市場メカニズムを生かした望ましい政策と私は考えています。
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