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2023年7月 7日 (金)

5月統計の景気動向指数は「改善」で据え置かれたままでいいのだろうか?

本日、内閣府から5月の景気動向指数公表されています。統計のヘッドラインを見ると、CI先行指数が前月から+1.4ポイント上昇の109.5を示した一方で、CI一致指数は▲0.4ポイント下降の113.8を記録しています。まず、Yahoo!のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

景気一致指数5月は2カ月ぶりマイナス、生産・輸出が下押し
[東京 7日 ロイター] - 内閣府が7日公表した5月の景気動向指数速報(2020年=100)は、指標となる一致指数が前月比0.4ポイント低下の113.8となり2カ月ぶりのマイナスとなった。鉱工業生産、輸出数量、有効求人倍率などが下押しした。自動車などの生産、米国向け輸出数量が落ち込んだ。
指数から一定の基準で自動的に決まる基調判断は、4月改定値時点の「改善を示している」で据え置いた。4月速報値では「足踏み」だったが鉱工業生産の基準改定を反映した改訂の結果、判断を引き上げていた。
先行指数は前月比1.4ポイント上昇の109.5となり2カ月連続のプラスだった。新設住宅着工床面積や東証株価指数、鉱工業用生産在庫率指数の改善が寄与した。
今回から基準年が2015年から2020年に変更された。

いつもながら、動向指数のグラフは下の通りです。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

photo

5月統計のCI一致指数については、当月のCIが下降している上に、3か月後方移動平均でも7か月後方移動平均でも、ともに下降しています。それでも、一致指数の基調判断が「改善」に据え置かれているのは、3か月後方移動平均のマイナス幅が1標準偏差分に達していないから、ということです。基調判断は機械的に行われているので仕方ありませんが、現在の景気局面に関しては、以前から私が主張しているように、明らかに回復ないし拡大局面の後半に入っており、インフレ抑制から先進各国が金融引締めを続けて世界経済が停滞している中で、我が国景気も風前の灯、というか、いつ景気後退局面に入ってもおかしくない、と私は受け止めています。
という前提で、CI一致指数を構成する系列を詳しく見ると、マイナスの寄与が大きい順に、生産指数(鉱工業)▲0.28ポイント、輸出数量指数▲0.25ポイント、鉱工業用生産財出荷指数▲0.23ポイントなどとなっています。他方、プラス寄与は、大きなものでは耐久消費財出荷指数+0.18ポイント、投資財出荷指数(除輸送機械)+0.14ポイントなどが上げられます。景気の先行きについては、国内のインフレや円安の景気への影響などの国内要因はについては中立的、少なくとも、大きなマイナス要因とは考えていませんが、海外要因については、欧米をはじめとする各国ではインフレ対応のために金融政策が引締めを継続していて、米国をはじめとして先進国では景気後退に向かっている可能性が十分あります。景気動向指数の観点からして、生産指数や輸出数量指数が大きなマイナス寄与を示している点に現れています。ですから、全体としては、我が国景気の先行きリスクは中立というよりも下方に厚い可能性があると考えるべきです。

最後に、本日公表された統計からCIの基準年が2015年から2020年に変更されています。詳細は内閣府の公表資料「『景気動向指数』におけるCIの基準年変更等について」で明らかにされています。

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