帝国データバンクによる「『食品主要195社』価格改定動向調査 (2023年7月)」やいかに?
やや旧聞に属する話題かもしれませんが、先週金曜日の6月30日に帝国データバンクから「『食品主要195社』価格改定動向調査 (2023年7月)」と題するリポートが明らかにされています。日本国内の物価上昇はすでにエネルギーの影響によるインフレは反転して食料に主役が移ってきており、食品価格の動向は大きな注目を集めています。まず、帝国データバンクのサイトから調査結果の概要を3点引用すると以下の通りです。
調査結果
- 7月中に年3万品目へ到達 値下げや価格据え置きも年内1000品目に迫る
- 今年の食品値上げ、前年を超える 10月に再び5000品目超えも
- 7月は「パン」 1500品目超の一斉値上げ 年間では5食品分野で前年を上回る
pdfの全文リポートからグラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。
まず、リポートから 2023年の食品値上げ (6月30日9時) 品目数/月別 のグラフを引用すると上の通りです。足元の2023年年央6-7月は、それぞれ、3,500品目を超える食料の値上げが実施ないし計画されています。年度替わりの4月の5,000品目超には及びませんが、値上げのペースは引き続き高水準で推移しているといわざるを得ません。ただ、具体的な数字には示されていませんが、帝国データバンクの分析によれば、値上げ後に店頭での売れ行きが伸び悩む食品も出始めるなど、値上げに対する消費者マインドは寛容さを失いつつあるようで、値上げについていけない消費者の「値上げ疲れ」や「生活防衛」志向を受け、メーカー側でもコストアップ分を都度価格へ転嫁する「値上げ」の勢いは前年ほどの力強さがみられない、と結論しています。先日、6月23日に総務省統計局から消費者物価指数(CPI)が公表された際に着目したESPフォーキャストでも、インフレは徐々に沈静化の方向にあり、来年2024年年央には日銀のインフレ目標+2%程度の達して、さらに上昇率は縮小を続ける、というエコノミストの緩やかなコンセンサスが示されていますから、帝国データバンクの分析においても十分整合性ある、と私は受け止めています。
続いて、リポートから 2023年の値上げ原因別 のグラフを引用すると上の通りです。これは従来通りで、「原材料高」と「エネルギー」が現時点では大きな値上げの要因となっています。ただし、これらに次いで、「包装・資材」と「物流」も注目すべきです。すなわち、SDGsの推進のためのプラスチック製包装資材からの切替え、あるいは、トラック運転手の働き方に根ざす「物流2024年問題」などへの対応費用についても、この先の値上げ要因としてクローズアップされる可能性が十分あります。また、図表は引用しませんが、主な食品分野の価格改定の動向を概観すると、2023年7 月の値上げは、「パン」が全食品分野で1578品目と最多だった点が報告されています。次いで、「加工食品」ではパックごはんやレトルトカレーなどが中心に836品目の値上げが予定されているほか、「調味料」もめんつゆ製品やスパイス製品など619品目値上げ、「菓子」はチョコレート菓子や焼き菓子、ポテトチップス関連製品を中心に242品目の値上げ、などとなっています。

最後に、昨日7月4日、厚生労働省から「国民生活基礎調査」(2022年調査)の概況が公表されています。上のグラフはそのうちの相対的貧困率の推移をプロットしています。先進国が加盟する国際機関である経済協力開発機構(OECD)の加盟国平均は10%少々ですから、我が国の15%を上回る水準はかなり高いと感じざるを得ません。加えて、1人親世帯では40%を大きく上回る貧困率となっており、食品価格の値上げが生活に重くのしかかっているといわざるを得ません。
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