国際通貨基金(IMF)「世界経済見通しアップデート2023年7月」やいかに?
一昨日7月25日に国際通貨基金(IMF)から「世界経済見通しアップデート」World Economic Outlook Update か公表されています。副題は Near-Term Resilience, Persistent Challenges となっており、成長率見通しこそ4月時点から上方修正されていますが、世界経済の先行きに関してやや下方リスクを強調した慎重な内容となっています。なお、当然ながら、pdfの全文リポートもアップロードされています。まず、IMFのサイトから成長率見通しの総括表を引用すると以下の通りです。
ということで、世界経済の成長率見通しは2023年、2024年とも+3.0%と見込まれています。4月の見通しでは、2023年2.8%、2024年+3.0%とされていましたから、今年2023年についてやや上方修正されたことになります。大雑把に、先進国で+0.2%ポイント、新興国・途上国でも+0.1%ポイントの上方修正です。ただし、2022年の実績は+3.5%成長でしたので、成長率は減速していると考えるべきです。日本については、2022年の+1.0%成長から今年2023年+1.4%、2024年+1.0%と成長率はやや加速する見通しです。加えて、2023年については4月の見通しよりも+0.1%ポイント上方修正されています。新興国・途上国については、アジア地域では2022年+4.5%成長から2023年には+5.3%に加速する見込みです。これは、先進国における金融引締めなどにより石油価格が下落する恩恵といえます。すなわち、2022年には+39%上昇した石油価格は、2023年には▲21%下落するとの前提が置かれています。ですから、逆に、中東と中央アジアでは2022年+5.4%成長率が2023年には+2.5%に減速すると予想されています。
次に、注目のインフレについては、IMF Blogのサイトから Headline inflation のグラフを引用すると上の通りです。クルーグマン教授の Team Transitory ではないのですが、現在ないし少し前までのインフレは収束すると見込まれています。ただ、上のグラフを見ても理解できるように、時間が経過して見通しを修正するたびに、インフレ収束のテンポが緩やかになっているように見えます。IMF Blogのサイトでは、インフレのカギは、"labor market developments and wage-profit dynamics" の2点を上げています。このブログでも7月4日付けの記事で欧州のインフレについて取り上げましたが、IMFは企業利益を問題視しているのかもしれません。しかし、いずれにせよ、インフレ率は2022年の+8.7%から2023年には+6.8%に低下し、来年2023年にはさらに+5.2%と、緩やかながら上昇幅を縮小させると見込まれています。特に先進国では、2022年の+7.3%から2023年+4.7、2024年+2.8%と急速にインフレ率は低下し、日本も含めて多くの国でのインフレ目標である+2%に近づくと見込まれています。
| 固定リンク
コメント