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2023年8月 8日 (火)

上昇示す7月の景気ウォッチャーと黒字を計上した6月の経常収支

本日、内閣府から7月の景気ウォッチャーが、また、財務省から6月の経常収支が、それぞれ、公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは、季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から+0.8ポイント上昇の54.4となった一方で、先行き判断DIも+1.3ポイント上昇の54.1を記録しています。また、経常収支は、季節調整していない原系列の統計で+1兆5088億円の黒字を計上しています。まず、読売新聞のサイトから景気ウォッチャーの記事を、日経新聞のサイトから経常収支の記事の最後の3パラを、それぞれ引用すると以下の通りです。

小売店主らに聞いた「街角景気」、前月より0.8ポイント高い54.4…7月調査
内閣府が8日発表した7月の景気ウォッチャー調査によると、小売店主らに聞いた「街角景気」を3か月前と比べた現状判断指数(DI、季節調整値)は、前月より0.8ポイント高い54.4だった。
経常黒字11%増の8兆円 1-6月、資源高が一服
同日発表した6月の経常収支は1兆5088億円の黒字となった。黒字は5カ月連続で、黒字額は前年同月の約3倍だった。
貿易収支は3287億円の黒字だった。黒字になったのは20カ月ぶりだ。原油価格の下落を受けて輸入額は8兆3016億円と14.3%縮小した。原油価格は円ベースで1キロリットルあたり7万1831円と前年同月比で25%下がっている。
輸出額は8兆6302億円と0.5%伸びた。自動車などの輸出が増えた。

シンプルによく取りまとめられている印象です。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしており、色分けは凡例の通りです。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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現状判断DIは、今年2023年に入ってから、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止のための行動制限が徐々にフェイドアウトするとともに、ウクライナ戦争に伴う資源高もほぼ昨年2022年10~12月期にピークを過ぎたことから、緩やかな上昇を見せていました。ただ、6月統計については、COVID-19の感染法上の扱いが5月の連休明けに5類へ移行され、行動制限の緩和がほぼほぼ終了するとともに、景気の改善テンポに一服感が出始め、前月比でマイナスに転じています。7月統計でも、飲食関連やサービス関連では前月か低下したものの、小売関連が大きく上昇したことから家計動向関連が前月から上昇しています。先行き判断DIについては、すでに、先月5月統計でピークとなっており、7月統計では前月6月統計からほぼ横ばいとなっています。ただ、現状判断DIも、先行き判断DIも、ともに50をかなり大きく上回っており高い水準にあると私は受け止めています。統計作成官庁である内閣府もよく似た見方なのか、基調判断は基本的に据え置かれています。すなわち、「景気は、緩やかに回復している。先行きについても、緩やかな回復が続くとみている。」ということです。景気判断理由について近畿を見ると、「インバウンド効果に支えられ、当社の都市部の店舗は絶好調である。郊外店でも、今月の来客数は前年比で3.2%の増加となり、店頭売上も29日までで1.4%の増加となるなど、底堅さがみられる (百貨店)。」といったインバウンドへの言及とか、「3か月前と比較しても、建設資材価格の上昇傾向が続いている (その他住宅)。」といったインフレ関連の意見に私は目が止まってしまいました。もう少しすれば、猛暑の影響が見られるようになるかもしれません。猛暑が景気にプラスなのか、マイナスなのか、気にかかるところです。それはともかく、インバウンドの伸びはいいとしても、インフレについては、本日公表の6月の毎月勤労統計でも実質賃金は前年同月比で▲1.6%減ですので当然です。

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続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。2011年3月の東日本大震災と福島第一原発の影響を脱したと考えられる2015年以降で経常赤字を記録したのは、季節調整済みの系列で見て、昨年2022年10月統計▲3419億円だけです。もちろん、ウクライナ戦争後の資源価格の上昇が大きな要因です。したがって、赤字ではないとしても、経常黒字の水準は大きく縮小してたのですが、この経常収支の変動は主として貿易収支に起因しています。その経常赤字を計上した2022年10月の翌月の11月には+1兆6,045億円の黒字に転じていますし、その後、直近の2023年5月統計までほぼほぼ一貫して経常黒字は+1兆円を超えています。ですから、経常黒字の水準はウクライナ戦争の前の状態に戻っているとはいえ、たとえ赤字であっても経常収支についてもなんら悲観する必要はなく、資源に乏しい日本では消費や生産のために必要な輸入をためらうことなく、経常赤字や貿易赤字は何の問題もない、と私は考えていますので、付け加えておきます。

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