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2023年8月15日 (火)

年率+6%の高い成長率を示した4-6月期GDP統計速報1次QEをどう見るか?

本日、内閣府から4~6月期のGDP統計速報1次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は+0.2%、年率では+0.6%と、3四半期連続のプラス成長を記録しています。なお、GDPデフレータは季節調整していない原系列の前年同期比で+1.1%に達しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

GDP年率6.0%増 4-6月、輸出復調も個人消費は弱含み
内閣府が15日発表した4~6月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比1.5%増、年率換算で6.0%増だった。プラス成長は3四半期連続となる。個人消費が弱含む一方で、輸出の復調が全体を押し上げた。
GDP実額は560.7兆円、コロナ前も上回り過去最高
QUICKが事前にまとめた民間予測の中心値は年率3.1%増で、大幅に上回った。前期比年率で内需がマイナス1.2ポイント、外需がプラス7.2ポイントの寄与度だった。
年率の成長率が6.0%を超えるのは、新型コロナウイルス禍の落ち込みから一時的に回復していた20年10~12月期(7.9%増)以来となる。GDPの実額は実質年換算で560.7兆円と、過去最高となった。コロナ前のピークの19年7~9月期の557.4兆円を超えた。
輸出は前期比3.2%増で2四半期ぶりのプラスとなった。半導体の供給制約が緩和された自動車の増加がけん引した。インバウンド(訪日外国人)の回復もプラスに寄与した。インバウンド消費は計算上、輸出に分類される。
輸入は4.3%減で3四半期連続のマイナスだった。マイナス幅は1~3月期の2.3%減から拡大した。原油など鉱物性燃料やコロナワクチンなどの医薬品、携帯電話の減少が全体を下押しした。輸入の減少はGDPの押し上げ要因となる。
個人消費は前期比0.5%減、3四半期ぶりマイナス
内需に関連する項目は落ち込みや鈍りが目立つ。GDPの過半を占める個人消費は前期比0.5%減と、3四半期ぶりのマイナスとなった。
コロナ禍からの正常化で外食や宿泊が伸び、自動車やゲームソフトの販売も増加した。一方で長引く物価高で食品や飲料が落ち込み、コロナ禍での巣ごもり需要が一巡した白物家電も下押し要因となった。
設備投資は0.0%増と、2四半期連続プラスを維持したものの、横ばいだった。ソフトウエアがプラスに寄与したが、企業の研究開発費などが落ち込んだ。住宅投資は1.9%増で3四半期連続のプラスだった。
公共投資は1.2%増で、5四半期連続のプラスだった。ワクチン接種などコロナ対策が落ち着き、政府消費は0.1%増と横ばいだった。
民間在庫変動の寄与度は0.2ポイントのマイナスだった。
名目GDPは年率換算で12%増、インフレが名目値を押し上げ
名目GDPは前期比2.9%増、年率換算で12.0%増だった。年換算の実額は590.7兆円と前期(574.2兆円)を上回り、過去最高を更新した。
国内の総合的な物価動向を示すGDPデフレーターは前年同期比3.4%上昇し、3四半期連続のプラスとなった。輸入物価の上昇が一服し、食品や生活用品など国内での価格転嫁が広がっている。
雇用者報酬は名目で前年同期比2.6%増えた。実質では0.9%減で7四半期連続のマイナスとなった。物価の上昇に賃金が追いついていない。
世界をみると、米国は4~6月期のGDPが前期比年率2.4%増と前の期から加速した。ユーロ圏も前期比年率1.1%増と3四半期ぶりにプラス成長となっていた。

いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事となっています。次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2022/4-62022/7-92022/10-122022/1-32023/4-6
国内総生産GDP+1.1▲0.3+0.0+0.9+1.5
民間消費+1.8▲0.0+0.2+0.6▲0.5
民間住宅▲1.8▲0.1+0.9+0.7+1.9
民間設備+1.7+1.7▲0.7+1.8+0.0
民間在庫 *(▲0.1)(+0.0)(▲0.4)(+0.4)(▲0.2)
公的需要+0.3+0.0+0.4+0.4+0.3
内需寄与度 *(+1.1)(+0.3)(▲0.3)(+1.2)(▲0.3)
外需(純輸出)寄与度 *(+0.1)(▲0.6)(+0.3)(▲0.3)(+1.8)
輸出+1.9+2.5+1.5▲3.8+3.2
輸入+1.1+5.5▲0.1▲2.3▲4.3
国内総所得 (GDI)+0.5▲1.1+0.4+0.3+0.3
国民総所得 (GNI)+0.5▲1.1+0.3+1.6+2.3
名目GDP+0.5▲0.6+0.9+0.4+2.
雇用者報酬 (実質)▲0.5▲0.2▲0.5▲0.9+0.6
GDPデフレータ▲0.3▲0.4+1.2+2.0+3.4
国内需要デフレータ+2.7+3.2+3.4+2.8+2.3

上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、縦軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された昨年2022年10~12月期の最新データでは、前期比成長率がプラス成長を示し、GDPのコンポーネントのうち、黒の純輸出などがプラス寄与している一方で、赤色の民間消費などのマイナス寄与が目立っています。

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まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは前期比年率成長率が+3.1%でしたし、私もそんなもんと考えていましたので、実績の+6.0%は予測レンジ上限の+4.5%を大きく上回って、ややサプライズだったと私は受け止めています。我が国でも他の先進国と同じようにインフレにより消費の伸びが大きく鈍化して、内需は前期比成長率+1.5%に対する寄与度で▲3.0%のマイナス寄与を示した一方で、半導体などの供給制約が緩和され、生産が伸びた自動車などの輸出が増加しており、外需寄与度が+1.8%と大きくなって、内外需のバランスは決して好ましいとはいえないものの、プラス成長となり、しかも、3四半期連続のプラス成長ですので、基本的に、景気判断としては引き続き堅調と考えてよさそうです。しかも、引用した記事にもあるように、GDPの実額は実質年換算で560.7兆円と、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミック前のピークである2019年7~9月期の557.4兆円を超えています。以下、少しグラフを加えておきたいと思います。

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まず、上のグラフはGDP, GDIと交易利得の実額をプロットしています。GDPとGDI=国内総所得は折れ線で、交易利得は棒グラフとなっています。まず、赤い折れ線のGDPに比べて、水色のGDIのほうが最近時点で傾きが大きくなっているのが読み取れます。これは、まだマイナスながら交易利得で計測される海外への所得の流出がマイナス幅を縮小させている影響ですから、GDP成長率よりもGDIの伸びの方が高く、また、企業や消費者などの国民の経済活動については、GDPよりもGDIの方が実感に近いといわれていますので、海外への所得流出が減少して、景気実感がGDP成長率以上に上向いているのではないか、と私は受け止めています。

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続いて、上のグラフはデフレータの上昇率をプロットしています。取っているのは、GDPデフレータ、国内需要デフレータ、民間消費デフレータで、色分けは凡例の通りです。また、影をつけた期間は景気後退期です。最近時点で、消費者物価指数(CPI)にも現れている通り、国内ではインフレ率が高進していますが、グラフを見ても判るように、本日公表の4~6月期GDP統計でGDPデフレータの上昇率が国内需要デフレータや民間消費デフレータを上回りました。輸入インフレによるコストプッシュで始まった今回の物価上昇が、国内に波及してホームメード・インフレになりつつあることが理解できます。ですから、いよいよ賃上げ、所得の上昇が必要な局面に差しかかった、と考えるべきです。

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最後に、上のグラフは非居住者の購入額、すなわち、インバウンド消費をプロットしています。いよいよ、中国からの観光客についても団体旅行が解禁されましたが、GDP統計では3四半期前、すなわち、2022年10~12月期から本格的なインバウンド消費の盛り上がりが観測されます。このインバウンド消費については、早々にCOVID-19前のピークに達する可能性があります。

台風被害にあわれた方々には心よりお見舞い申し上げます。
3か月前の1~4月期のGDP統計の公表時は、まだ交通事故のために入院しており、半年ぶりのGDP統計に対する解説でしたので、グラフもいつもより少し加えて、それなりにていねいに見ておきたいと思います。

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