失業率や有効求人倍率がやや下ぶれした7月の雇用統計をどう見るか?
本日は、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が公表されています。いずれも7月統計です。失業率は前月から0.2%ポイント悪化して2.7%を記録し、有効求人倍率は前月から▲0.01ポイント悪化して1.29倍となっています。まず、日経新聞のサイトから各統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
7月の求人倍率、1.29倍に低下 失業率は2.7%に
厚生労働省が29日発表した7月の有効求人倍率(季節調整値)は1.29倍で、前月から0.01ポイント低下した。物価高の影響で転職や兼業を目指す動きもあり求職者が増える一方、求人数は横ばいだった。3カ月連続で前月を下回った。
総務省が同日発表した7月の完全失業率は2.7%だった。前月から0.2ポイント上昇した。
有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人1人当たりの求人数を示す。7月の有効求職者数は前月と比べ0.9%増加したが、有効求人数は横ばいで求人倍率の低下につながった。
景気の先行指標とされる新規求人数(原数値)は前年同月比で2.5%減となった。原材料費や光熱費高騰の影響を受けた製造業で11.4%減、建設業では8.0%減少した。
一方で新型コロナウイルスの5類移行をうけ外国人を含む旅行客が増加したことにより、宿泊・飲食サービス業が2.1%の増加となった。
失業率の上昇は4カ月ぶり。完全失業者数は183万人と前年同月比で4.0%増えた。就業者数は6772万人で前年同月に比べ0.3%伸び、12カ月連続の増加となった。男性は1万人減の3713万人、女性は18万人増の3059万人だった。仕事に就かず職探しもしていない非労働人口は4065万人で20万人減った。
会社などに雇われている雇用者のうち、正規の職員・従業員数は3608万人だった。前年同月比で0.02%減り、4カ月ぶりの減少となった。非正規は2143万人で1.8%増と、2カ月連続の増加だった。
続いて、雇用統計のグラフは下の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。よく知られたように、失業率は景気に対して遅行指標、有効求人倍率は一致指標、新規求人数ないし新規求人倍率は先行指標と見なされています。なお、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

まず、失業率に関する日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、前月から横ばいの2.5%と見込まれ、有効求人倍率に関する日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスも、これまた、前月と同じ1.30倍と見込まれていました。実績では、失業率も、有効求人倍率も市場予想からやや下振れしました。ただし、総合的に見て、「こんなもん」という気がします。いずれにせよ、足元の統計はやや鈍い面もあるとはいえ、雇用は底堅いと私は評価しています。季節調整済みのマクロの統計で見て、昨年2022年年末12月から直近の7月統計までの半年少々で、人口減少局面に入って久しい中で労働力人口は+30万人増加し、就業者は+19万人増、雇用者にいたっては+29万人増となっていて、逆に、非労働力人口は▲30万人の減少です。完全失業者は+13万人増加していますが、積極的な職探しの結果の増加も含まれているわけですから、すべてがネガな失業者増ではない、と想像しています。また、季節調整していない原系列の統計ながら、休業者数に着目すると、今年2023年に入ってから休業者は前年同月比で6月統計を唯一の例外として、本日公表の7月統計までまで減少を続けていて、特に7月統計では▲61万人減とと大きく減少しています。1~5月の各月の休業者数の減少を合計すると▲178万人となっていて、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染法上の分類変更から経済活動が正常化しつつあり、同時にインバウンドの拡大もみられる、と私は考えています。エビデンスのひとつは、マイクロな産業別の雇用の先行指標とみなされている新規求人数に現れています。すなわち、宿泊業・飲食サービス業では前年同月比で今年2023年に入ってか、1月統計から直近の7月統計まで一貫して増加を続けていて、7月統計でも前年同月比+2.1%増を記録しています。ただし、雇用の先行きに関しては、それほど楽観できるわけではありません。というのも、インフレ抑制を目指した先進各国の金融引締めから世界経済は停滞色を今後強めると考えられますから、輸出への影響から生産が鈍化し、たとえ人口減少下での人手不足が広がっているとはいえ、生産からの派生需要である雇用にも影響が及ぶ可能性は否定できません。ただ、米国経済をはじめとして、インフレ抑制に成功してソフトランディングの可能性も出始めており、楽観的ではないとしても、それほど悲観的になる必要もないと思いっています。
最後に、ロイターや日経新聞のサイトを見る限り、本日の閣議で「経済財政白書」が公表されたようです。できれば、本日中に軽く見ておきたいと考えています。
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