上昇が再加速した7月の企業向けサービス価格指数(SPPI)をどう見るか?
本日、日銀から7月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は+1.7%を記録し、変動の大きな国際運輸を除くコアSPPIは+2.1%の上昇を示しています。ヘッドライン上昇率は先月6月統計の+1.4%から上昇幅を縮小させ再加速しています。また、2年半近く29か月連続の前年比プラスを継続しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
企業向けサービス価格、7月1.7%上昇 伸び率再加速
日銀が25日発表した7月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は109.1と、前年同月比1.7%上昇した。29カ月連続で前年同月を上回り、企業の出稿控えで広告価格などが下落した6月(1.4%)から伸び率が再加速した。新型コロナウイルス禍からの経済回復やインバウンド(訪日外国人)の増加を背景に宿泊サービスが大きく上昇した。
宿泊サービスは前年同月比で35.6%上がり、6月(26.7%上昇)より上昇幅が拡大した。観光需要が回復したことが影響した。多くの自治体で政府の観光支援策「全国旅行支援」が終わり、割引の影響が縮小したことも伸び幅の拡大に寄与した。
情報通信も上昇した。4~6月ごろからシステムエンジニア(SE)職で人件費の上昇を価格に転嫁する動きがあり、上昇傾向が続いているという。外航貨物輸送は22年7月にそれまで急ピッチだった燃料費の上昇が落ち着いたことから、前年同月比でみると下落幅が縮んだ。
調査対象となる146品目のうち、価格が前年同月比で上昇したのは93品目、下落したのは27品目だった。
コンパクトによく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは下の通りです。上のパネルはヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、下のパネルは日銀の公表資料の1ページ目のグラフをマネして、国内価格のとサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。企業物価指数(PPI)とともに、企業向けサービス物価指数(SPPI)が着実に上昇トレンドにあるのが見て取れます。なお、影を付けた部分は、日銀公表資料にはありませんが、景気後退期を示しています。
上のグラフで見ても明らかな通り、企業向けサービス価格指数(SPPI)の前年同月比上昇率の昨年2022年以降の推移は、2022年6月に上昇率のピークである+2.1%をつけ、その後も、今年2023年に入って先月6月統計で+1.4%まで縮小しましたが、本日公表された7月統計では+1.7%と再加速しました。再加速したとはいえ、大雑把な流れとしては、ジワジワと上昇幅を縮小させているように見えます。もちろん、+1%を超える上昇率はデフレに慣れきった国民マインドからすれば、かなり高いインフレと映っている可能性が高い、と私は受け止めています。ただし、インフレ率は高いながら、物価上昇がさらに加速するわけではなく、むしろ、上昇幅を縮小させる段階に入っている、といえそうです。しかも、繰り返しになりますが、ヘッドラインSPPI上昇率は日銀の物価目標に届かない+1%台を続けています。
もう少し詳しく、SPPIの大類別に基づいて7月統計のヘッドライン上昇率+1.7%への寄与度で見ると、引用した記事にもある通り、インバウンド需要に支えられた宿泊サービスや土木建築サービスや機械修理などの諸サービスが+1.05%ともっとも大きな寄与を示し、ほかに、ソフトウェア開発や情報処理・提供サービスやインターネット附随サービスなどの情報通信が+0.35%、リース・レンタルが+0.28%、その他の不動産賃貸や不動産仲介・管理や事務所賃貸などの不動産が+0.12%などとなっています。逆に、石油価格の影響が大きい外航貨物輸送や国際航空貨物輸送や国内航空貨物輸送などの運輸・郵便は▲0.07%のマイナス寄与となっています。寄与度ではなく大類別の系列の前年同月比上昇率で見ても、運輸・郵便は▲0.4%の下落となっています。また、マイナス寄与の中に、テレビ広告やインターネット広告、新聞広告などの広告も▲0.11%のマイナス寄与、大類別の系列の前年同月比で▲2.2%となっています。広告は景気敏感指標だけに、注視したいと思います。エネルギー価格の上昇はほぼ反転したように見えます。他方で、現在の物価上昇については、エネルギーなどの資源価格からの波及に加えて、インバウンドも含めて需要サイドからの圧力による物価上昇も始まりつつある、と考えるべきです。
最後に、本日、総務省統計局から8月の東京都区部の消費者物価指数(CPI)が公表されています。いつもは注目しないのですが、8月の生鮮食品を除く東京都区部コアCPIの前年同月比上昇率は+2.8%、ヘッドライン上昇率も+2.9%と、2か月連続で上昇率が縮小しています。+2%台の上昇率は昨年2022年9月以来11か月振りです。
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