4-6月期GDP統計速報1次QEは外需の寄与でプラス成長か?
7月末の鉱工業生産指数(IIP)をはじめとして、必要な統計がほぼ出そろって、明日8月15日に4~6月期GDP統計速報1次QEが内閣府より公表される予定となっています。すでに、シンクタンクなどによる1次QE予想が出そろっています。ということで、いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、GDP統計の期間である4~6月期ではなく、足元の7~9月期から先行きの景気動向について重視して拾おうとしています。三菱を冠したシンクタンク2社だけを例外として、ほぼすべてのシンクタンクで先行きに関する言及があります。その中で、大和総研とみずほリサーチ&テクノロジーズについては需要項目のうちの消費だけを引用しましたが、下のテーブルに引用しただけではなく、実は、もっと長々と足元から先行きの見通しについて言及されています。いずれにせよ、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。
機関名 | 実質GDP成長率 (前期比年率) | ヘッドライン |
日本総研 | +0.5% (+1.8%) | 7~9月期の実質GDPもプラス成長が続く見通し。経済活動の正常化によるサービス消費やインバウンド需要の回復が続くほか、供給制約やコスト高から先送りされてきた設備投資の増加が景気回復のけん引役に。 |
大和総研 | +1.0% (+4.2%) | 2023年7-9月期の日本経済は、緩やかながらも回復基調が継続する見込みだ。自動車の挽回生産や経済活動の正常化の進展が個人消費や輸出などを下支えするとみられる。設備投資や公共投資なども緩やかな増加傾向をたどることで、実質GDPは4四半期連続のプラス成長になると見込んでいる。 個人消費は緩やかな回復基調をたどろう。旅行や外食などサービス消費の回復が継続するほか、自動車の挽回生産が本格化すれば、耐久財消費の一段の増加が期待できる。食料品や電力料金などの値上げには注意が必要だが、2023年春闘では30年ぶりの高水準の賃上げ率が実現したこともあり、先行きの個人消費は堅調に推移するとみられる。 |
みずほリサーチ&テクノロジーズ | +0.6% (+2.5%) | 7~9月期以降についても、日本経済は内需を中心に回復継続を見込んでいる。個人消費については、名目賃金が2%台半ば程度で推移する一方、輸入物価の低下を受けて消費者物価の上昇率が年後半は鈍化に向かう見通しであり、引き続き実質賃金の前年比マイナス幅が縮小傾向で推移することが好材料だ。感染懸念の後退に加えて夏のボーナスの増加が押し上げ要因となり、夏場の旅行需要も期待出来そうだ。JTBの「2023年夏休み(7月15日~8月31日)の旅行動向」によれば、国内旅行者数はコロナ禍前と同水準まで回復するほか、国内旅行平均費用もコロナ禍前対比で1割弱の増加が見込まれている。前年に引き続き国内旅行は長期化・遠距離化が加速しているほか、同行者も近しい家族から友人・知人に拡大する傾向が続いており、コロナ禍前の観光風景に戻りつつある。もっとも、円安や人件費の上昇、ガソリン補助金の縮小等により消費者物価の鈍化ペースは緩やかであるとみられる。実質賃金の前年比マイナスは2024年度まで続く可能性が高く、引き続き物価高が個人消費の下押し要因になることに変わりはない(電気・ガス代の価格抑制策については10月以降も延長される可能性が高いが、補助額が縮小されることも考えられる。補助額が半減されれば、CPIの押し下げ幅は現状の▲1.0%Ptから▲0.5%Ptまで縮小することになる)。年後半にかけて全国旅行支援が終了する自治体が増加していく(個人旅行は7月末、団体旅行は9月末までに多くの自治体で終了予定)こと等を受けて、感染懸念後退に伴うサービス分野の回復も徐々に一服に向かうとみられることから、年度後半の個人消費の回復ペースは緩やかなものになる可能性が高いだろう。 |
ニッセイ基礎研 | +0.8% (+3.1%) | 2023年7-9月期は、欧米を中心とした海外経済の減速を背景に輸出が伸び悩む一方、経済社会活動の正常化に伴い民間消費が増加することなどから、現時点では年率1%程度のプラス成長を予想している。 |
第一生命経済研 | +1.0% (+3.9%) | 2四半期連続の高成長ではあるものの内容は冴えず、ある程度割り引いて考える必要があるだろう。実態としては、景気の緩やかな回復傾向が続いているといった評価が妥当と思われる。先行きについても、均してみれば経済活動正常化の流れが続くことで景気は持ち直し傾向で推移するものの、低調な外需が足を引っ張ることで、回復ペースは緩やかなものにとどまると予想している。 |
伊藤忠総研 | +0.5% (+2.1%) | 続く2023年7~9月期は、輸出が欧米景気の減速などから伸び悩むものの、個人消費は物価上昇率の鈍化と賃金上昇の加速を受けて拡大を続け、設備投資も旺盛な企業の投資意欲を背景に増加に転じると見込まれる。その結果、実質GDP成長率は前期比でプラスを維持しよう。今年終盤には欧米景気の底入れから輸出の復調も期待されるため、日本経済は来年にかけて景気の回復傾向が続き、雇用は拡大、来春闘でも高い賃上げ率が続き、デフレ脱却を確実にすると予想される。 |
三菱UFJリサーチ&コンサルティング | +1.0% (+4.2%) | 2023年4~6月期の実質GDP成長率は、前期比+1.0%(年率換算+4.2%)と3四半期連続でのプラス成長が見込まれる。 |
三菱総研 | +0.6% (+2.4%) | 2023年4-6月期の実質GDPは、季節調整済前期比+0.6%(年率+2.4%)とプラス成長を予測する。 |
明治安田総研 | +0.7% (+2.7%) | 先行きの景気は人流回復と賃上げ、インバウンドの回復等が支えになるほか、秋口以降は物価上昇率がピークアウトに向かうことで、実質所得の安定的なプラス転換が個人消費を押し上げると予想する。 一方、海外景気の動向は不安材料となる。今年の中国景気は冴えない不動産市場が足枷となり、力強さに欠ける推移が続く可能性が高い。米国景気は予想以上の底堅さを見せているものの、今後はFRB(米連邦準備制度理事会)による利上げの効果が時間差を伴って顕在化することから、減速に向かうと見込まれる。 2023年後半の日本景気は、インバウンドを除く外需が下押し要因となるものの、内需が底堅く推移することで緩やかな回復基調をたどると予想する。 |
ということで、すべてのシンクタンクが4~6月期の成長率はプラスと予想しています。ただし、中身の方はイマイチで、消費の伸びはマイナスで、設備投資もひょっとしたらマイナスか、あるいは、プラスでも1~3月期の前期比+1.9%の伸びを大きく縮小させる、と予想されています。ですので、内需寄与度はマイナスながら外需寄与度のプラスが大きくて、仕上がりとしてのGDPはプラス成長、という形が予想されています。外需については、自動車産業で部品の供給制約が緩和されたため生産が伸びたことによる輸出増が寄与しています。こういった部品供給の制約を考慮すると、昨年の「通商白書」ではありませんが、経済安全保障について懸念するのは理解できる気がします。でも、理解するとしても、サプライチェーンから中国のウェイトを減じるというのが、どこまで可能なのかは疑問が残ります。
足元の7~9月期についても、引き続きプラス成長を見込むシンクタンクが多くなっています。米国をはじめとして欧米先進各国はインフレの抑制のために金融引締めを継続しおり、4~6月期とは逆に外需がマイナスとなることが予想されています。しかし、5月のゴールデンウィーク明けからの新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染法上の分類変更に伴って、国民生活の正常化が進んで消費が回復して、ひょっとしたら、4~6月期を上回る成長率も期待できる、と見込むエコノミストもいます。特に、中国からの団体旅行受入れ再開によるインバウンド期待も盛り上がっています。ただし、さらにその先となると、私自身は日銀の金融緩和終了に伴って景気回復のテンポは大きくスローダウンする可能性が十分ある、と考えています。ただし、金融政策のラグは長いですから、7~9月期、あるいは10~12月期に早くもスローダウンが現実になるかどうかは判りません。
最後に、下のグラフは、日本総研のリポートから引用しています。外需のプラス寄与が大きい点が見て取れます。
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