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2023年8月29日 (火)

「経済財政白書」を大雑把に読む

本日、「令和5年度年次経済財政報告」閣議に配布されて、内閣府から公表されています。副題は「」となっています。まず、私が見た限りでの通信者や新聞などのメディアでのニュースを順不同で取りまとめると以下の通りです。

各章のポイント
  • 第1章 マクロ経済の動向と課題
    • 5月に感染症が5類相当となる中、コロナ禍後の経済へと移行。
    • 物価と賃金は動き始めている。サービス物価の上昇は緩やかだが、30年ぶりの賃上げが進むとともに価格改定頻度は上昇。来年度も高い賃上げを継続することにより「賃金と物価の好循環」を実現し、我が国経済の四半世紀の桎梏である「デフレ」からの脱却を実現・定着させていくことが重要。
    • 経済政策は、財政出動による景気や生活の下支えから潜在成長率の上昇に軸足を移し、DX・GX等の民間投資の誘発や少子化対策等の中長期的な成長に資する取組が不可欠。
  • 第2章 家計の所得向上と少子化傾向の反転に向けた課題
    • 家計所得が着実に増加する環境を構築するためには、労働移動の活発化、副業・兼業の拡大や女性・高齢者の活躍促進に加え、資産形成を通じた所得の引上げも重要。
    • 少子化対策の観点でも、①将来の所得上昇期待を高めて、結婚・出産の後押しをすることが重要。加えて、②住宅・教育費などの子育て負担の軽減策や、③出産後の女性の労働所得が下がりにくい環境を整備し、「共働き・共育て」を支援する仕組みとして、保育所整備・男性育休やベビーシッター利用の促進も必要。
  • 第3章 企業の収益性向上に向けた課題
    • マークアップ率(企業の価格設定力)の向上には、研究開発投資や人への投資などの無形資産投資が鍵。無形資産には正の外部性があるため、官民投資による後押しが必要。マークアップ率向上は、企業の収益性を改善させ、投資や賃上げ余力を高めるため、経済の好循環の観点からも重要。
    • 無形資産投資によって、生産性を高める効果や、対外競争力のある製品の輸出拡大効果も期待できる。輸出の開始は生産性を更に高め、収益性向上にプラスの効果。

内閣府の説明資料の最後のページにある各章のポイントを引用すると上の通りです。全文を読み通したわけではないので、1点だけ指摘しておきたいと思います。下のグラフは「経済財政白書」第1章の p.23 第1-1-6図 収入階層別にみた消費支出 を引用しています。

photo

消費支出全体の2020年度から2021年度にかけての動向を見ると、一番上のパネルに見える通り、高収入世帯の実質消費が横ばいで推移している一方で、低収入世帯の消費が減少を示しています。その下の6つのパネルに消費の内訳が示してあり、食料、食料以外の基礎的財、基礎的サービス、選択的財、通信除く選択的サービスの実質と名目、となっています。食料への実質消費が減少しているのはインフレの影響です。そして、食料以外の基礎的財の消費は高所得世帯と低所得世帯で大きくは違いません。高所得と低所得の2つのカテゴリーの世帯の消費で違いがあるのは、基礎的サービスと選択的財となります。低所得世帯で消費を減らしているわけですので、この大きな要因は選択的財への支出ということになります。ですから、基礎的財、あるいは、別の表現をすれば必需品ではなく、選択的なやや贅沢品への支出で所得による差が出ていると考えるべきです。消費の拡大、そして、景気の回復のためのひとつのキーポイントとなるのが低所得世帯での所得の回復、ということになります。低所得世帯ですので、第1に、中小企業の雇用者である可能性、また、第2に、非正規雇用である可能性も、ともに十分あり、賃上げが広く均霑することが重要といえます。

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