7か月連続で上昇率が鈍化した7月の企業物価指数(PPI)をどう見るか?
本日、日銀から7月の企業物価 (PPI) が公表されています。PPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比で+4.1%上昇したものの、伸び率は6か月連続で鈍化しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
企業物価指数、7月3.6%上昇 7カ月連続で伸び鈍化
日銀が10日発表した7月の企業物価指数(速報値、2020年平均=100)は119.3と、前年同月比で3.6%上昇した。6月(4.3%)から0.7ポイント低下し、上昇率は7カ月連続で鈍化した。21年3月(1.0%)以来の低い水準になった。輸入物価の上昇を主因とする押し上げは弱まっているが、コスト高を価格に転嫁する動きが続いている。
企業物価指数は企業間で取引するモノの価格動向を示す。7月の上昇率は民間予測の中央値である3.5%を0.1ポイント上回った。公表している515品目のうち全体の8割にあたる436品目が値上がりした。
品目別にみると、電力・都市ガス・水道(マイナス3.3%)は鈍化が続き、前年同月比で下落に転じた。事業用電力や都市ガスで2~4月を参照する燃料費調整単価の下落が影響した。政府が2月から実施する電気・ガスの価格抑制策は「前年同月比を0.6ポイント押し下げている」(日銀)。農林水産物(8.8%)では鶏卵が鳥インフルエンザによる供給制約が緩和して低下した。
石油・石炭製品は1.7%上昇と6月(マイナス2.5%)から上昇した。原油相場の上昇が効いた。飲食料品(6.1%)では穀物価格や包装資材などのコスト高を価格に転嫁する動きがみられた。電気機器(5.3%)や金属製品(7.3%)でも原材料やエネルギーなどの価格上昇を受けた値上げが進んだ。
輸入物価は円ベースで前年同月比14.1%下落し、4カ月連続のマイナス圏になった。6月(マイナス11.4)から低下幅が拡大した。
注目の指標のひとつであり、やや長くなりましたが、包括的によく取りまとめられています。続いて、企業物価(PPI)上昇率のグラフは下の通りです。国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率をプロットしています。また、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

引用した記事にはありませんが、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、企業物価指数(PPI)のヘッドラインとなる国内企業物価の前年同月比上昇率は+3.5%と見込まれていましたので、実績の+3.6%はややこれを上回ったものの、ほとんどジャストミートに近い、と私は受け止めています。引用した記事には、「伸び率は7カ月連続で鈍化」となっていますが、特に輸入物価は4月統計から前年同月比で、また、輸出物価も今日発表の7月統計から、それぞれマイナスに転じ、7月統計では輸入物価▲14.1%、輸出物価▲0.2%の下落となっています。私が調べた限りでも、輸入物価のうちの原油については、これも4月統計から前年同月比マイナスに転じており、7月統計では▲28.5%まで下落幅を拡大しています。輸入物価は先月6月統計から2ケタマイナスとなっていて。したがって、今後は、資源高などに起因する輸入物価の上昇から国内物価への波及がインフレの主役となる局面に入ると私は考えています。消費者物価への反映も進んでいますし、企業間ではある意味で順調に価格転嫁が進んでいるという見方も成り立ちます。
企業物価指数のヘッドラインとなる国内物価の前年同月比を少し詳しく見ると、ウッド・ショックとまでいわれた木材・木製品が▲23.1%の大きな下落を記録しており、本日公表の7月統計から電力・都市ガス・水道も▲3.3%の下落に転じました。前年同月比で上昇している品目でも、農林水産物+8.38%、鉱産物が+7.8%の上昇のほか、窯業・土石製品+15.6%、パルプ・紙・同製品+14.9%、金属製品+7.3%、非鉄金属+5.8%、鉄鋼+4.0%となっていて、数か月前まで2ケタ上昇の品目がズラリと並んでいたころからは少し様相が違ってきています。もちろん、上昇率は鈍化しても、あるいは、マイナスに転じたとしても、価格としては高止まりしているわけですし、しばらくは国内での価格転嫁が進むでしょうから、決してインフレを軽視することはできません。特に、農林水産物はまだ2ケタ近い上昇率ですし、その影響から飲食料品についても+6.1%と高い上昇率を続けています。生活に不可欠な飲食料品ですので、政策的な対応は必要かと思いますが、エネルギーのように市場価格に直接的に介入するよりは、消費税率の引下げとか、所得の増加などが市場メカニズムを生かすのが望ましい、と私は考えています。
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