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2023年9月 1日 (金)

雇用者増が+200千人を下回り失業率も上昇した8月の米国雇用統計をどう見るか?

日本時間の今夜、米国労働省から8月の米国雇用統計が公表されています。統計のヘッドラインを見ると、非農業部門雇用者数の前月差は本日公表の8月統計では+187千人増となり、失業率は前月から+0.3%ポイント上昇して3.8%を記録しています。まず、USA Today のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を最初の6パラ引用すると以下の通りです。

Jobs report: 187,000 jobs added in August as unemployment rises to 3.8%
Hiring unexpectedly picked up in August as employers added 187,000 jobs despite high interest rates and inflation but totals for the prior two months were revised down sharply.
The unemployment rate, which is calculated from a separate survey of households, rose from 3.5% to 3.8%, the Labor Department said Friday. That's mostly because of a surge of Americans into the labor force, which includes people working and looking for jobs.
Economists surveyed by Bloomberg had estimated that 168,000 jobs were added.
Yet payroll growth for June and July was revised down by a whopping total of 110,000, portraying a much weaker picture of employment growth over the summer than previously thought. And job gains in August were expected to be affected by several unusual crosscurrents, making it tough to discern if the latest numbers reflect overall hiring trends or one-offs.
Average hourly earnings rose 8 cents to $33.82, pushing down the yearly to increase 4.3% from 4.4%. That’s good news from the perspective of the Federal Reserve, which has been aggressively hiking interest rates to slow the labor market and tamp down annual pay increases to 3.5% to align with its 2% overall inflation target. Wage growth topped 5% last year amid severe labor shortages.
The Fed is weighing whether to raise rates again this month or hold them steady after lifting its key rate to a 22-year high of 5.25% to 5%.

よく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。NBERでは2020年2月を米国景気の山、2020年4月を谷、とそれぞれ認定しています。ともかく、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが広がった2020年4月からの雇用統計は、やたらと大きな変動があって縦軸のスケールを変更したため、わけの判らないグラフになって、その前の動向が見えにくくなっています。少し見やすくしたんですが、それでもまだ判りにくさが残っています。

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ということで、引用した記事の3パラめにあるように、米国非農業部門雇用者の増加について市場の事前コンセンサスでは+168千人増くらいとされていただけに、実績の+187千人増はやや上振れしたとはいえ、ほぼ「こんなもん」と受け止められているようです。その背景には、8月当月の雇用者数は市場の事前コンセンサスよりも上振れしたとはいえ、ひとつの節目と見られている+200千人増を下回っていますし、その前の6月の雇用者数が+105千人増に、また、7月も+157千人増に、それぞれ下方修正されている点も考慮されています。要するに、上振れと下振れの入り混じった結果といえます。ただし、3%台の失業率は歴史的に低い水準を続けているわけですので、米国労働市場の過熱感は継続しているものの、人手不足に基づく賃上げ圧力は低下しつつあると考えるべきです。もちろん、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)により労働市場から退出した一定部分がまだ戻っていないという背景はありますし、インフレ高進に対応して連邦準備制度理事会(FED)が強力な金融引締めを継続しているのも事実です。ですので、ジャクソン・ホール会合でもパウエルFED議長は賃上げの勢いが鈍化しつつある点を指摘しています。

最後に、この夏は少しボケボケしていて、引用した記事の4パラめの "unusual crosscurrents" が何を指しているのが、実はよく判っていません。今週はかなり米国経済の本を読んで勉強したのですが、情けない限りです。

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