9月調査の日銀短観の業況判断DIはやや改善の予想か?
来週月曜日10月2日の公表を控えて、シンクタンクから9月調査の日銀短観予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って、大企業製造業/非製造業の業況判断DIと全規模全産業の設備投資計画を取りまとめると下のテーブルの通りです。設備投資計画は今年度2023年度です。ただ、全規模全産業の設備投資計画の予想を出していないシンクタンクについては、適宜代替の予想を取っています。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しましたが、可能な範囲で、先行き経済動向に注目しました。短観では先行きの業況判断なども調査していますが、シンクタンクにより大きく見方が異なっています。注目です。より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開くか、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。
機関名 | 大企業製造業 大企業非製造業 <設備投資計画> | ヘッドライン |
6月調査 (最近) | +5 +23 <+11.8%> | n.a. |
日本総研 | +5 +24 <+11.2%> | 先行き(12月調査)は、全規模・全産業で9月調査から+1%ポイントの改善を予想。製造業では、シリコンサイクルの底入れや、米国経済の軟着陸への期待の高まりなどから景況感は小幅に改善すると予想。非製造業では、対面型サービス業を中心に景況感は良好な状態を維持する見込み。中国政府による日本への団体旅行解禁に伴い、低迷していた中国からの訪日客が増加する見通し。ただし、原発処理水をめぐる政治面の動きが、中国の訪日観光ムードに水を差すリスクには留意が必要。 |
大和総研 | +5 +24 <+12.3%> | 9月日銀短観では、大企業製造業の業況判断DI(先行き)は+6%pt(最近からの変化幅: +1%pt)、同非製造業は+23%pt(同: ▲1%pt)を予想する。 大企業製造業では、挽回生産の継続が予想される「自動車」の業況判断DI(先行き)が上昇するとみている。他方で、「はん用機械」や「生産用機械」の業況判断DI(先行き)は低下を見込む。中国経済の下振れによる事業環境の悪化などに対する警戒感が強まっている可能性がある。 大企業非製造業については、「小売」の業況判断DI(先行き)の低下を見込む。インバウンド消費は増加が続くと見込まれるが、物価高による消費への悪影響に対する警戒感が強まっているとみられる。 |
みずほリサーチ&テクノロジーズ | +6 +25 <+12.5%> | 大企業・製造業の業況判断DIの先行きは、海外経済の減速懸念を背景に1ポイントの悪化を予測する。中国では若年層を中心に雇用環境の改善が遅れており、消費者マインドが下押しされている。不動産市場の調整が続いていることも、中国経済の先行きに対する不安を強めている。米国経済についても、今後は利上げや銀行の貸し出し態度厳格化の影響が徐々に実体経済に波及し、減速感が強まる可能性がある。また、欧州経済はユーロ圏総合PMIの悪化傾向が続くなど弱含んでおり、インフレ・高金利の影響で先行きの需要はさらに低迷する可能性がある。こうした輸出環境を巡る不透明感が先行き判断の慎重さにつながるであろう。 大企業・非製造業の業況判断DIの先行きは横ばいを予想する。旅行・宿泊等のサービス消費は未だ回復途上であり、緩やかな増加が続くとみられる。一方で、財消費はコロナ禍での巣ごもり需要の反動や家計の節約意識の残存により、先行きは鈍化するだろう。インバウンドについては、中国以外の国からの訪日客は既にコロナ禍前を上回る水準まで回復が進んでいるため、この先も大幅増が続くとは見込みがたい。中国人観光客は日本政府観光局(JNTO)の「訪日外客統計」によれば、7月時点でコロナ前対比3割程度の水準にとどまる。8月に団体旅行が解禁されたことを追い風に回復が見込まれるものの、前述の通り中国の雇用環境・消費マインドが悪化していることに加え、日本の原子力発電所の処理水を巡る問題によって訪日中国客の動向には不透明感が強まっている。 |
ニッセイ基礎研 | +6 +25 <+12.9%> | 先行きの景況感については総じて悪化が示されると予想している。製造業では、自動車の挽回生産への期待が支えになるものの、利上げに伴う欧米経済の悪化や中国経済の回復の遅れ、足元の原油高・円安進行による原材料価格の再上昇などへの警戒感がやや優勢となる可能性が高い。 また、非製造業では、物価上昇に伴う国内消費の腰折れや人手不足の深刻化、原材料価格の再上昇などへの警戒感が台頭し、先行きに対する慎重な見方が示されると見ている。 |
第一生命経済研 | +7 +24 <大企業製造業+18.5%> | 10月2日に発表される日銀短観の9月調査は、大企業・製造業の業況DIが前回比+2ポイントの改善になると予想する。前回6月の+4ポイント(6月5→9月予想7)に比べると小幅だが、一旦底を打った製造業の改善が2期連続で続くかたちだ。引き続き、半導体不足が緩和した自動車の改善が続くだろう。 |
三菱総研 | +6 +24 <+11.3%> | 先行きの業況判断DI(大企業)は、製造業+5%ポイント(9月時点から▲1%ポイント低下)、非製造業+24%ポイント(同横ばい)を予測する。2023年終盤にかけて米国経済減速に伴う輸出の停滞を予想していることから、製造業の業況悪化を見込む。非製造業では、輸出の停滞が卸売などの関連業種の業況を下押しする一方、賃金上昇を背景とした個人消費の回復が下支えとなるだろう。 |
三菱UFJリサーチ&コンサルティング | +8 +24 <大企業全産業+14.3%> | 日銀短観(2023年9月調査)における大企業製造業の業況判断DI(最近)は、前回調査(同年6月調査)から3ポイント改善の8と予測する。素材業種ではエネルギー価格の下落を受けた交易条件の改善が総じて業況感の改善に寄与するほか、加工業種でも半導体不足の緩和により生産が持ち直している自動車等を中心に改善が続くとみられる。先行きは、半導体需要の持ち直しにも期待され、3ポイント改善の11と楽観的な見通しになると予測する。 大企業非製造業の業況判断DI(最近)は、前回調査から1ポイント改善の24と予測する。原油価格の下落や電気料金の値上げがプラスに働く電気・ガスのほか、経済活動の正常化が進む中で、宿泊・飲食業等の対面型サービス業を中心に業況感は改善するだろう。先行きは、物価上昇による需要減やコスト増、人手不足の深刻化による悪影響等が懸念され、2ポイント悪化の22と慎重な見通しになると予測する。 |
農林中金総研 | +7 +26 <+12.0%> | 先行きに関しては、欧米の金融引き締めの長期化による世界的な景気後退への警戒が高いほか、足元の円安や原油高によるコスト高止まりが収益圧迫につながるとの懸念も強いとみられ、全般的に景況感の悪化を見込むと予想される。以上から、製造業では大企業が5、中小企業が▲5と、非製造業でも大企業が24、中小企業は12 と、いずれも今回予測から▲2 ポイントの悪化予想となるだろう。 |
明治安田総研 | +5 +21 <+12.4%> | 先行きDIに関しては、企業が海外景気の動向をどう見ているかがポイントとなる。まず、米国景気はソフトランディングの範疇に収まる可能性が高まっているとの評価が一般的だが、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げの効果が時間差を置いて顕在化するとみられることから、需要減への不安を抱えている企業が多いとみられる。中国では、深刻化する不動産不況に対し、住宅購入時の頭金比率引き下げなどの規制緩和や、住宅ローン金利の引き下げなどの支援策が相次いで講じられているが、需要を喚起する効果は限定的とみる向きが多い。デリスキングの動きが強まるなか、輸出も失速しており、今後の中国景気への不安は高まっているとみられる。国内の物価上昇ペースは徐々に鈍るとみられるものの、海外景気への不安が上回ることで、9月の先行きDIについては、大企業・製造業は1ポイント悪化の+4、中小企業・製造業は2ポイント悪化の▲9と、いずれも悪化を見込む。 |
見ての通りで、9月調査の日銀短観に示される企業マインドは、ほぼ横ばい、ないし、小幅に改善する可能性が示唆されています。足元も、先行きも、昨年から今年前半にかけて半導体部品などの供給制約が現れた自動車がマインドを支えている印象です。地域別には、インフレ抑制のために金融引締めを継続している欧米先進国とともに、中国についても決して楽観できません。ただ、輸出先としての中国はともかく、インバウンドについては先行き増加を見込んで企業マインド改善につながっているようです。先行きに関しては、シンクタンクの予想ではなく、私自身の感触では、欧米先進国や中国の景気動向を別にしても、2点ほど不透明な部分があります。第1に、政府の経済対策と来年度予算における税制改正の方向です。経済対策が物足りないと見なされ、来年度にそれなりの規模の増税が盛り込まれるとすれば、企業マインドは決して楽観できません。第2に、石油価格の動向です。私はWTIくらいしか見ていませんが、昨年年央に一度ピークを打ったように見える一方で、足元で価格が上昇する動きも見せています。サウジアラビアが減産を継続しているものの、中国の景気も減速していて、私のようなシロートからすれば需給バランスがビミョーに見えます。設備投資計画についても、6月調査から大きな変更ないという予想が多い気がします。
最後に、下のグラフは三菱UFJリサーチ&コンサルティングのリポートから業況判断DIの推移を引用しています。
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