ふたたび前年比+2%の上昇を見せた企業向けサービス価格指数(SPPI)をどう見るか?
本日、日銀から8月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は+2.1%を記録し、変動の大きな国際運輸を除くコアSPPIは+2.2%の上昇を示しています。ヘッドライン上昇率は先月7月統計の+1.7%から上昇幅が再加速しています。また、30か月連続の前年比プラスを継続しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
企業向けサービス価格、8月2.1%上昇 旅行回復し11カ月ぶり水準
日銀が26日発表した8月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は109.3と、前年同月比で2.1%上昇した。上昇幅は7月の1.7%から拡大し11カ月ぶりに2%台の水準を回復した。海運市況の改善などから運輸・郵便が上昇した。
企業向けサービス価格指数は企業間で取引されるサービスの価格変動を表す。指数は30カ月連続で前年同月を上回った。調査対象となる146品目のうち価格が前年同月比で上昇したのは95品目、下落は23品目だった。
運輸・郵便が前年同月比0.5%上昇し、プラスに転じた。外航貨物輸送が22年に大きく下落していた反動で回復した影響が大きかった。新型コロナウイルスの感染症法上の扱いが5類に移行してから初の夏休みで旅行需要が大きく回復し、国内航空旅客輸送や貸し切りバスも値上がりした。
7月はマイナス1.4%だった広告も前年同月比0.6%上昇した。コロナの影響緩和でテレビ広告の出稿が増えたほか、酒税法改正を前にアルコール飲料の出稿も多かった。
コンパクトによく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは下の通りです。上のパネルはヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、下のパネルは日銀の公表資料の1ページ目のグラフをマネして、国内価格のとサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。企業物価指数(PPI)とともに、企業向けサービス物価指数(SPPI)が着実に上昇トレンドにあるのが見て取れます。なお、影を付けた部分は、日銀公表資料にはありませんが、景気後退期を示しています。

上のグラフで見ても明らかな通り、企業向けサービス価格指数(SPPI)の前年同月比上昇率の昨年2022年以降の推移は、2022年9月に上昇率のピークである+2.1%をつけてから、ジワジワと上昇率は低下し今年2023年に入って6月統計で+1.5%まで縮小した後、先月7月統計で+1.7%と上昇幅を拡大し、本日公表された8月統計では+2.1%と再加速しました。再加速したとはいえ、大雑把な流れとしては、+2%ほどの上昇率が継続しているようにも見えます。もちろん、+2%前後の上昇率はデフレに慣れきった国民マインドからすれば、かなり高いインフレと映っている可能性が高い、と私は受け止めています。ただし、インフレ率は高いながら、物価上昇がさらに加速するわけではないんではないか、と私は考えています。ヘッドラインSPPI上昇率にせよ、国際運輸を除いたコアSPPIにせよ、日銀の物価目標とほぼマッチする+2%程度となっています。
もう少し詳しく、SPPIの大類別に基づいて8月統計のヘッドライン上昇率+2.1%への寄与度で見ると、引用した記事にもある通り、インバウンド需要に支えられた宿泊サービスや機械修理、洗濯などの諸サービスが+0.93%ともっとも大きな寄与を示し、ほかに、ソフトウェア開発や情報処理・提供サービスやインターネット附随サービスなどの情報通信が+0.52%、リース・レンタルが+0.26%、その他の不動産賃貸や不動産仲介・管理や事務所賃貸などの不動産が+0.13%などとなっています。ただし、SPPI上昇率再加速の背景となっている石油価格の影響が大きい道路旅客輸送や国内航空旅客輸送や鉄道旅客輸送などの運輸・郵便が+0.09%のプラス寄与に回帰しています。もっとも、引用した記事では「海運市況の改善」もあると報じています。いずれにせよ、寄与度ではなく大類別の系列の前年同月比上昇率で見ても、運輸・郵便は先月7月統計の▲0.4%の下落から、今月8月統計では+0.5%と、上昇に転じています。現在の物価上昇については、エネルギーなどの資源価格からの波及に加えて、インバウンドも含めて需要サイドからの圧力による物価上昇も始まりつつある一方で、エネルギー価格の動向にも注意が必要、という段階に達したと考えるべきです。
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