競争促進は価格引下げにつながるか?
今週月曜日の10月23日に、公正取引委員会から「学校制服の取引実態に関する事後検証報告書について」と題するプレスリリースが公表されています。公正取引委員会では2017年に入札やコンペ方式の導入による競争促進を提言していますが、その後の政策効果として、この提言に沿った取組みを実施した学校の制服は2200円安くなった、と結論しています。まず、この報告書について報じた朝日新聞の記事を3パラだけ引用すると以下の通りです。
中学高校の制服、競争働けば2200円安く 公取委が検証結果発表
公正取引委員会は23日、全国の公立中学・高校の学校制服の取引価格についての報告書を発表した。「高価」との指摘が絶えない学校制服について、公取委は2017年に入札やコンペ方式の導入などを提言。この提言通りに取り組んだ学校の制服価格は、そうでない学校より2200円安かったという。
公取委は昨年12月、全国の公立中高計1956校にウェブ上でアンケートし、約8割から回答を得た。17年の提言で、公取委は入札などの導入に加え、価格交渉や新規参入業者への情報開示などを盛り込んだ。これらに取り組んだ学校の制服(ブレザー上下)は、取り組んでいない学校と比べて価格が2200円低いことが確認できたという。
ただ、提言に従った学校は22年度に中学で36%、高校で69%にとどまっており、公取委の担当者は「取り組みを広げる『伸びしろ』はまだある。メーカー間、販売店間の競争を有効に機能させて、保護者の負担を減らす必要がある」と話している。
なかなかに興味深い報告書のようですので、「学校制服の取引実態に関する事後検証報告書 (概要)」からグラフを引用して簡単に見ておきたいと思います。
上のグラフは、「学校制服の取引実態に関する事後検証報告書 (概要)」から 検証2 提言実施の効果(長期アウトカム) を引用しています。ほかの検証1は報告書提言の実施状況(中期アウトカム)を、検証3はアドボカシー活動を通じて発生した全体的な価格効果(長期アウトカム)を、それぞれ検証しています。長期効果として、グラフは引用していないものの、もうひとつのアドボカシー効果の方を見ると、全国の学校制服価格は2017年報告書の公表から起算して他の服製品の価格と比べ下落傾向、ただし、他の服製品も下落していますので、差の差(DID)分析をしたところ、報告書公表翌年から4年後に▲5.8%の下落効果が認められています。そして、上のグラフに示したように、提言内容を実施した学校の制服価格は、提言内容を実施していない学校の制服価格に比べて下落傾向をしめし、コチラも差の差(DID)分析で▲6.9%の下落効果があったと指摘しています。上のグラフの方は、提言の実施と未実施の間のランダム化比較実験(RCT)をさらに差の差(DID)分析しているわけです。そして、この提言実施効果がブレザー(上下)1着当たり▲2,000円程度の価格低減効果となったわけです。競争促進の経済効果が価格低下に現れているわけです。
実は、私の勤務する大学の生協はかなり強気な価格設定をしていて、おそらく、競争圧力が小さいためであろうと私は考えています。ただ、今週なって研究セミナーを開催した際に、定年まで勤めていた役所の後輩の研究者に来てもらったのですが、その人は学食メニューは東大生協よりも安いといっていました。さすがに、食材が安価な効果なのだろうか、と想像しています。
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