またまた大きな雇用増を記録した9月の米国雇用統計をどう見るか?
日本時間の今夜、米国労働省から9月の米国雇用統計が公表されています。統計のヘッドラインを見ると、非農業部門雇用者数の前月差は本日公表の9月統計では+336千人増となり、失業率は前月から横ばいの3.8%を記録しています。まず、USA Today のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を最初の4パラ引用すると以下の通りです。
Jobs report shows payrolls grew by 336K jobs in September while unemployment held at 3.8%
U.S. employers stepped up hiring sharply in September, adding a booming 336,000 jobs despite high interest rates and inflation.
The unemployment rate held steady at 3.8%, the Labor Department said Friday.
Economists had estimated that 170,000 jobs were added last month, according to a Bloomberg survey.
Job gains for July and August were revised up by a combined 119,000, pushing the advances for each month over 200,000 and painting a more robust picture of summer hiring than previously thought.
よく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。NBERでは2020年2月を米国景気の山、2020年4月を谷、とそれぞれ認定しています。ともかく、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが広がった2020年4月からの雇用統計は、やたらと大きな変動があって縦軸のスケールを変更したため、わけの判らないグラフになって、その前の動向が見えにくくなっています。少し見やすくしたんですが、それでもまだ判りにくさが残っています。

ということで、引用した記事の3パラめにあるように、米国非農業部門雇用者の増加についてBloombergでは市場の事前コンセンサスを+170千人増くらいと見込んでいただけに、実績の+336千人増は大きく上振れした印象です。ひとつの節目と見られている+200千人増を上回っていますし、直前の7~8月の雇用者数が+236千人増と+227千人増に、それぞれ上方修正されています。特に、3%台の失業率は歴史的に低い水準を続けているわけですので、米国労働市場の過熱感は継続している、と考えるべきです。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)により労働市場から退出した一定部分がまだ戻っていないという背景はありますし、インフレ高進に対応して連邦準備制度理事会(FED)が強力な金融引締めを継続しているのも事実です。また、労働市場の加熱感を背景にしたストライキの動向にも注意が必要です。現在もまだGMとフォードの工場で続いている全米自動車労組(UAW)のストライキにバイデン大統領も支持を表明したりしています。このストは21州43カ所の約2万5,000人のデトロイト3のUAW組合員が参加していますが、今月の統計には算入されていないと米国労働省は明らかにしていえるようです。
最後に、米国の時間あたり賃金の伸びと消費者物価(CPI)上昇率をプロットしたグラフは以下の通りです。

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