4か月ぶりに上昇率が再加速した10月の消費者物価指数(CPI)をどう見るか?
本日、総務省統計局から10月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は、季節調整していない原系列の統計で見て前年同月比で+2.9%を記録しています。前年比プラスの上昇は26か月連続ですが、先月9月統計の+2.8%のインフレ率からは上昇幅を再加速させています。+3%を下回っていますが、日銀のインフレ目標である+2%をを大きく上回る高い上昇率での推移が続いています。ヘッドライン上昇率も+3.3%に達している一方で、エネルギーや食料品の価格高騰からの波及が進んで、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率は+4.0%と高止まりしています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
消費者物価指数、10月2.9%上昇 4カ月ぶり伸び拡大
総務省が24日発表した10月の消費者物価指数(CPI、2020年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が106.4となり、前年同月比で2.9%上昇した。伸び率は4カ月ぶりに拡大した。政府の電気・ガス料金の補助が10月から半減し、エネルギー価格が物価を下げる効果が弱まった。
QUICKが事前にまとめた市場予測の中央値の3.0%上昇は下回った。前年同月比でプラスとなるのは26カ月連続で、日銀の物価目標である2%を上回る水準での推移が続く。
生鮮食品を含む総合指数は3.3%上昇した。トマトが41.3%、りんごが29.4%それぞれ上がった。夏場の高温による生育不良などで出荷が落ち込んだ。
生鮮食品とエネルギーを除いた総合指数は4.0%上昇した。4%台の上昇は7カ月連続となる。4.2%の上昇だった9月は下回り、伸びは2カ月連続で縮小した。生鮮食品以外の食料品で、昨年秋以降に相次いだ値上げに一服感がある。
総務省によると電気・ガスの料金抑制策がない想定では、生鮮食品を除く総合指数の上昇率は3.4%だった。単純計算では政策効果で物価の伸びが0.5ポイント抑えられている。9月の抑制効果は1.0ポイントだった。
品目別では電気代が前年同月比で16.8%下がった。9月の24.6%低下から下げ幅を縮めた。都市ガス代も13.8%の低下で、9月の17.5%のマイナスから下落幅が縮小した。政府が石油元売りに支給する補助金を拡充したガソリンは5.0%上昇と、9月の8.7%プラスから上昇率が下がった。
全体をモノとサービスに分けると、サービスの上昇率は2.1%と9月より0.1ポイント拡大した。消費税増税の時期を除くと1993年10月以来30年ぶりの上昇率だった。原材料費の上昇に加え、人件費を価格に転嫁する動きがみられる。
宿泊料は42.6%上昇した。観光需要が回復している。政府の観光振興策「全国旅行支援」が各地で終了していることも押し上げ要因となった。携帯電話の通信料は10.9%伸びた。7月と10月に一部の事業者で料金プランの変更があった。
生鮮食品を除く食料は7.6%上昇と、9月の8.8%上昇から伸びを縮めた。伸びの縮小は2カ月連続となる。上昇率は高く、レトルトカレーを示す調理カレーは16.4%のプラスだった。アイスクリームも12.1%上がった。
何といっても、現在もっとも注目されている経済指標のひとつですので、やたらと長い記事でしたが、いつものように、よく取りまとめられているという気がします。続いて、消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1ケタの指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

まず、引用した記事にもあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+3.0%の予想でしたので、実績の+2.9%の上昇率はやや下振れした印象ながら大きな違いは感じられません。まず、エネルギー価格については、2月統計から前年同月比マイナスに転じていて、本日発表された10月統計では前年同月比で▲8.7%に達し、ヘッドライン上昇率に対する寄与度も▲0.75%の大きさを示しています。ただし、9月統計ではこの寄与度が▲1.00%ありましたので、10月統計でコアCPI上昇率が9月統計から+0.1%ポイント再加速した背景はエネルギー価格にあります。すなわち、10月統計ではエネルギーの寄与度差が+0.26%に達しています。たぶん、四捨五入の関係で寄与度差は寄与度の引き算と合致しません。悪しからず。特に、そのエネルギー価格の中でもマイナス寄与が大きいのが電気代です。エネルギーのウェイト712の中で電気代は341と半分近くを占め、9月統計では電気代の寄与度が▲1.01%あったのが、10月統計では▲0.69%に縮小しています。+0.32%ポイントの寄与度差を示しています。統計局の試算によれば、政府による「電気・ガス価格激変緩和対策事業」の影響を寄与度でみると、▲0.49%に達しており、うち、電気代が▲0.41%に上ります。他方で、政府のガソリン補助金が縮減された影響で、6月統計で前年同月比▲1.6%だったガソリン価格は7月統計で+1.1%の上昇に転じた後、8月+7.5%、9月+8.7%、そして、直近の10月統計では+5.0%と、ふたたび上昇に回帰しています。この背景は国際商品市況における石油価格の上昇があります。中東のガザ地区の武力衝突が、今後、どのように推移するかについても予断を許しませんし、食料とともにエネルギーがふたたびインフレの主役となる可能性も否定できません。エネルギーだけではなく、食料についても細かい内訳をヘッドライン上昇率に対する寄与度で見ると、コアCPI上昇率の外数ながら、生鮮野菜が+0.36%と大きく値上がりしています。コアCPIの中では、調理カレーなどの調理食品が+0.30%、まだ暑さが続いていた10月の統計ですのでアイスクリームなどの菓子類が+0.26%、牛乳などの乳卵類が+0.24%、外食焼肉などの外食が+0.18%、食パンなどの穀類も+0.17%、などなどとなっています。
何度も書きましたが、現在の岸田内閣は大企業にばかり目が向いていて、東京オリンピックなどのイベントを開催しては電通やパソナなどに多額の発注をかけましたし、物価対策でも石油元売とか電力会社などの大企業に補助金を出しています。こういった大企業向けの選別主義的な政策ではなく、たとえ結果としては同じであっても、国民に対して出来るだけ普遍主義的な政策を私は強く志向しています。物価対策であれば、例えば、消費税減税・消費税率引下げ、あるいは、物価上昇に見合った賃上げを促す政策が必要であると私は考えます。
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