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2023年11月30日 (木)

経済開発協力機構(OECD)の「経済見通し」やいかに?

日本時間の昨日11月29日、経済協力開発機構(OECD)から「経済見通し2023年11月」OECD Economic Outlook, November 2023 が公表されています。もちろん、pdfの全文リポートもアップロードされています。ヘッドラインとなる世界経済の成長率は、昨年2022年の+3.3%から、先進諸国でのインフレ抑制のための金融引締めなどにより、今年2023年+2.9%、来年2024年+2.7%と、やや減速するものの、さ来年2025年には+3.0%と、成長率が回復し、景気後退に陥ることなくソフトランディングに成功するというのがメインシナリオとなっています。まず、OECDのサイトからG20諸国の成長率のグラフを引用すると以下の通りです。

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G20諸国と世界経済とでは成長率はほとんど同じとなっています。日本は、グラフにありませんが、今年2023年+1.7%成長の後、来年2024年+1.0%成長と減速するものの、さ来年2025年は+1.2%と潜在成長率近傍から少し上振れとはいえ、足元の2023年に比べれば、やや成長が減速するものと見込まれています。リポート p.24 では日本経済について、"In Japan, where monetary policy has remained accommodative, growth is projected to increase to 1.7% in 2023 before moderating to 1% in 2024 and 1.2% in 2025 as the positive contribution from net exports fades and macroeconomic policies begin to be tightened. Wage growth is projected to strengthen gradually, with inflation settling durably at 2% in 2024-25." と指摘しています。すなわち、純輸出の寄与が低下(fade)し、マクロ経済政策が引き締められ始める(begin to be tightened)ため、成長率が鈍化(moderating)する、というシナリオです。引き締められ始めるのは、あくまでマクロ経済政策(macroeconomic policies)ということで、決して、金利引上げに前のめりな日銀の金融政策だけではない点が示唆されています。そうです。財政政策も引締め気味に運営される可能性がある、ということなのでしょう。加えて、インフレ率は2024-25年に2%で落ち着く(settling durably)と見込まれています。いや、国内の多くのエコノミストは日銀物価目標の2%よりも、またまた下回る可能性が高いと考えているのではないでしょうか、という気が私はしています。
そして、リポートでは政府や中央銀行の経済政策については以下の5点を強調しています。

  1. Monetary policy needs to remain restrictive in most advanced economies until inflation declines durably (p.33)
  2. Fiscal policy needs to ensure debt sustainability while responding to new priorities (p.35)
  3. Emerging-market economies need to ensure macroeconomic stability (p.42)
  4. Trade policies should focus on expanding trade as well as enhancing resilience (p.44)
  5. Reforms are needed to strengthen the climate transition (p.47)

最初の金融政策については "restrictive" というのは判りにくい表現なのですが、インフレ抑制の観点から金利の引下げ余地は限定的である、という趣旨です。まず、金融政策はインフレ抑制に重点を置くべき、というスタンスなのだろうと私は受け止めています。第2点目の財政政策については、サステイナビリティの観点から「バラマキ」はダメ、ということなのでしょう。3点目は新興国ではマクロ安定化政策の重要性を、4点目は先進国と新興国を通じて貿易拡大の重要性を、それぞれ指摘し、最後の5点目の構造改革では気候変動の視点を強調しています。

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目を国内に転じると、本日、経済産業省から10月の鉱工業生産指数(IIP)商業販売統計が、また、内閣府から11月の消費者態度指数がそれぞれ公表されています。IIP生産指数は季節調整済みの系列で前月から+1.0%の増産で、商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額は、季節調整していない原系列の統計で前年同月比+4.2%増の13兆6480億円を示した一方で、季節調整済み指数は前月から▲1.6%の低下を記録しています。統計の基調判断は、鉱工業生産指数は「一進一退」、商業販売統計の小売業販売額は「上昇傾向」と、それぞれ据え置かれています。消費者態度指数は、前月から+0.4ポイント上昇し36.1を記録しています。基調判断は「改善に向けた動きに足踏み」で、コチラも前月からの据置きとなっています。グラフは上の通りです。

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