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2023年12月12日 (火)

前年比+0.3%の上昇まで縮小した11月の企業物価指数(PPI)をどう見るか?

本日、日銀から11月の企業物価 (PPI) が公表されています。PPIのヘッドラインとなる国内物価は前年同月比で+0.3%上昇したものの、上昇率は11か月連続で鈍化しています。したがって、「マイナス圏が目前」という報道もあります。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

11月の企業物価0.3%上昇 2カ月連続1%割れ
日銀が12日発表した11月の企業物価指数(速報値、2020年平均=100)は119.5と、前年同月比で0.3%上昇した。10月(0.9%)から0.6ポイント低下し、2カ月連続で上昇率が1%割れとなった。電力料金が下落し、企業の価格転嫁の動きも鈍りつつある。伸び率は11カ月連続で縮小し、マイナス圏が目前に迫る。
企業物価指数は企業間で取引するモノの価格動向を示す。サービス価格の動向を示す企業向けサービス価格指数とともに消費者物価指数(CPI)の先行指標とされる。サービス価格は10月も2%台の上昇を維持しており、物価上昇のけん引役がモノからサービスに移りつつある。
企業物価指数は公表515品目のうち405品目が値上がりした。QUICKが集計した民間予想の中央値(0.1%)を0.2ポイント上回ったものの、21年2月(マイナス0.9%)以来の低さとなった10月(0.8%)をさらに下回った。
品目別にみると、電力・都市ガス・水道が前年同月比で24.5%下落し、下げ幅は10月(19.7%下落)より4.8ポイント拡大した。22年は原油高の影響で大幅に上昇が続いていた分、反動が大きく出た。日銀の試算によると、政府が実施する電力・ガスの価格抑制策も企業物価の全体の伸びを約0.3ポイント押し下げている。
石油・石炭製品の価格は前年同月比3.5%上昇した。ガソリン補助金の減額を背景に、伸び率が10月(0.5%)より3.0ポイント拡大した。飲食料品は前年同月比4.0%の上昇だった。原材料の値上げを価格に反映する動きは続いているが、10月(5.0%)より伸びが鈍化している。
輸入物価は円ベースで前年同月比6.1%下落し、8カ月連続でマイナス圏となった。10月(マイナス11.9%)より下落幅が縮小した。

いつもながら、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業物価(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率をプロットしています。また、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

photo

まず、引用した記事にあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、企業物価指数(PPI)のヘッドラインとなる国内企業物価の前年同月比上昇率は+0.1%と見込まれていましたので、実績の+0.3%はやや上振れしました。特に、輸入物価は4月統計から前年同月比でマイナスに転じ、11月統計では輸入物価▲11.9%の下落となっています。本日公表の企業物価指数(PPI)にはサービスが含まれませんが、他方で、企業向けサービス価格指数(SPPI)は9-10月の統計では前年同月比で+2%台を記録していますので、資源高などに起因する輸入物価の上昇から国内物価への波及が、同時に、モノからサービスの価格上昇がインフレの主役となる局面に入った、と私は考えています。したがって、日米金利差にもとづく円安の是正については、すでに一定の円高が進んでいることm事実であり、経済政策として取り組む必要性や緊急性はそれほど大きくなくなった、と考えるべきです。消費者物価への反映も進んでいますし、企業間ではある意味で順調に価格転嫁が進んでいるという見方も成り立ちます。
企業物価指数のヘッドラインとなる国内物価を品目別の前年同月比で少し詳しく見ると、電力・都市ガス・水道が▲24.5%と前月10月の▲19.7%の低下から下落幅を拡大しています。前年同月比で上昇している品目でも、農林水産物+2.3%と、10月の+3.5%から落ち着きを増していますし、飲食料品も10月の+5.0%から11月は+4.0%とご同様です。ほかに、窯業・土石製品+12.3%、パルプ・紙・同製品+8.9%、繊維製品+6.1%、金属製品+5.4%が+5%以上の上昇率を示しています。ただ、多くの品目でジワジワと上昇率が低下してきています。もちろん、上昇率が鈍化しても、あるいは、マイナスに転じたとしても、価格水準としては高止まりしているわけですし、しばらくは国内での価格転嫁が進むでしょうから、決して物価による国民生活へのダメージを軽視することはできません。特に、農林水産物の価格上昇が続いていて、その影響から飲食料品についても高い上昇率を続けています。生活に不可欠な品目ですので、政策的な対応は必要かと思いますが、エネルギーのように石油元売会社や電力会社のような大企業に対して選別的に補助金を交付するよりは、消費税率の引下げとかで市場メカニズムを活かしつつ、国民向けに普遍的な政策を取る方が望ましい、と私は考えています。

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