経済協力開発機構(OECD)による生徒の学習到達度調査(PISA2022)の結果やいかに?
昨日12月5日、経済協力開発機構(OECD)から昨年2022年に実施された生徒の学習到達度調査 (PISA2022) の結果が公表されています。PISAとは、Programme for International Student Assessment の略であり、15歳児を対象に読解力 reading、数学 mathematics、科学 science の3科目について、3年ごとに国際的に調査を実施し、結果は広く公表されており、データもかなり詳細に提供されています。2000年が初回の調査であり、2015年の第6サイクルからコンピュータ使用型の調査に衣替えし、昨年2022年のPISAは第8サイクルに当たります。OECD加盟の先進国23か国をはじめとして、計81の国と地域の15歳の生徒約69万人が参加しています。なお、参考としたソースは、OECDの1次資料と国立教育政策研究所のリポートであり、リンクは以下の通りです。
まず、日本の生徒の位置を確認したいと思います。下のグラフは、OECDのサイトにあるCountry Noteの日本から Figure 1. Trends in performance in mathematics, reading and science を引用しています。
オレンジの折れ線はOECD23か国平均のスコアであり、日本のスコアは、読解力、数学、科学ともかなり平均よりも上に位置していることが見て取れます。前回のPISA2018では日本は世界で18位だったのですが、今回のPISA2022では3位へと順位を大きく上げて、世界のトップレベルに復帰しています。科目別に参加した国・地域合わせて81の中の日本の順位を見ると、読解力3位、数学5位、科学2位となっていて、OECD加盟の先進国23か国中では、読解力2位、数学1位、科学1位と、まさに世界のトップクラスといえます。
ただし、注意すべき点があることも確かです。というのは、この第8サイクルのPISAは、もともと、2021年に予定されていたのですが、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響で1年延期して2022年に実施されています。そして、日本が好成績を収めた背景として、OECDのサイトでCOVID-19による学校閉鎖期間が短かった点が指摘されています。すなわち、日本では、16%の生徒が新型コロナウイルス感染症の影響で校舎が3か月以上閉鎖されたと報告されている一方で、OECD諸国の平均では、51%の学生が同様に長期にわたる学校閉鎖を経験した、"In Japan, 16% of students reported that their school building was closed for more than three months due to COVID-19. On average across OECD countries, 51% of students experienced similarly long school closures." ということのようです。でも、そういった事情を考慮するとしても、私のドメインである大学や高等教育をさて置いても、まだまだ、日本の生徒や中等教育は優秀であるという結論に違いはないものと私は考えています。
最後に、日本人の学力はPISAの結果を見ても優秀ですし、同様の調査である国際成人力調査 (PIAAC)、あるいは、IEA国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)などのデータからしても、控えめにいっても、日本人が高い潜在的能力を有していることは明らかです。こういった質の高い労働力がありながら、生産性が低いだの、だから賃金が上がらないだのと、経営サイドは日本経済の停滞について労働者の責任のような見方を示していますが、ハッキリと政府の政策と経営のマネジメントが悪いと考えるべきです。まあ、一部には私の属している大学教育の責任かもしれませんが…
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