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2023年12月14日 (木)

2か月連続で増加した10月の機械受注をどう見るか?

本日、内閣府から10月の機械受注が公表されています。民間設備投資の先行指標であり、変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注が、季節調整済みの系列で見て前月比+0.7%増の8587億円となっています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

10月の機械受注0.7%増 2カ月連続プラス、非製造業拡大
内閣府が14日発表した10月の機械受注統計によると、設備投資の先行指標とされる民需(船舶・電力を除く、季節調整済み)は前月比0.7%増の8587億円だった。プラスは2カ月連続となる。
卸売業や小売業を中心に非製造業の発注が2カ月連続で増えた。製造業もプラスに転じた。
QUICKが事前にまとめた市場予測の中央値の0.4%減を上回った。内閣府は全体の基調判断を12カ月連続で「足踏みがみられる」とした。
非製造業は1.2%増で、2カ月連続でプラスを確保した。業種別でみると卸売業・小売業の発注が29.0%伸びて全体を押し上げた。汎用コンピューターといった電子計算機のほか、変圧器や分電盤といったその他重電機の発注増が寄与した。
製造業は0.2%増で、2カ月ぶりの増加となった。「汎用・生産用機械」からの発注が8.9%増えた。ポンプなどの風水力機械などの需要が高まった。工作機械の発注が増えて「金属製品」も27.3%伸びた。
「その他製造業」も53.4%増えた。ボイラーやタービンなどの大型案件がけん引した。
「電気機械」は25.2%減った。半導体製造装置などの「電子計算機等」が低調だった。
SMBC日興証券の宮前耕也氏は「非製造業は新型コロナウイルス禍からの正常化に伴って需要回復が続いている。製造業は海外経済の不透明感などから伸び悩んでいる」と分析する。

包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、機械受注のグラフは上の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

photo

まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注で見て前月比△0.4%減でした。しかし、予想レンジはかなり広く、上限は+3.4%増でしたので、実績の+0.7%増はやや上振れた印象ながら、もともとが単月での振れの大きな指標ですので、大きなサプライズはなかったと私は考えています。引用した記事にもあるように、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「足踏みがみられる」に据え置いています。12か月連続の据え置きだそうです。上のグラフで見ても、太線の移動平均で示されているトレンドで見れば、まだ下向きから脱しているわけではない可能性が読み取れると思います。事実、4~6月期▲3.2%減の2兆5855億円に続いて、7~9月期も▲1.8%減の2兆5385億円と2四半期連続で減少しています。ただ、受注水準としてはまだ8,000億円をかなり上回っており決して低くはありませんし、足元の10~12月期の受注見通しは+0.5%増の2兆5,506億円と見込まれています。
ただ、インフレ抑制のための金融引締めが進められた欧米先進国の景気減速により製造業への受注が停滞している一方で、インバウンドが本格的に増加し始めコロナ前の水準に近づきつつあることから非製造業では増加、という明暗が分かれています。本日公表された10月統計では、製造業が季節調整済みの前月比+0.2%増のの4092億円にとどまった一方で、船舶・電力を除く非製造業が+1.2%増の4500億円となっていて、10~12月期の受注見通しでも、製造業は前期比▲3.8%減の1兆1836億円、船舶と電力を除く非製造業は+4.8%増の1兆3656億円と見込まれています。もっとも、先行きに関してはそれほど単純ではありません。すなわち、欧米先進国で景気後退に陥ることなくソフトランディングに成功するようですから、輸出が回復して製造業が盛り返すことも十分ありえます。他方で、非製造業も、この先、インフレのダメージが内需に影響する可能性が決して低くないと私は考えています。

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