3四半期連続のプラスが続く法人企業景気予測調査BSIと12月調査の日銀短観予想
本日、財務省から10~12月期の法人企業景気予測調査が公表されています。統計のヘッドラインとなる大企業全産業の景況判断指数(BSI)は足元10~12月期が+4.8と3四半期連続でプラスを記録し、続く来年2024年1~3月期は+3.2、4~6月期も+1.5とプラスが続く見通しとなっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
大企業の景況感3期連続プラス 10-12月、自動車けん引
内閣府と財務省が11日発表した10~12月期の法人企業景気予測調査によると、大企業全産業の景況判断指数(BSI)はプラス4.8と、3四半期連続のプラスだった。増産の進む自動車などが押し上げて製造業がプラス5.7となった。非製造業もプラス4.4だった。
BSIは自社の景況が前の四半期より「上昇」と答えた企業の割合から「下降」の割合を引いた数値。今回の調査は11月15日が回答の基準日となる。
大企業のうち製造業は2四半期連続のプラスとなった。半導体などの供給制約の緩和が進む自動車の増産が寄与した。関連する業界でも需要が増えると見込む。自動車・同付属品製造業のBSIはプラス25.4、金属製品製造業はプラス24.7だった。
一部の業種では海外景気の下振れの影響が出た。鉄鋼業は北米や中国の需要の減少により、BSIはマイナス20.3だった。
新型コロナウイルス禍からの経済活動の正常化に伴う人流の増加やインバウンド(訪日外国人)の回復により、非製造業は5四半期連続でプラスとなった。宿泊業や飲食サービス業が好調で、サービス業のBSIはプラス5.4だった。
大企業や中小企業を含めた全産業の2023年度の設備投資は前年度比11.1%の増加見込みとなった。製造業では自動車・同付属品製造業で工場の新設や電気自動車(EV)関連の投資を見込む。非製造業では鉄道事業者で安全関連の投資が増える。
従業員が「不足気味」と答えた企業の割合から「過剰気味」の割合を引いた従業員数判断指数は大企業の全産業でプラス26.3と、統計をさかのぼることができる2004年4~6月期以降で最も高くなった。7~9月期に続き、2四半期連続で過去最高を更新した。
先行きの景況判断指数は24年1~3月期に大企業の全産業でプラス3.2だった。製造業はプラス1.3、非製造業はプラス4.1を見込む。
いつものとおり、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、統計のヘッドラインとなる大企業の景況判断BSIのグラフは上の通りです。重なって少し見にくいかもしれませんが、赤と水色の折れ線の色分けは凡例の通り、濃い赤のラインが実績で、水色のラインが先行き予測です。影をつけた部分は、景気後退期を示しています。
この統計のヘッドラインとなる大企業全産業の景況判断指数(BSI)で見ると、今年2023年10~12月期には自動車の生産回復などから3四半期連続のプラスを記録し、さらに来年2024年1~3月期と4~6月期にもプラスを維持する見込みとなっています。ただ、DIですので水準を見るよりは方向性に注目すべきであると私は考えており、プラスが続くもののそのプラス幅が縮小するのは、景気回復・拡大局面ながら、その後半に入っているひとつの論拠として受け止めています。加えて、中堅企業も同様に底堅く推移する一方で、中小企業についてはマイナスの景況感が続く内容となっています。統計のヘッドラインとなる景況判断BSI以外の注目点を上げると、従業員数判断BSIから見た雇用は大企業、中堅企業、中小企業ともに「不足気味」超となっていて、大企業よりも中堅企業や中小企業の方で不足感が深刻です。また、企業収益に関しては、今年度2023年度の大企業の売上は製造業・非製造業とも増加する一方で、経常利益は非製造業で増益となる一方で、製造業では減益が見込まれています。米国をはじめとする先進国経済がインフレ抑制のために金融引締めを実施していることが景気減速につながり、我が国からの輸出に影響していると考えられます。続いて、今年度2023年度の設備投資計画は+11.1%増と2ケタ増が見込まれています。
機関名 | 大企業製造業 大企業非製造業 <設備投資計画> | ヘッドライン |
9月調査 (最近) | +9 +27 <+13.0%> | n.a. |
日本総研 | +10 +28 <+12.7%> | 先行き(2024年3月調査)は、全規模・全産業で12月調査から▲1%ポイントの低下を予想。製造業では、自動車輸出の回復持続やシリコンサイクルの底入れが好材料である一方、海外経済の減速や中国の不動産市場への懸念が景況感の重石となる見込み。非製造業では、DIは小幅に低下するものの、景況感は高水準で推移する見通し。ただし、人手不足の深刻化による収益機会の喪失や、人件費増加が収益を下押しする可能性には注意が必要。 |
大和総研 | +11 +27 <+12.9%> | 2023年12月13日に公表予定の12月日銀短観において、大企業製造業の業況判断DI(最近)は+11%pt(前回調査からの変化幅:+2%pt)、同非製造業では+27%pt(同:±0%pt)を予想する。 |
みずほリサーチ&テクノロジーズ | +10 +27 <+10.2%> | 大企業・製造業の業況判断DIの先行きは、海外経済の減速懸念を背景に1ポイントの悪化を予測する。中国では雇用の悪化や将来不安の高まりなどを背景に消費者マインドが下押しされており、消費の伸びは力強さに欠けるものとなっている。また、不動産市場の調整が続いていることも、中国経済の先行きに対する不安を強めている。米国経済については、足元までは個人消費を中心に底堅く推移している。ただし、2024年前半にかけて、利上げや銀行の貸し出し態度厳格化の影響が徐々に実体経済に波及し、緩やかながらも減速感が強まる可能性が高い。欧州経済はユーロ圏の7~9月期実質GDPがマイナス成長(前期比▲0.1%)となっており、先行きもインフレや高金利の影響で低迷するとみている。総じて、輸出環境を巡る不透明感は強まっており、製造業の先行き判断の悪化につながるだろう。 大企業・非製造業の業況判断DIの先行きも悪化を予想する。内閣府「景気ウォッチャー調査」で家計関連業種の先行き判断DIを見ると、10月調査まで3カ月連続で低下している。消費者の節約志向を懸念するコメントが多く、小売りや宿泊飲食サービスを中心に業況判断の見通しは悪化するだろう。 |
ニッセイ基礎研 | +11 +26 <+12.3%> | 先行きの景況感については総じて悪化が示されると予想。製造業では、低迷が続いてきた半導体市場の底入れ期待が支えとなるものの、これまで堅調を維持してきた米国経済の利上げに伴う減速、中国経済の回復のさらなる遅れなどへの警戒感が優勢となる可能性が高い。 また、非製造業では、物価上昇に伴う国内消費の腰折れや人手不足の深刻化、原材料価格の再上昇などへの警戒感が台頭し、先行きに対する慎重な見方が示されると見ている。 |
第一生命経済研 | +10 +30 <大企業製造業+20.4%> | 予想は、大企業・製造業も非製造業も改善が続くというものだ。気になるのは、国内需給がそれほど強くはなく、海外需給も米金融引き締めで悪化しそうな点である。 |
三菱総研 | +6 +24 <+11.6%> | 先行きの業況判断 DI(大企業)は、製造業+9%ポイント(12月時点から▲1%ポイント低下)、非製造業+27%ポイント(同横ばい)を予測する。2024年にかけて米国経済減速にともなって輸出が下押しされ、製造業の業況が悪化するとみる。非製造業でも、卸売などの輸出関連業種の業況は下押しが見込まれる。もっとも、①人手不足を背景とした賃金の高い伸び、②コスト高起因の物価上昇圧力の緩和を受けて、個人消費が回復することで消費関連業種の業況は底堅く推移するだろう。 |
三菱UFJリサーチ&コンサルティング | +11 +28 <大企業全産業+12.7%> | 大企業製造業の業況判断DI(最近)は、前回調査(同年9月調査)から2ポイント改善の11と予測する。素材業種ではエネルギー価格の下落を受けた交易条件の改善等が景況感の改善に寄与するほか、加工業種でも半導体需要が最悪期を脱したとみられる電気機械等を中心に改善するとみられる。先行きは、内外需要の回復に支えられて、2ポイント改善の13と楽観的な見通しになると予測する。 |
農林中金総研 | +7 +27 <+11.5%> | 先行きに関しては、前述のビジネスサーベイではいずれも先行きの景況感悪化が見込まれている。欧米地域での金融引き締めによる景気停滞のほか、不動産問題や米中摩擦などの懸念材料を抱える中国経済への警戒も強い。以上から、製造業では大企業が6、中小企業が▲8と、ともに今回予測から▲1ポイントの悪化予想、非製造業でも大企業が24、中小企業は8と、今回予測からそれぞれ▲3ポイント、▲4ポイントの悪化となるだろう。 |
明治安田総研 | +11 +28 <+12.4%> | 3月の先行きDIに関しては、大企業・製造業は1ポイント悪化の+10、中小企業・製造業は2ポイント悪化の▲6と予想する。中国における不動産不況の長期化や、米欧の利上げ効果の浸透に伴う輸出の停滞懸念が影響するとみる。 |
さらに、明日12月13日の公表を控えて、シンクタンクから12月調査の日銀短観予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って、大企業製造業/非製造業の業況判断DIと全規模全産業の設備投資計画を取りまとめる上のテーブルの通りです。設備投資計画は今年度2023年度です。ただ、全規模全産業の設備投資計画の予想を出していないシンクタンクについては、適宜代替の予想を取っています。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しましたが、可能な範囲で、先行き経済動向に注目しました。短観では先行きの業況判断なども調査していますが、シンクタンクにより大きく見方が異なっています。注目です。より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開くか、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。日銀短観のヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは、ほぼ9月調査から横ばい近くで大きな変化ないと予想されています。日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスもほぼほぼ同様かと思います。
下のグラフは、三菱UFJリサーチ&コンサルティングのリポートから 業況判断DIの推移 を引用しています。
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