帝国データバンクによる「食品主要195社価格改定動向調査」の結果やいかに?
もう昨年のことなのですが、2023年12月29日に帝国データバンクから「食品主要195社価格改定動向調査」の結果が明らかにされています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。この調査では昨年2023年の動向と今年2024年の見通しを取りまとめています。まず、帝国データバンクのサイトから調査結果のポイントを3点引用すると以下の通りです。
調査結果
- 2023年の値上げ動向: 累計3万2396品目 バブル崩壊以後で例を見ないラッシュの1年
- 2024年の値上げ動向: 5月まで3891品目、23年比6割減ペース 年1~1.5万品目予想
- 2024年の見通し: 「人件費」由来の値上げが増加 「電気代」、「円安」再加速も懸念
一昨年来の物価高が続く中で、おそらく、今年2024年は価格上昇のペースは鈍る可能性はあるとはいえ、引き続き、食品価格の動向は注目を集めることと思います。年初早々ではありますが、リポートから図表を引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。
まず、リポートから 月別値上げ品目数 推移 のグラフを引用すると上の通りです。見れば明らかな通り、昨年2023年の食料品値上げの品目数は32千品目を越えています。一昨年2022年がおおよそ25品目を少し越えたあたりでしたので、かなり品目数として増加しています。それまで、デフレの中でほぼほぼ前年踏襲の価格設定になっていたわけですので、これだけの品目が値上げされるとかなりのインパクトがあると考えるべきです。ただ、値上げ、というか上昇率で見ても、品目数で見ても、2023年が食料品値上げのピークで、今年2024年からは沈静化に向かうと考えてよさそうです。ただし、再びデフレ期のように価格が動かないというのがいいのかどうかは議論の余地があります。
続いて、リポートから 食品値上げ 原因別 202→24年推移 を引用すると上の通りです。引き続き、円安は値上げ要因として大きな比率を占めますが、為替そのものがすでに円安修正局面に入っている可能性が十分あるので、この要因は逆方向に効くハズです。そうでなければ、かつてのように、円高差益を消費者に還元せずに企業が溜め込むという形になってしまいます。そのうえで、為替要因を除けば、原材料高とエネルギー高は引き続き高い比率を占めているものの、帝国データバンク指摘するように、人件費という要因がクローズアップされます。デフレ期にはコストダウンが至上命令であって、ともかく人件費を削減してコストダウンに努めていましたが、これからの物価安定期には、賃上げや働き方改革などに伴う人件費の上昇を適正に価格転嫁し、中央銀行が追求するインフレ目標に沿った物価安定の下での経済の好循環に基づく拡大基調の経済運営・経営方針に転換すべき局面に差しかかっています。リポートでも指摘されているように、人件費を単なるコストアップ要因として捉えるのではなく、需要拡大をもたらす要因のひとつと見なせるかどうかがキーポイントとなります。
デフレ期には「囚人のジレンマ」に陥って、他社が賃上げして需要が維持される中で、自社だけが人件費削減というコストダウンに成功する、という見果てぬ夢を追いかけていた日本的経営なのですが、需要拡大に政府や中央銀行が経済政策の舵を切るという形でガイドラインが示されれば、決して経営マインドの問題だけではなく、経営方針も囚人のジレンマから脱する機会がありそうな気がします。
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