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2024年1月18日 (木)

足踏み続く11月統計の機械受注をどう見るか?

本日、内閣府から昨年2023年11月の機械受注が公表されています。民間設備投資の先行指標であり、変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注が、季節調整済みの系列で見て前月比+0.7%増の8587億円となっています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

23年11月の機械受注4.9%減 3カ月ぶりマイナス
内閣府が18日発表した2023年11月の機械受注統計によると、設備投資の先行指標とされる民需(船舶・電力を除く、季節調整済み)は前月比4.9%減の8167億円だった。マイナスは3カ月ぶりとなる。製造業を中心に発注が減少した。
QUICKが事前にまとめた市場予測の中央値の0.8%減を下回った。船舶・電力を除く民需は21年4月の8043億円以来、2年7カ月ぶりの低水準だった。内閣府は全体の基調判断を1年1カ月連続で「足踏みがみられる」とした。
製造業は7.8%減の3774億円だった。マイナスは2カ月ぶりとなる。発注した業種ごとにみると「汎用・生産用機械」が12.7%減った。クレーンやコンベヤーなどの運搬機械の需要が低下した。
「その他製造業」も31.0%減った。23年10月にあった受注額100億円以上の大型案件が23年11月はなかった。産業用ロボットの発注が低調だった「情報通信機械」は24.1%減った。
SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは「中国を中心に海外経済の不透明感が依然として高く、製造業で設備投資の様子見姿勢が強まっている」と指摘する。
非製造業は0.4%減の4482億円で、3カ月ぶりに減った。金融業・保険業からの受注が17.4%減少した。汎用コンピューターといった電子計算機が振るわなかった。卸売業・小売業も12.0%マイナスだった。
通信業は40.3%増とプラスを確保した。大型案件が1件あり全体を押し上げた。運輸業・郵便業は12.8%伸びた。鉄道車両などの発注増が寄与した。

包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、機械受注のグラフは上の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

photo

まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注で見て前月比△0.8%減でした。予想レンジがかなり広かったとはいえ、下限は▲4.2%減でしたので、実績の△4.9%減は下限を超えて下振れしたと私は受け止めています。引用した記事にもあるように、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「足踏みがみられる」に据え置いています。1年1か月連続の据え置きだそうです。上のグラフで見ても、太線の移動平均で示されているトレンドで見れば、明らかに下向きとなっています。事実、4~6月期▲3.2%減の2兆5855億円に続いて、7~9月期も▲1.8%減の2兆5385億円と2四半期連続で減少しています。ただ、受注水準としてはまだ何とか8,000億円を上回っており決して低くはありませんし、足元の10~12月期の受注見通しは+0.5%増の2兆5,506億円と見込まれています。
ただ、インフレ抑制のための金融引締めが進められた欧米先進国の景気減速により製造業への受注が停滞している一方で、インバウンドが本格的に増加し始めコロナ前の水準に近づきつつあることから非製造業ではまずます堅調、という明暗が分かれています。本日公表された11月統計では、製造業が季節調整済みの前月比▲7.8%減の3774億円にとどまった一方で、船舶・電力を除く非製造業も減少とはいえ、▲0.4%減の4482億円となっています。もっとも、先行きに関してはそれほど単純ではありません。すなわち、欧米先進国で景気後退に陥ることなくソフトランディングに成功するようですから、輸出が回復して製造業が盛り返すことも十分ありえます。他方で、非製造業も、この先、インフレのダメージが内需に影響する可能性が決して低くないと私は考えています。

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