現状判断DIが上向いた12月の景気ウォッチャーと大きな黒字の11月経常収支
本日、内閣府から昨年2023年12月の景気ウォッチャーが、また、財務省から11月の経常収支が、それぞれ、公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは、季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から+1.2ポイント上昇の50.7となった一方で、先行き判断DIは▲0.3ポイント低下の49.1を記録しています。また、経常収支は、季節調整していない原系列の統計で+1兆9256億円の黒字を計上しています。まず、ロイターのサイトから経常収支の記事を、それぞれ引用すると以下の通りです。
街角景気、12月は1.2ポイント上昇 忘年会や訪日客の増加寄与
内閣府が12日発表した2023年12月の景気ウオッチャー調査によると、景気の現状判断DIは50.7と前月から1.2ポイント上昇した。5カ月ぶりの上昇。忘年会やインバウンド(訪日外国人)など人の移動の活発化が寄与した。
景気判断は「緩やかな回復基調が続いているものの、一服感がみられる」とし、前回の表現を維持した。
指数を構成する全3項目が上昇した。家計動向関連DIは前月から0.6ポイント上昇の50.7、企業動向関連DIは2.7ポイント上昇の50.7、雇用関連DIは1.5ポイント上昇の50.2だった。
調査先からは「忘年会シーズンの繁忙期ということもあり、予約でほぼ満席状態」(北関東=一般レストラン「居酒屋」)、「商店街でもインバウンドの数は日増しに増加する傾向」(四国=商店街)といった声が聞かれた。
一方、「暖冬の影響で12月中旬まで冬物衣料が不調だった。食料品も相次ぐ値上げで買い控えが続くなど、消費マインドが冷え込みつつある」(近畿=その他レジャー施設「複合商業施設」)といった指摘も出ていた。
内閣府の担当者は、引き続きモノの値上げによる人々の節約志向が景況感のマイナス要因となっているが、今月は必ずしも悪い文脈だけでなく、客単価の上昇や単価の高い衣料品や雑貨の購買の広がりなどを指摘する声も出ていたと述べ、「値上げのネガティブ度合いが和らいだ」との見方を示した。
2-3カ月先の景気の先行きに対する判断DIは前月から0.3ポイント低下し49.1となった。内閣府は「価格上昇の影響などを懸念しつつも、緩やかな回復が続くとみている」とした。
経常収支、11月として最大の1兆9256億円の黒字 予想は下回る
財務省が12日発表した国際収支状況速報によると、11月の経常収支は1兆9256億円の黒字となった。11月としては、過去最大の黒字幅。ロイターが民間調査機関に行った事前調査の予測中央値は2兆3851億円の黒字で、実際の黒字幅は予想を下回った。黒字は10カ月連続。
経常収支のうち、貿易・サービス収支は6994億円の赤字で、前年同月に比べて赤字幅が縮小した。貿易収支が赤字幅を縮小したほか、サービス収支が旅行収支を支えに黒字転化した。
第1次所得収支は2兆8949億円の黒字となり、前年同月に比べて黒字幅を縮小した。第2次所得収支は2700億円の赤字だった。
とても長くなりましたが、よく取りまとめられている印象です。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしており、色分けは凡例の通りです。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

現状判断DIは、昨年2023年に入ってから高い水準が続いて、2月以降は50を超えていました。しかし、9月統計で50を割って49.9となった後、11月統計まで50割れの水準が続いていました。本日公表の12月統計でようやく上昇に転じて、前月から+1.2ポイント上昇して50.7を記録しています。もっとも、長期的に平均すれば50を上回ることが少ない指標ですので、50近傍の水準は決して低くない点には注意が必要です。12月統計で上昇した主因は企業動向関連です。家計動向関連が前月から+0.6ポイント上昇であった一方で、企業動向関連は+2.7ポイントの上昇となっています。製造業も非製造業も、ともに前月から上昇しています。雇用関連も前月から+1.5ポイント上昇しています。統計作成官庁である内閣府では基調判断を「緩やかな回復基調が続いているものの、一服感がみられる。」で据え置いています。ただ、家計動向関連を少し詳しく見ると、サービス関連が前月から+1.3ポイント改善していますし、インバウンドの恩恵を受ける飲食関連が前月から+0.6ポイント上昇した一方で、小売関連が0.3ポイントの上昇にとどまるなど、明らかに物価上昇の影響が現れていると考えるべきです。特に、2~3か月先の景気を考える先行き判断DIについては、小売関連が前月から▲1.8ポイントの低下となっています。ただし、明日の消費者物価指数(CPI)統計を待ちつつも、このインフレはそれほど長続きしないと私は見込んでいます。また、内閣府のリポートの中の南関東の景気判断理由の概要の中から悪化の判断の理由を見ると、家計動向関連では「来客数の動きから見て、来店頻度がやや減少しているように感じている。また、客単価は上がっているが買上点数は伸びていない(スーパー)。」とか、企業動向関連では「お歳暮商戦はかなり苦戦を強いられている。お中元商戦のときよりも客の財布のひもがよりきつくなっている(食料品製造業)。」とか、インフレによる単価上昇はあるものの、食料品製造のお歳暮商戦は苦戦、といったあたりに私は目が止まってしまいました。もちろん、逆に、改善判断についても、「仲間内での忘年会や飲み会はコロナ禍の頃に比べて回復している」といった意見も見られます。

続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは経常黒字+2兆4000億円近くでしたので、実績の+1兆9256億円はやや下振れした印象です。2011年3月の東日本大震災と福島第一原発の影響を脱したと考えられる2015年以降で経常赤字を記録したのは、季節調整済みの系列で見て、昨年2022年10月統計▲3419億円だけです。もちろん、ウクライナ戦争後の資源価格の上昇が大きな要因です。ですから、経常黒字の水準はウクライナ戦争の前の状態に戻っていますし、たとえ赤字であっても経常収支についてもなんら悲観する必要はなく、資源に乏しい日本では消費や生産のために必要な輸入をためらうことなく、経常赤字や貿易赤字は何の問題もない、と私は考えていますので、付け加えておきます。
【2023年10月判断】 | 前回との比較 | 【2024年1月判断】 | |
北海道 | 持ち直している | → | 持ち直している |
東北 | 持ち直している | → | 持ち直している |
北陸 | 緩やかに回復している | → | 今後、令和6年能登半島地震の影響を注視する必要があるが、緩やかに回復している |
関東甲信越 | 緩やかに回復している | → | 緩やかに回復している |
東海 | 持ち直している | ↗ | 緩やかに回復している |
近畿 | 一部に弱めの動きがみられるものの、持ち直している | ↘ | 持ち直しのペースが鈍化している |
中国 | 緩やかに回復している | → | 緩やかに回復している |
四国 | 持ち直している | → | 持ち直している |
九州・沖縄 | 緩やかに回復している | ↗ | 緩やかに回復している |
最後に、日銀支店長会議が開催され、昨日、「地域経済報告 - さくらレポート -」(2024年1月)が公表されています。海外経済の回復ペース鈍化や物価上昇の影響を受けつつも、ほぼほぼすべての地域で景気は「持ち直し」、「緩やかに回復」、「着実に回復」と総括判断されています。ただし、近畿だけは、輸出の弱さから「持ち直しのペースが鈍化」と下方修正されています。各地域の景気の総括判断と前回と比較したテーブルは上の通りです。
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