やや上昇率が鈍った12月の消費者物価指数(CPI)をどう見るか?
本日、総務省統計局から昨年2023年12月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は、季節調整していない原系列の統計で見て前年同月比で+2.3%を記録しています。前年比プラスの上昇は27か月連続ですが、先月11月統計の+2.5%のインフレ率からは上昇幅が縮小しています。+3%を下回る上昇が続いていますが、日銀のインフレ目標である+2%をまだ上回る高い上昇率での推移が続いています。ヘッドライン上昇率も+2.6%に達している一方で、エネルギーや食料品の価格高騰からの波及が進んで、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率は+3.7%と高止まりしています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
消費者物価、23年12月2.3%上昇 2カ月連続で伸び縮小
総務省が19日発表した2023年12月の消費者物価指数(CPI、20年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が106.4となり、前年同月比で2.3%上昇した。伸び率は2カ月連続で前月から縮小し、22年6月の2.2%以来18カ月ぶりの低水準となった。
QUICKが事前にまとめた市場予測の中央値は2.3%上昇だった。前年同月比での上昇は28カ月連続。日銀の物価目標である2%を上回る水準が続く。電気代や都市ガス代の低下が続くほか、生鮮食品以外の食料品高にも一服感がみられる。
生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は3.7%上がった。前月からの伸び率の縮小は4カ月連続となる。生鮮食品を含む総合指数は2.6%伸びた。
総務省によると、政府の電気・ガス料金の抑制策がなければ、生鮮食品を除いた総合指数の上昇率は2.8%だった。政策効果で物価の伸びを0.5ポイント程度抑えた。
同日公表した23年平均の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合指数)は前年比3.1%上昇した。第2次石油危機の影響があった1982年の3.1%プラスに並び41年ぶりの高い伸びとなった。
幅広い品目で値上げが進んだ生鮮食品以外の食料品や日用品が押し上げた。生鮮食品を除く食料は8.2%上昇し、1975年の13.9%以来48年ぶりの上げ幅となった。生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は4.0%プラスだった。
23年12月の結果を品目別にみると、電気代は前年同月比20.5%下がった。23年11月の18.1%マイナスから下げ幅を広げた。発電用燃料に用いる石炭の価格が下落傾向にあることや、政府の料金抑制策が影響した。
生鮮食品を除く食料は6.2%上がった。水準は依然として高いものの、前月比でみると0.1%低下した。21年12月以来2年ぶりのマイナスとなる。鶏卵の前年同月比の上昇率は23年11月の26.3%から23年12月は21.9%に鈍った。
全体をモノとサービスに分けると、サービスは2.3%伸びた。23年7月以降、6カ月連続で2%以上で推移する。宿泊料は59.0%高まった。観光需要が回復した。政府の観光振興策が各地で終了していることも押し上げ要因となった。
何といっても、現在もっとも注目されている経済指標のひとつですので、やたらと長い記事でしたが、いつものように、よく取りまとめられているという気がします。続いて、消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1ケタの指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

まず、引用した記事にもあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+2.3%の予想でしたので、実績の+2.3%の上昇率はまさにジャストミートしました。品目別に消費者物価指数(CPI)を少し詳しく見ると、まず、エネルギー価格については、昨年2023年2月統計から前年同月比マイナスに転じていて、本日発表された12月統計では前年同月比で▲11.6%に達し、ヘッドライン上昇率に対する寄与度も▲1.02%の大きさを示しています。先月の11月統計ではこの寄与度が▲0.87%ありましたので、12月統計でコアCPI上昇率が11月統計から▲0.2%ポイント縮小した背景は、こういったエネルギー価格の動向にあります。すなわち、12月統計ではエネルギーの寄与度差が▲0.15%に達しています。たぶん、四捨五入の関係で寄与度差は寄与度の引き算と合致しません。悪しからず。特に、そのエネルギー価格の中でもマイナス寄与が大きいのが電気代です。エネルギーのウェイト712の中で電気代は341と半分近くを占め、11月統計では電気代の寄与度が▲0.75%あったのが、12月統計では▲0.87%に拡大し、▲0.12%ポイントの寄与度差を示しています。統計局の試算によれば、政府による「電気・ガス価格激変緩和対策事業」の影響を寄与度でみると、▲0.49%に達しており、うち、電気代が▲0.41%に上ります。他方で、政府のガソリン補助金が縮減された影響で、ガソリン価格は7月統計から上昇に転じ、直近の12月統計では+4.5%となっています。中東の地政学的なリスクも高まっています。すなわち、ガザ地区でのイスラエル軍の虐殺行為、親イラン武装組織フーシによる商船の襲撃なども、今後、どのように推移するかについても予断を許しませんし、食料とともにエネルギーがふたたびインフレの主役となる可能性も否定できません。なお、食料について細かい内訳をヘッドライン上昇率に対する寄与度で見ると、コアCPI上昇率の外数ながら、生鮮野菜が+0.27%、生鮮果物が+0.14%の大きな寄与を示しています。引用した記事にもあるように、鶏卵の前年同月比上昇率も11月の+26.3%から12月は+21.9%に鈍ったとはいえ、まだまだ高い伸び率が続いています。コアCPIのカテゴリーの中でヘッドライン上昇率に対する寄与度を見ると、調理カレーなどの調理食品が+0.26%、アイスクリームなどの菓子類が+0.22%、フライドチキンなどの外食が+0.17%、鶏卵などの乳卵類が+0.17%、などなどとなっています。
何度も書きましたが、現在の岸田内閣は大企業にばかり目が向いていて、東京オリンピックなどのイベントを開催しては電通やパソナなどに多額の発注をかけましたし、物価対策でも石油元売とか電力会社などの大企業に補助金を出しています。こういった大企業向けの選別主義的な政策ではなく、たとえ結果としては同じであっても、国民に対して出来るだけ普遍主義的な政策を私は強く志向しています。物価対策であれば、例えば、消費税減税・消費税率引下げ、あるいは、物価上昇に見合った賃上げを促す政策が必要であると私は考えます。
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