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2024年1月16日 (火)

2023年12月の企業物価指数(PPI)国内物価はとうとう前年同月比上昇率ゼロに縮小

本日、日銀から昨年2023年12月の企業物価 (PPI) が公表されています。PPIのヘッドラインとなる国内物価は前年同月比で保合いとなり、上昇率は12か月連続で鈍化しています。したがって、次の1月統計ではマイナス圏に舞い戻るという可能性もありそうです。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

23年12月の企業物価横ばい 2年10カ月ぶり低さ
日銀が16日発表した2023年12月の企業物価指数(速報値、20年平均=100)は119.9と、前年同月比の上昇率が0%で横ばいだった。上昇率は11月(0.3%上昇)から0.3ポイント低下し、21年2月(マイナス0.9%)以来、2年10カ月ぶりの低い水準となった。政府の対策で電気・ガス料金が押し下げられ、価格転嫁の動きも一時期より落ち着いてきた。
23年通年では前年比4.1%上昇だった。指数水準は119.6と比較可能な1980年以降の過去最高を更新したが、前年比は2022年(9.8%上昇)より鈍化した。政府が23年2月から実施する価格抑制策で電力・都市ガスなどの伸びが大きく減速したほか、木材・木製品など川上に近い品目の値上げの勢いが収まった。
企業物価指数は企業間で取引するモノの価格動向を示す。サービス価格の動向を示す企業向けサービス価格指数とともに今後の消費者物価指数(CPI)に影響を与える。企業向けサービス価格は4カ月連続で2%台の上昇を維持しており、物価の押し上げ要因がモノから人件費上昇の影響を受けやすいサービスに移りつつある。
企業物価指数で公表する515品目のうち404品目が値上がりした。民間予測の中央値(0.3%下落)より0.3ポイント高かったが、23年1月から12カ月連続で伸び率の鈍化が続いている。
内訳をみると、石油・石炭製品はガソリン補助金の減額を受け、前年同月比4.6%上昇した。飲食料品も4.4%上昇した。11月に続き、原材料やエネルギーのコスト上昇を販売価格に反映する動きがみられた。
電力・都市ガス・水道は前年同月比で27.6%下落し、11月(マイナス24.5%)より下落幅が3.1ポイント拡大した。燃料費の下落や政府の電力・ガスの価格抑制策がマイナスに寄与した。日銀の試算によると、電力・ガスの価格抑制策は企業物価指数全体の上昇率を約0.3ポイント押し下げている。
輸入物価は円ベースで前年同月比4.9%下落し、9カ月連続でマイナス圏となった。11月(マイナス6.4%)より下落幅が縮小した。

注目の指標のひとつですから、ついつい長くなりますが、いつもながら、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業物価指数(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率をプロットしています。また、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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まず、引用した記事にあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、企業物価指数(PPI)のヘッドラインとなる国内企業物価の前年同月比上昇率は▲0.3%と見込まれていましたので、実績の前年同月から横ばいという結果はやや上振れしました。特に、円ベースの輸入物価は4月統計から前年同月比でマイナスに転じ、12月統計では輸入物価▲6.4%の下落となっています。本日公表の企業物価指数(PPI)にはサービスが含まれませんが、他方で、企業向けサービス価格指数(SPPI)は8~11月の統計では前年同月比で+2%台を記録していますので、資源高などに起因する輸入物価の上昇から国内物価への波及が、同時に、モノからサービスの価格上昇がインフレの主役となる局面に入った、と私は考えています。したがって、日米金利差にもとづく円安の是正については、すでに一定の円高が進んで、最近では1ドル140円台半ばの水準となっていることも事実であり、経済政策として取り組む必要性や緊急性はそれほど大きくなくなった、と考えるべきです。消費者物価への反映も進んでいますし、企業間ではある意味で順調に価格転嫁が進んでいるという見方も成り立ちます。
企業物価指数のヘッドラインとなる国内物価を品目別の前年同月比上昇・下落率で少し詳しく見ると、電力・都市ガス・水道が▲27.6%と前月11月の▲24.5%の低下から下落幅を拡大しています。前年同月比で上昇している品目でも、農林水産物+1.5%は11月の+2.5%から上昇幅が縮小していますし、飲食料品も12月の上昇率は11月の+4.4%から横ばいです。ほかに、窯業・土石製品+11.6%、パルプ・紙・同製品+8.3%、繊維製品+5.0%、などが+5%以上の上昇率を示しています。ただ、いま上げたカテゴリーをはじめとして多くの品目でジワジワと上昇率が低下してきています。もちろん、上昇率が鈍化しても、あるいは、マイナスに転じたとしても、価格水準としては高止まりしているわけですし、しばらくは国内での価格転嫁が進むでしょうから、決して物価による国民生活へのダメージを軽視することはできません。特に、農林水産物の価格上昇が続いていて、その影響から飲食料品についても高い上昇率を続けています。生活に不可欠な品目ですので、政策的な対応は必要かと思いますが、エネルギーのように石油元売会社や電力会社のような大企業に対して選別的に補助金を交付するよりは、消費税率の引下げとかで市場メカニズムを活かしつつ、国民向けに普遍的な政策を取る方が望ましい、と私は考えています。

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最後に、世界気象機関(WMO)が1月12日に "WMO confirms that 2023 smashes global temperature record" とのプレスリリースを出しています。まあ、今さら指摘されるまでもありませんが、2023年は観測史上でもっとも平均気温が高かったようです。1850-1900年の平均で定義される産業革命前の気温から、2023年平均気温は 1.45±0.12℃ 高かったとの観測結果が示されています。プレスリリースにいくつかグラフがあるのですが、その中の Global Mean Temperature Difference を引用すると上の通りです。

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