やっぱり2021年からのインフレは供給ショックだったのか?
先週2月15日、ピーターソン国際経済研究所(PIIE)のブログで Supply shocks were the most important source of inflation in 2021-23, but raising rates to curb demand was still appropriate と題する記事が明らかにされています。
何が分析されているのかといえば、米国でのインフレは供給サイドを起点に生じたものであることは確かである一方で、需要サイドの寄与がどうだったかを考えています。すなわち、供給サイドだけの要因であれば、金融政策によって需要を引き締める必要は決して大きくなかったのですが、需要のインフレへの寄与がそれなりにあったとすれば、金融政策による需要引締め策が必要であったということになります。
まず、上のグラフはピーターソン国際経済研究所のサイトから Figure 1 Deviations from forecast can be shown as demand and supply shocks を引用しています。誰もが経済学と聞いて思い浮かべるであろう需要曲線と供給曲線でもって均衡が決まり、その均衡から供給曲線がシフトした結果を考えようと試みています。見れば明らかな通り、供給ショックであるとすれば、価格が上昇し、すなわち、インフレとなり、産出は減少します。
続いて、上のグラフはピーターソン国際経済研究所のサイトから Figure 2 Shocks differ across major economies in 2020-21 and 2022-23 を引用しています。需要曲線や供給曲線は描けませんから、その交点の均衡、というか、均衡のシフトのみ示してあります。主要4地域、すなわち、米国、欧州、日本、英国です。2022年2月末のロシアによるウクライナ侵攻の前後で分割しており、左のパネルはウクライナ侵攻前の2021年10~12月期まで、右が侵攻後の2021年10~12月期以降となります。侵攻以前の日本が異常な動きを示していて、明らかに供給曲線に沿って需要曲線がシフトしている可能性が伺えます。そして、侵攻前については、少なくとも米国では需要がプラスの方向のシフトしており、"The results presented here suggest that supply shocks were the main culprit but that demand probably played a supporting role, especially in the United States." この結果は供給ショックが主な原因であるが、特に米国では需要がおそらく補助的な役割を果たしたことを示唆している、と結論しています。ですので、金融政策による需要の引締めは必要であった、ということになります。
という結論を見ると、現状でインフレが低下しつつあり、特に、日本の場合は需要がインフレに対して補助的な役割すら果たさなかったと思うのですが、いかがなものでしょうか?
| 固定リンク
コメント