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2024年2月15日 (木)

2四半期連続でマイナス成長となった10-12月期GDP統計速報1次QEをどう見るか?

本日、内閣府から昨年2023年10~12月期のGDP統計速報2次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は▲0.1%、前期比年率で▲0.4%と2四半期連続のマイナス成長を記録しています。なお、GDPデフレータは季節調整していない原系列の前年同期比で+3.8%に達し、5四半期連続のプラスとなっています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

GDP年率0.4%減で2期連続マイナス 10-12月、消費不振
内閣府が15日発表した2023年10~12月期の国内総生産(GDP)速報値は物価変動の影響を除いた実質の季節調整値が前期比0.1%減、年率換算で0.4%減だった。2四半期連続のマイナス成長となった。個人消費と設備投資を中心に内需が軒並み落ち込んだ。
QUICKが事前にまとめた民間予測の中心値は年率1.0%増で、大きく下回った。前期比年率の寄与度は、内需がマイナス1.1ポイント、外需がプラス0.7ポイントとなり、内需の弱さが目立つ。
GDPの過半を占める個人消費は前期比0.2%減で、3四半期連続のマイナスだった。暖冬の影響で衣料品が振るわず、新型コロナウイルス禍からの回復が一服し、外食も落ち込んだ。物価高も響き、アルコール飲料や野菜、ガソリンなどの消費が減った。
消費に次ぐ民間の柱である設備投資も前期比0.1%減で、3四半期連続のマイナスとなった。設備投資は航空機用の発動機部品や通信ネットワークなどに使われるデジタル伝送装置が下押し圧力となった。
企業の設備投資意欲は旺盛だが、人手不足による工場の建設の遅れなど供給面での制約も響いたとみられる。世界的な半導体市場の低迷が底を打ち、半導体製造装置は堅調だった。省力化に向けた受注ソフトウエア投資も伸びた。
民間住宅は前期比1.0%減と2四半期連続のマイナスだった。インフレによる住宅資材の高騰で着工が弱含み、人件費も上昇して出来高に影響が出ているとの見方がある。民間在庫変動の寄与度はマイナス0.0ポイントだった。
公共投資は前期比0.7%減で、2四半期連続のマイナスとなった。22年度の補正予算による押し上げ効果が一巡したとみられる。政府最終消費支出は医療費の減少などで0.1%減った。2四半期ぶりのマイナスとなる。
輸出は前期比2.6%増で、3四半期連続のプラスだった。とくにサービスの輸出が前期比11.3%伸び、全体を押し上げた。大手製薬会社が新型抗がん剤の開発で提携した米国企業から知的財産関連の使用料を受け取った一時的な要因が大きい。
計算上は輸出に分類するインバウンド(訪日外国人)の日本国内での消費は前期比14.1%増となり、押し上げ要因となった。
輸入は前期比1.7%増で2四半期連続のプラスだった。原油や液化天然ガス(LNG)などの鉱物性燃料の輸入が増えた。輸入はGDPの計算から控除する項目のため、増加は全体を押し下げる。
名目GDPは前期比0.3%増、年率換算で1.2%増と2四半期ぶりのプラスだった。国内の総合的な物価動向を示すGDPデフレーターは前年同期比で3.8%上昇し、5四半期連続のプラスとなった。
23年の実質GDPは前年比1.9%増、名目は5.7%増でともに3年連続のプラスだった。暦年ではコロナ禍からの経済回復が緩やかに進んでいる。

いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事となっています。次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2022/10-122022/1-32023/4-62023/7-92023/10-12
国内総生産GDP+0.4+1.1+1.0▲0.8▲0.1
民間消費+0.2+0.8▲0.7▲0.3▲0.2
民間住宅+0.7+0.3+1.8▲0.6▲1.0
民間設備▲0.5+1.6▲1.4▲0.6▲0.1
民間在庫 *(▲0.2)(+0.6)(▲0.2)(▲0.5)(▲0.0)
公的需要+0.8+0.4+0.2+0.0▲0.2
内需寄与度 *(▲0.0)(+1.5)(▲0.7)(▲0.8)(▲0.3)
外需(純輸出)寄与度 *(+0.4)(▲0.4)(+1.7)(▲0.0)(+0.2)
輸出+1.4▲3.5+3.8+0.9+2.6
輸入▲0.8▲1.6▲3.6+1.0+1.7
国内総所得 (GDI)+0.8+1.8+1.6▲0.6▲0.2
国民総所得 (GNI)+1.3+0.4+2.1▲0.7+0.0
名目GDP+1.9+2.3+2.5▲0.1+0.3
雇用者報酬 (実質)+0.1▲1.5+0.4▲1.0+0.1
GDPデフレータ+1.4+2.3+3.7+5.2+3.8
国内需要デフレータ+3.6+3.2+2.7+2.5+2.0

上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、縦軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された10~12月期の最新データでは、前期比成長率がわずかながらマイナス成長を示し、黒い外需のプラス寄与のほかは、GDPの需要項目のいろんなコンポーネントが小幅にマイナス寄与しているのが見て取れます。

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まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは前期比年率成長率が+1%ほどでしたから、実績の年率▲0.4%はやや下ぶれした印象です。我が国でも他の先進国と同じようにインフレにより消費の伸びが大きく鈍化して、3四半期連続の前期比マイナスです。3四半期連続のマイナスという符号条件は民間設備投資もまったく同じです。従って、内需寄与度は昨年2023年4~6月期から、これまた、3四半期連続してマイナス寄与となっています。他方で、純輸出の外需は10~12月期にはプラス寄与に転じています。また、報道ではほとんど注目されていないのですが、公的需要が7~9月期の伸びがゼロな上に、10~12月期にはとうとう前期比でマイナスになっています。公的需要の中でも、特に、公的固定資本形成、すなわち、公共投資は7~9月期の前期比マイナスに続いて、10~12月期も2四半期連続でマイナスとなっていて、政府は公共投資によって景気を下支えする気はないように見受けられます。ひょっとしたら、財政再建の方に重点を置き始めている可能性が示唆されているのかも知れません。

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上のグラフは、」上のパネルが雇用者報酬、下のパネルが非居住者家計の購入、すなわち、インバウンド消費のそれぞれの推移をプロットしています。特に、先行き日本経済を考える場合、物価上昇の影響を受ける消費については、実質雇用者報酬の動向が懸念されます。すなわち、少し長い目で見て、2019年10月の消費税率引上げにより、消費者の購買力が低下した後、さらに追い打ちをかけるように、雇用者報酬が傾向的に低下を続けています。上のグラフは実質値でプロットしていますので、物価上昇の影響も含まれているとはいえ、これだけ雇用者報酬が低下すれば消費が振るわないのは当然です。今年の春闘はかなり大幅な賃上げ要求が出そろっているとはいえ、賃上げによる雇用者報酬の増加が着実に進まないと、インフレによるダメージをカバーできずに消費への影響はさらに大きくなる可能性もあります。いずれにせよ、日本経済の大きな課題は賃上げがインフレに追いつくかどうか、と私は受け止めています。そうです。物価を抑えるよりも賃上げの方に重点を置くべきです。他方で、下のパネルのインバウンド消費はコロナの分類変更とともに、実に短期間であっさりと過去最高を記録し年率換算では5兆円を突破しています。内外の経済の差がクッキリと現れています。企業の賃上げ動向が政府の政策とともに注目されるところです。

最後に2点指摘しておきたいと思います。まず第1に、朝日新聞「23年の名目GDPは591兆円、ドイツに抜かれ世界4位に転落」日経新聞「名目GDP、ドイツに抜かれ4位 23年4兆2106億ドル」NHK「日本の去年1年間の名目GDP ドイツに抜かれ世界4位に後退」などで盛んに報じられているように、2023年中の我が国GDPは米ドル換算でドイツを下回り、世界で米国、中国、ドイツについで4番目の位置に交代したようです。私はGDPで計測した経済規模はそれなりに重要だと考えています。でも、現時点での計測は為替レートに大きく依存していますので、それほど意味があるとは考えていません。さらに付け加えると、世界で5番目はインドですから、インドにはあっさりと抜かれる可能性が十分あります。第2に、本日公表されたGDP統計は2四半期連続のマイナス成長でしたので、テクニカルな見方だけでなく、実際に景気後退局面入りしている可能性が十分あると考えるべきです。私が見た範囲のリポートでも、ニッセイ基礎研究所みずほリサーチ&テクノロジーズ第一生命経済研究所などでは、今年2024年1~3月期の成長率をゼロないしマイナスと見込んでいるシンクタンクも少なくありません。3月末に政府予算案が国会で可決されれば議論が本格化する可能性が高いと思います。でも、4月には日本銀行がマイナス金利を解除するという見方があります。景気後退局面に入っているにもかかわらず、金融政策が引き締め方向に変更されるのでしょうか。その意味で、政府と日銀で景気認識は一致しているのでしょうか。とても不思議です。

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