改善が遅れる雇用統計と消費者マインドの改善示す消費者態度指数
本日、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率など、1月の雇用統計が公表されています。失業率は前月から▲0.1%ポイント改善して2.4%を記録した一方で、有効求人倍率は前月と同じ1.27倍となっています。まず、日経新聞のサイトから各統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
1月の有効求人倍率、横ばいの1.27倍 失業率は2.4%
厚生労働省が1日に発表した1月の有効求人倍率(季節調整値)は1.27倍で前月から横ばいだった。新型コロナウイルスの5類移行後初の年始は人の流れが活発で、生活関連サービス業・娯楽業で求人増につながった。堅調だった宿泊業・飲食サービス業では求人が減った。
総務省が同日発表した1月の完全失業率は2.4%だった。23年12月は2.5%だった。
有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人1人あたり何件の求人があるかを示す。1月の有効求職者数は前月と比べて0.1%減少し、3カ月ぶりの減少となった。有効求人数は0.2%増で11カ月ぶりに増えた。
景気の先行指標とされる新規求人数(原数値)は前年同月比で3.0%減少した。原材料や光熱費が上がった影響で、製造業は11.6%減、宿泊・飲食サービス業も8.8%減となった。生活関連サービス・娯楽業は理容・美容などの利用が増えて5.7%増加した。
完全失業者数は163万人で前年同月比で0.6%減った。就業者数は6714万人で0.4%伸び、18カ月連続の増加となった。男性は3682万人と4万人減少し、女性は3032万人と29万人増えた。仕事に就かず職探しもしていない非労働人口は4109万人で、52万人減った。
いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。よく知られたように、失業率は景気に対して遅行指標、有効求人倍率は一致指標、新規求人数ないし新規求人倍率は先行指標と見なされています。なお、影を付けた部分は景気後退期を示しています。
まず、失業率に関する日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、前月から▲0.1%ポイント改善の2.4%と見込まれ、有効求人倍率に関する日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは、前月から横ばいの1.27倍と見込まれていました。実績は予想と同じでジャストミートしています。いずれにせよ、人口減少局面ということもあって、雇用は底堅い印象ながら、1月統計に現れた雇用の改善が鈍い、と私は評価しています。季節調整済みのマクロの統計で見て、一昨年2022年年末12月から直近の1月統計までの1年余りの期間で、人口減少局面に入って久しい中で労働力人口は+35万人増加し、非労働力人口は▲73万人減少しています。就業者+36万人増、雇用者+53万人増の一方で、完全失業者は▲4万人減となっており、就業率は着実に上昇しています。ただ、就業率上昇の評価は難しいところで、働きたい人が着実に就労しているという側面だけではなく、物価上昇などで生活が苦しいために働かざるを得ない、というケースもありえます。加えて、就業者の内訳として雇用形態を見ると、正規が+36万人増の一方で、非正規が+39万人増ですら、国際労働機構(ILO)のいうところも decent work だけが増えているわけではありません。先進各国がこのまま景気後退に陥らないソフトランディングのパスに乗っているにもかかわらず、我が国の雇用の改善が緩やかな印象を持つのは私だけではないと思います。加えて、量的な雇用ではなく賃金動向も重要な課題です。
最後に、本日、内閣府から2月の消費者態度指数が公表されています。前月から+1.1ポイント上昇し39.1を記録しています。グラフは上の通りです。統計作成官庁である内閣府による消費者マインドの基調判断は「改善している」で、前月からの据置きです。消費者態度指数を構成する4項目のコンポーネントを少し詳しく見ると、「雇用環境」が+1.4ポイント上昇し44.3、「暮らし向き」が+1.1ポイント上昇し37.6、「収入の増え方」も+1.1ポイント上昇し40.8、「耐久消費財の買い時判断」が+0.7ポイント上昇し33.5となっています。
| 固定リンク
コメント