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2024年3月 4日 (月)

設備投資が大きく伸びた2023年10-12月期の法人企業統計をどう見るか?

本日、財務省から昨年2023年10~12月期の法人企業統計が公表されています。統計のヘッドラインは、季節調整していない原系列の統計で、売上高は前年同期比+4.2%増の388兆2060億円だったものの、経常利益は+13.0%増の25兆2754億円に上っています。そして、設備投資は+16.4%増の14兆4823億円の大幅増を記録しています。季節調整済みの系列で見ても原系列の統計と同じ基調であり、GDP統計の基礎となる設備投資については前期比+10.4%増となっています。まず、日経新聞のサイトから各統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

設備投資16.4%増、10-12月 自動車や半導体で生産強化
財務省が4日発表した2023年10~12月期の法人企業統計によると、全産業(金融・保険業を除く)のソフトウエアを含む設備投資は14兆4823億円で、前年同期と比べて16.4%増えた。自動車や半導体関連の業種で、生産体制を強化する動きが相次いだ。
設備投資は製造業、非製造業とも前年同期より増えた。全産業の設備投資額は10~12月期として過去最高だった。季節調整済みの前期比では10.4%伸びた。
経常利益は前年同期比13.0%増の25兆2754億円だった。利益額は10~12月期として過去最高を更新した。
設備投資は製造業で20.6%伸びた。半導体や電子部品などを製造する情報通信機械が65.8%、自動車などの輸送用機械も30.2%それぞれ増加した。製造ラインの拡張や新しい生産拠点の整備など生産体制強化のための投資が増えた。
非製造業は14.2%高まった。情報通信業は39.8%増で全体を押し上げた。新たな基地局の整備といったネットワーク関連設備の増強が続いた。鉄道や航空機などの新型輸送用機材の導入があった運輸業や郵便業は28.0%増となった。
法人企業統計の四半期ごとの結果を基に計算すると、23年4~12月期の設備投資は前年同期比8.4%高まった。財務省と内閣府が23年12月に公表した法人企業景気予測調査では23年度の全産業の設備投資が前年度比11.1%増える見込みだ。
経常利益を業種別にみると、製造業が19.9%増えた。供給制約の緩和による増産が進んだ輸送用機械が80.7%の増益を確保した。
非製造業も9.5%の増益だった。宿泊や飲食などのサービス業が38.1%プラスとなった。新型コロナウイルス禍からの回復に加えて価格転嫁が進んだことが影響した。発電燃料価格の下落により電気業も増益に転じた。
売上高は4.2%増の388兆2060億円となった。製造業では輸送用機械だけでなく、価格転嫁が進んだ食料品が18.9%の増収だった。
財務省の担当者は「景気が緩やかに回復している状況を反映した」と説明した。先行きに関し、中国など海外景気の下振れや物価上昇の影響を注視したいと述べた。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、法人企業統計のヘッドラインに当たる売上高と経常利益と設備投資をプロットしたのが下のグラフです。色分けは凡例の通りです。ただし、グラフは季節調整済みの系列をプロットしています。季節調整していない原系列で記述された引用記事と少し印象が異なるかもしれません。影を付けた部分は景気後退期となっています。

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ということで、法人企業統計の結果について、引き続き、企業業績は好調を維持しており、まさに、それがこのところの株価に反映されているわけで、東証平均株価については報じられている通りです。ただ、他方で、株価はもちろん、法人企業統計の売上高や営業利益・経常利益などはすべて名目値で計測されていますので、物価上昇による水増しを含んでいる点は忘れるべきではありません。ですので、数量ベースの増産や設備投資増などにどこまで支えられているかは、現時点では明らかではありません。来週のGDP統計速報2次QEを待つ必要があります。もうひとつ私の目についたのは、設備投資の急拡大です。上のグラフのうちの下のパネルでも跳ねているのが見て取れます。季節調整済みの系列の前期比で見て、製造業と非製造業を合わせた全産業で+10.4%増、うち製造業が+11.7%増、非製造業が+9.6%とともに大きく伸びています。企業業績に比べて設備投資が出遅れているという印象は前々からありましたし、特に、日銀短観や日本政策投資銀行の調査などによる設備投資計画とGDP統計の差が大きいと感じていましたが、ここに来て昨年2023年10~12月期で一気に取り返す動きが始まったのかもしれません。というのも、少し前までは物価上昇のひとつの現象で資材価格の高騰があり、加えて、人手不足も深刻であったことから、設備投資計画を先送りする動きも見られましたが、昨年2023年5月にコロナの分類変更がありましたし、昨年後半ないし10~12月期くらいから設備投資については計画と進捗の差が大きく縮小し始めた可能性があります。

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続いて、上のグラフは私の方で擬似的に試算した労働分配率及び設備投資とキャッシュフローの比率、さらに、利益剰余金、最後の4枚目は人件費と経常利益をそれぞれプロットしています。労働分配率は分子が人件費、分母は経常利益と人件費と減価償却費の和です。特別損益は無視しています。また、キャッシュフローは法人に対する実効税率を50%と仮置きして経常利益の半分と減価償却費の和でキャッシュフローを算出した上で、このキャッシュフローを分母に、分子はいうまでもなく設備投資そのものです。人件費と経常利益も額そのものです。利益剰余金を除いて、原系列の統計と後方4四半期移動平均をともにプロットしています。見れば明らかなんですが、コロナ禍を経て労働分配率が大きく低下を示しています。もう少し長い目で見れば、デフレに入るあたりの1990年代後半からほぼ一貫して労働分配率が低下を続けています。いろんな仮定を置いていますので評価は単純ではありませんが、デフレに入ったあたりの1990年代後半と比べて、▲20%ポイント近く労働分配率が低下していると考えるべきです。名目GDPが約550兆円として100兆円ほど労働者から企業に移転があった可能性が示唆されています。設備投資/キャッシュフロー比率も底ばいを続けています。ただ、設備投資が10~12月期のペースでこのまま上向けば、景気拡大にもつながる可能性があります。他方で、ストック指標なので評価に注意が必要とはいえ、利益剰余金は伸びを高めています。また、4枚めのパネルにあるように、デフレに陥った1990年代後半から人件費が長らく停滞する中で、経常利益は過去最高水準を更新し続けています。勤労者の賃金が上がらない中で、企業業績だけが伸びて株価が上昇するのが、ホントに国民にとって望ましい社会なのか、どうか、キチンと議論すべき段階に入っているように私は考えています。

最後に、本日の法人企業統計などを受けて、来週3月11日に内閣府から昨年2023年10~12月期のGDP統計速報2次QEが公表されます。1次QEでは前期比マイナス成長でしたが、本日公表の法人企業統計を受けた設備投資の上方修正などにより、2次QEではプラス成長に上方改定されるものと私は予想しています。シンクタンクなどの2次QE予想については、日を改めて取り上げる予定です。

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