政府による「電気・ガス価格激変緩和対策事業」が終了して再び上昇幅が拡大した2月の消費者物価指数(CPI)をどう見るか?
本日、総務省統計局から12月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は、季節調整していない原系列の統計で見て前年同月比で+2.8%を記録しています。日銀の物価目標である+2%以上の上昇は23か月連続です。ヘッドライン上昇率は+2.8%に達しており、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率は+3.2%と高止まりしています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
2月消費者物価2.8%上昇 伸び拡大、電気代抑制薄まる
総務省が22日発表した2月の消費者物価指数(CPI、2020年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が106.5となり、前年同月比で2.8%上昇した。伸び率は4カ月ぶりに拡大した。政府の電気・ガス代の抑制策が開始から1年がたち、統計上は前年比の物価上昇率を下げる効果が薄まった。
上昇率はQUICKが事前にまとめた市場予測の中央値の2.8%上昇と同じだった。前年同月比では30カ月続けての上昇となり、23カ月連続で日銀の物価安定目標の2%以上で推移する。
生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は3.2%上がった。伸び幅は6カ月連続で縮んだが、生鮮食品を除く食料は高い水準で推移している。生鮮食品を含む総合指数は2.8%上昇した。
品目別にみると電気代は前年同月比2.5%低下し、下落幅は1月の21.0%から大きく縮んだ。都市ガス代も13.8%マイナスで、1月(22.8%低下)から下げ幅が縮小した。
指数は23年2月から政府の電気・ガス代の抑制策を反映しており、1年がたって前年と比べた押し下げ効果が薄まった。足元でも政府の抑制策は続いており、総務省によると2月は生鮮食品を除いた総合指数の伸びを0.5ポイント程度抑えた。
ガソリンは4.5%上がった。エネルギー全体では1.7%低下と、1月の12.1%マイナスから下げ幅が縮小した。
観光需要の回復が続き、宿泊料は33.3%伸びた。上昇幅は1月の26.9%から拡大した。24年2月は3連休が2回あったことが影響した。中国の春節(旧正月)もありインバウンド(訪日外国人)需要も拡大した。
全体をモノとサービスに分けると、サービスは2.2%伸びた。上昇率は8カ月連続で2%以上だった。宿泊料に加え、一般サービスの外食が3.5%上昇と高い伸び率で推移する。
生鮮食品を除く食料は5.3%上がった。伸びは1月の5.9%から縮んだが、高い上昇率が続く。原材料価格の高騰などを反映して23年に値上げがあった外食のフライドチキンが19.2%上がった。
飼料価格の上昇に加え物流コストが高まったことで牛乳は9.3%上がった。肥料や農機具の燃料が高騰したことによりコシヒカリ以外のうるち米は7.6%上昇した。18年7月以来の上げ幅となる。
生鮮食品を除く総合指数をみると、構成する522品目のうち8割にあたる423品目が上昇した。下がったのは66品目、変化なしは33品目だった。
何といっても、現在もっとも注目されている経済指標のひとつですので、やたらと長い記事でしたが、いつものように、よく取りまとめられているという気がします。続いて、消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1ケタの指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

まず、引用した記事にもあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+2.8%ということでしたので、まさにジャストミートしました。品目別に消費者物価指数(CPI)を少し詳しく見ると、まず、エネルギー価格については、昨年2023年2月統計から前年同月比マイナスに転じていたのですが、本日発表された2月統計では前年同月比で▲1.7%に下落幅が大きく縮小し、ヘッドライン上昇率に対する寄与度も▲0.14%まで小さくなっています。いうまでもなく、政府による「電気・ガス価格激変緩和対策事業」が終了したことに起因します。統計局の試算によれば、電気代▲0.41%、都市ガス代▲0.08%、合計▲0.49%のヘッドライン上昇率に対する寄与がありましたので、2月統計ではほぼ+0.5%ポイントの上昇圧力があったことになります。1月統計ではこのエネルギーのマイナス寄与が▲1.07%ありましたので、2月統計でコアCPI上昇率が先月統計から+0.8%ポイント拡大したうち、これを超える+0.93%の寄与度差があったことになります。すでにガソリン補助金が縮減された影響で、ガソリン価格は2月統計では+4.5%、ヘッドライン上昇率に対する寄与度が+0.10%となっています。中東の地政学的なリスクも高まっています。すなわち、ガザ地区でのイスラエル軍の虐殺行為、親イラン武装組織フーシによる商船の襲撃なども、今後、どのように推移するかについても予断を許しませんし、食料とともにエネルギーがふたたびインフレの主役となる可能性も否定できません。
食料について細かい内訳をヘッドライン上昇率に対する寄与度で見ると、コアCPI上昇率の外数ながら、生鮮食品が野菜・果物・魚介を合わせて+0.11%あり、うち生鮮果物が+0.09%の寄与を示しています。生鮮食品を除く食料の寄与度が+1.23%あります。コアCPIのカテゴリーの中でヘッドライン上昇率に対する寄与度を見ると、アイスクリームなどの菓子類が+0.24%、調理カレーなどの調理食品が+0.21%、うるち米などの穀類が+0.15%、フライドチキンなどの外食が+0.14%、牛乳などの乳卵類が+0.12%、などなどとなっています。サービスでは、引用した記事にあるように、宿泊料が前年同月比で+33.3%上昇し、寄与度も+0.29%に達しています。
最後に、日銀が金利引上げにより金融引締めに転じました。私は授業で、金融引締めは賃上げと物価上昇を抑制すると教えています。今日発表の消費者物価上昇はもとより、日銀から見て今春闘の賃上げも高すぎるので抑制する必要がある、と考えているのであろうと想像しています。ホントにそれでいいのでしょうか?
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