+2%台の上昇続く2月の企業向けサービス価格指数(SPPI)をどう見るか?
本日、日銀から2月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は前月から横ばいの+2.1%を記録し、変動の大きな国際運輸を除くコアSPPIについても前月から横ばいで+2.1%の上昇を示しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
企業向けサービス価格、2月2.1%上昇 賃上げを反映
日銀が26日発表した2月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は110.0と、前年同月比2.1%上昇した。伸び率は1月(2.1%上昇)から横ばいで、7カ月連続で2%以上となった。インバウンド(訪日外国人)の増加などで宿泊サービスが上昇したほか、多くの品目で人件費上昇を価格に反映する動きがみられた。
企業向けサービス価格指数は企業間で取引されるサービスの価格変動を表す。モノの価格の動きを示す企業物価指数とともに今後の消費者物価指数(CPI)に影響を与える。調査対象となる146品目のうち、価格が前年同月比で上昇したのは107品目、下落は22品目だった。
内訳をみると、宿泊サービスは前年同月比28.6%上昇した。北海道の冬の風物詩「さっぽろ雪まつり」や中華圏の春節(旧正月)によるインバウンド需要増が価格を押し上げた。道路旅客輸送(6.8%上昇)や土木建築サービス(5.4%上昇)などの幅広い分野で賃上げ分を転嫁する値上げが続いている。
外航貨物輸送は前年同月比16.6%上昇し、伸び率が1月(15.1%上昇)から1.5ポイント拡大した。海運相場の上昇のほか、円相場が24年2月(平均)では1ドル=149円台と23年2月(1ドル=132円台)より円安が進んだことも寄与した。
いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは下の通りです。上のパネルはヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、下のパネルは日銀の公表資料の1ページ目のグラフをマネして、国内価格のとサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。ただし、指数の基準年が異なっており、国内企業物価指数は2020年基準、企業向けサービス価格指数は2015年です。なお、影を付けた部分は、景気後退期を示しています。

上のグラフで見ても明らかな通り、モノの方の企業物価指数(PPI)のトレンドはヘッドラインとなる国内物価指数で見る限り、上昇率としては2023年中に上昇の加速は終了し、2022年12月から指数水準として120前後でほぼほぼ横ばいとなっています。他方、その名の通りのサービスの企業向けサービス物価指数(SPPI)は、指数水準としてまだ上昇を続けているのが見て取れます。企業向けサービス価格指数(SPPI)のヘッドラインの前年同月比上昇率は、今年2023年8月から+2%台まで加速し、本日公表された2月統計では1月に続いて+2.1%に達しています。7か月連続で+2%台の伸びを続けていることになります。+2%前後の上昇率はデフレに慣れきった国民マインドからすれば、かなり高いインフレと映っている可能性が高いとは思いますが、日銀の物価目標、これは生鮮食品を除く消費者物価上昇率ですが、その物価目標の+2%近傍であることも確かです。加えて、下のパネルにプロットしたうち、モノの物価である企業物価指数のヘッドラインとなる国内物価のグラフを見ても理解できるように、インフレ率は高いながら、物価上昇がさらに加速する局面ではないんではないか、と私は考えています。どうして、この段階で日銀が金融引締めを開始したのかは、私はまだ十分理解できていません。動学的不整合な政策を当初から目論んでいたのでしょうか。オーバーシュート型のコミットメントは反故にされた、というか、もともとそうではなかった、ということなんだろうと思います。繰り返しになりますが、ヘッドラインSPPI上昇率にせよ、国際運輸を除いたコアSPPIにせよ、日銀の物価目標とほぼマッチする+2%程度となっている点は忘れるべきではありません。
もう少し詳しく、SPPIの大類別に基づいて2月統計のヘッドライン上昇率+2.1%への寄与度で見ると、宿泊サービスや土木建築サービスや労働者派遣サービスなどの諸サービスが+0.89%ともっとも大きな寄与を示しています。ヘッドライン上昇率+2.1%の半分近くを占めているわけです。引用した記事にもある通り、中華圏の春節を受けたインバウンドの寄与もあり、宿泊サービスは前年同月比で1月+25.6%、2月も+28.6%と高い上昇率を続けています。ほかに、ソフトウェア開発やインターネット附随サービスや情報処理・提供サービスといった情報通信が+0.50%、加えて、SPPI上昇率高止まりの背景となっている石油価格の影響が大きい外航貨物輸送や道路旅客輸送や道路貨物輸送などの運輸・郵便が+0.44%のプラス寄与となっています。運輸・郵便については、引用した記事にもある通り、輸入に依存するエネルギー価格に対する円安の影響も見逃せません。リース・レンタルについても+0.17%と寄与が大きくなっています。
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