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2024年4月 8日 (月)

小幅なマインド低下を示す3月の景気ウォッチャーと黒字が続く2月の経常収支

本日、内閣府から3月の景気ウォッチャーが、また、財務省から2月の経常収支が、それぞれ、公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは、季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から▲1.5ポイント低下の49.8となった一方で、先行き判断DIは▲1.8ポイント低下の51.2を記録しています。また、経常収支は、季節調整していない原系列の統計で+2兆6442億円の黒字を計上しています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事をロイターのサイトなどから記事を引用すると以下の通りです。

街角景気、3月は1.5ポイント低下 先行きは金利上昇への懸念も
内閣府が8日発表した3月の景気ウオッチャー調査で、景気の現状判断DIは前月から1.5ポイント低下し49.8となった。景気判断の表現は「緩やかな回復基調が続いているものの、一服感がみられる。また、能登半島地震の影響もみられる」と据え置いた。日銀が大規模緩和の修正を行ってから初めての調査となり、先行きについては金利の上昇による住宅や自動車の販売への影響を不安視する声が聞かれた。
指数を構成する3項目では、家計動向関連DIが前月から1.5ポイント低下の49.4、企業動向関連DIが2.0ポイント低下の50.0となった一方、雇用関連DIは0.3ポイント上昇して52.5となった。観光やインバウンドなど人出の増加、新生活の需要などがプラス要因として意識される一方、物価高による買い控えや天候不順の影響が下押し要因になったという。
地域別では全国12地域中5地域でDIは上昇、7地域で低下。能登半島地震が発生した北陸地域は1.6ポイント上昇した。
経常黒字2月2.6兆円 車輸出伸び、訪日客押し上げ
財務省が8日発表した2月の国際収支統計(速報)によると、海外とのモノやサービスなどの取引状況を示す経常収支は2兆6442億円の黒字となった。自動車輸出が伸びて貿易赤字が縮んだほか、訪日客の増加が旅行収支の黒字を押し上げた。
経常収支は輸出から輸入を差し引いた貿易収支や、旅行収支を含むサービス収支、外国との投資のやり取りを示す第1次所得収支などで構成する。
黒字は13カ月連続。黒字幅は前年同月から20.2%拡大した。
貿易収支は2809億円の赤字だった。赤字幅は前年同月から52.1%縮んだ。輸入額が1.4%増の8兆3780億円、輸出額は5.5%増えて8兆971億円となった。
半導体の供給制約が緩和し、自動車や関連部品の輸出が増えた。輸出額は自動車が19.8%増、自動車の部品が22.6%増と伸びたほか、プラスチックが14%増えた。地域別では北米への輸出が19.3%、アジアが2.3%伸びた。
輸入額は商品別に見ると、衣類・同付属品が27.6%増、電算機類が27.8%増だった。資源価格の低下で石炭や液化天然ガス(LNG)の輸入額は減った。
サービス収支は556億円の赤字だった。赤字幅は前年同月から75.2%縮小した。訪日外国人の消費額から日本人が海外で使った金額を引いた旅行収支の黒字が2倍超の4171億円となり、サービス収支の赤字を圧縮した。
旅行収支は2月として過去最大の黒字幅だった。2024年は春節(旧正月)が2月にあり、日本を訪れる観光客が増えた。日本政府観光局(JNTO)によると、訪日客数は同月として過去最多の278万8000人となった。
第1次所得収支は3兆3069億円の黒字だった。黒字幅は4.2%縮んだ。海外子会社からの配当金など直接投資収益が減った。海外の金利上昇で債券利子の受け取りは増えた。
季節調整値で見た経常収支は1兆3686億円の黒字で前月から50.2%減少した。

長くなりましたが、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしており、色分けは凡例の通りです。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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景気ウォッチャーの現状判断DIは、昨年2023年年末11~12月から50を超える水準が続いて、今年2024年に入っても1月統計52.5、2月統計53.0と50を超えていましたが、3月統計で▲1.5ポイント低下して49.8を記録しています。長期的に平均すれば50を上回ることが少ない指標ですので、現在の水準は決して低くない点には注意が必要です。3月統計では家計動向関連・企業動向関連ともに低下しています。企業動向関連では、非製造業が前月から▲1.2ポイントの低下にとどまった一方で、製造業は▲3.1ポイントの低下と低下幅が大きくなっています。これには、本格化し始めたインバウンド消費がいくぶんなりとも寄与しているのではないか、と考えられます。したがって、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「緩やかな回復基調が続いているものの、一服感がみられる」で据え置いています。また、内閣府のリポート「景気の現状に対する判断理由等」の中には、日銀による金利引上げに言及するものがいくつかありました。自動車販売や住宅について、金利先高観から足元での販売が伸びている、という見方がある一方で、引用した記事にもあるように、ハッキリと懸念する見方も少なくありません。前者の見方の金利先高観があるので足元で販売が増加しているというのは、決してサステイナブルではないのですが、そこは、マインドです。

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続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは経常黒字は+兆円を超え、レンジの下限でも+2兆円超えでしたので、実績の+2兆6442億円はレンジ内ながらやや下振れした印象です。他方で、今年2024年は中華圏の春節が2月でしたので訪日観光客も多く、引用した記事にもあるように、278万8000人に上って旅行収支は2月として過去最大の黒字幅を記録しています。いずれにせよ、2022年2月に勃発したウクライナ戦争後の資源価格の上昇により一時的に経常赤字を記録したことがありましたが、季節調整済みの系列で見れば、2022年年末の11-12月ころから経常黒字の水準はウクライナ戦争の前の状態に戻っています。もちろん、たとえ赤字であっても経常収支についてもなんら悲観する必要はなく、資源に乏しい日本では消費や生産のために必要な輸入をためらうことなく、経常赤字や貿易赤字は何の問題もない、と私は考えていますので、付け加えておきます。

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