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2024年4月23日 (火)

東京商工リサーチ「2024年 企業の人手不足に関するアンケート調査」の結果やいかに?

先週木曜日の4月17日に東京商工リサーチから、「2024年 企業の人手不足に関するアンケート調査」の結果が明らかにされています。先月の日銀金融政策決定会合において異次元緩和に終止符が打たれて金融引締めへじわりとシフトし始めていますが、その大きな要因は人手不足とそれに起因する賃上げです。その意味でとても注目すべきアンケートだと考えます。グラフを引用して簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、東京商工リサーチのサイトから人手不足に関して、正社員と非正規社員の状況 のグラフを引用すると上の通りです。大企業と中小企業の間の規模別で「非常に不足」や「やや不足」といった割合に大きな差があるようには見えませんが、産業別には特色が見られます。すなわち、「非常に不足」と「やや不足」の合計割合で見た「正社員不足」がもっとも高かったのは建設業で84.4%、次いで、運輸業の77.9%、情報通信業の76.3%の順となっています。いわゆる2024年問題に直面する建設業と運輸業に加え、DX推進などで人手不足が慢性化している情報通信業で正社員不足が広範に観察されます。また、「非正規社員不足」の割合がもっとも高かったのは小売業で48.9%、次いで、農・林・漁・鉱業の48.3%、サービス業他の48.0%の順となっています。もともと非正規社員への依存度が高い小売業やサービス業で人手不足が目立っています。より細かな産業分類では、正社員・非正規社員とも道路旅客運送業と宿泊業で人手不足が深刻です。

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続いて、東京商工リサーチのサイトから人手不足に関して、正社員と非正規社員 (前年比較) のグラフを引用すると上の通りです。昨年からの変化だけを見ていますので、より長いトレンドは不明ながら、正社員・非正規社員ともに人手不足感が広がっているのが見て取れます。ただ、デジタル化の進展で「印刷・同関連業」では24.1%の企業が正社員過剰と回答しているのが特徴的な結果となっています。

全体を通じて、もともと非正規社員への依存度が高かった小売業や一部のサービス業、あるいは、繁忙期と閑散期といった季節性の強い作業を必要とする農・林・漁・鉱業などを別にすれば、非正規社員への依存が低下し正社員採用意欲が高くなっている印象を受けます。コロナ禍を経て人材の定着を重視する傾向が生じ始めている可能性があります。それは、それで望ましいと私は受け止めています。

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