« 森下選手の3ランからようやく今季初得点初勝利 | トップページ | 大学院生と京都に花見に行く »

2024年4月 1日 (月)

4四半期ぶりに悪化した3月調査の日銀短観をどう見るか?

本日、日銀から3月調査の短観が公表されています。ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは12月調査から+4ポイント改善して+9、また、大企業非製造業も+4ポイント改善の+27となりました。大企業製造業では2四半期連続の改善です。また、本年度2024年度の設備投資計画は全規模全産業で前年度比+13.0%の大きな増加が見込まれています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

大企業製造業の景況感、4期ぶり悪化 3月日銀短観
日銀が1日発表した3月の全国企業短期経済観測調査(短観)で、大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)は、前回の2023年12月調査(プラス13)から2ポイント悪化してプラス11だった。悪化は4期ぶり。品質不正問題による自動車生産の減少により、関連産業の業況感が悪化した。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」の割合を引いた値。3月調査の回答期間は2月27日~3月29日。回答率は99.0%だった。日銀が締め切りのめどとしている回収基準日は3月13日で、同時点で7割弱の回収率だった。日銀がマイナス金利を解除した3月18~19日の金融政策決定会合の影響は「ほとんど織り込まれていない」(日銀)とみている。
大企業製造業の業況判断DIはプラス11と、QUICKが集計した民間予想の中心値(プラス10)を1ポイント上回った。ダイハツ工業が認証不正で自動車の生産を停止したことを受け、自動車関連の大企業で景況感が前回調査より15ポイント悪化しプラス13となった。鉄鋼や非鉄金属など関連産業もあおりを受けて悪化した。
大企業非製造業の業況判断DIはプラス34と、23年12月調査から2ポイント改善した。8期連続の改善で1991年8月以来の高い水準となった。「インバウンド(訪日客)需要が寄与して改善している」(日銀)とみる。人件費のサービス価格への転嫁も進んでいるとみられ、大企業非製造業の販売価格判断DIは2ポイント改善した。
日銀は経済の実態を正確に把握するため、調査対象の企業を3月調査から見直した。見直し後ベースでは、23年12月調査の大企業製造業の業況判断DIはプラス12からプラス13、大企業非製造業の業況判断DIはプラス30からプラス32に修正された。
企業の物価見通しは前回調査から変わらなかった。全規模全産業で1年後は前年比2.4%、3年後は2.2%、5年後は2.1%と政府・日銀が掲げる2%物価目標を上回る上昇率だ。
調査時の水準と比較した際の販売価格の見通しは、1年後は2.7%、3年後は4.0%、5年後は4.7%といずれも前回調査から上昇修正された。企業が原材料コストや人件費の上昇を価格転嫁する動きが持続する見通しが強まっている。
企業の事業計画の前提となる24年度の想定為替レートは全規模全産業で1ドル=141円42銭だった。円安・ドル高の進行を受けて、23年度で139円38銭としていた前回調査から円安方向に修正された。足元のドル円相場は1ドル=151円台で推移しており、企業は円高水準で収益計画を立てているとみられる。

いつもながら、適確にいろんなことを取りまとめた記事だという気がします。続いて、規模別・産業別の業況判断DIの推移は以下のグラフの通りです。上のパネルが製造業、下が非製造業で、それぞれ大企業・中堅企業・中小企業をプロットしています。色分けは凡例の通りです。なお、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

photo

先週、日銀短観予想を取りまとめた際にも書いたように、業況判断DIに関しては、製造業でやや悪化する一方で、非製造業では逆にやや改善との予想であり、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、大企業製造業が前回12月調査から▲2ポイント悪化の+10、非製造業は逆に+3ポイント改善の+33、となっていました。実績としては、短観のヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIが12月調査から+3ポイント悪化して+10となり、また、大企業非製造業では+2ポイント改善して+34となりました。ほぼ予想レンジの範囲内で、大きなサプライズはなかったと私は受け止めています。何といっても、ダイハツの品質偽装による操業停止の影響が大きく、大企業自動車製造業の景況感は12月調査の+28から3月調査では+13へと▲15ポイントも悪化しています。中小企業自動車製造業に至っては12月調査の+24ポイントから▲32ポイント悪化して▲8へと大きく落ち込みました。
先行きの景況感については、製造業・非製造業とも、また、規模別でも大企業・中堅企業・中小企業の多くで、悪化の方向が示唆されていて、非製造業ほど悪化の幅が大きい、と見込まれています。製造業については、自動車製造業のリバウンドが寄与していて、加えて、先進各国が何とかソフトランディングの方向に向かっている一方で、非製造業では物価上昇による国内消費の停滞や人手不足・人件費高騰の懸念が示されていると私は受け止めていますた。ただし、引用した記事にもある通り、3月半ばの日銀による異次元緩和の終了と金融引締めの開始がほとんど織り込まれていないようですから、現実的にはもっと悪化のマインドが増加していても不思議ではありません。業種別に先行き景況感を見ると、製造業では自動車の先行き見通しが改善するのは3月調査でほぼほぼ底を打った感じなのだと思います。他方で、非製造業では卸売・小売が先行きさらに景況感が悪化しており、物価上昇の影響が見て取れます。今日から始まった2024年度の事業計画の前提としている想定為替レートは、引用した記事にもある通り、141.42\/$でした。12月調査における昨年度2023年度の想定レートが139.38\/$でしたので、ジワリと円安に修正されています。

photo

続いて、設備と雇用のそれぞれの過剰・不足の判断DIのグラフは上の通りです。経済学的な生産関数のインプットとなる資本と労働の代理変数である設備と雇用人員については、方向としては過剰感の払拭と不足感の拡大が見られます。特に、雇用人員については足元から目先では不足感がますます強まっている、ということになります。コロナ禍前の人手不足感を上回っています。今春等での賃上げが昨年を上回った背景でもあります。ただし、何度もこのブログで指摘しているように、賃金が上昇するという段階までの雇用人員の不足は生じているかどうかに疑問があり、その意味で、本格的な人手不足かどうか、賃金上昇を伴う人で不足なのかどうか、については、まだ、私は日銀ほどには確信を持てずにいます。すなわち、不足しているのは低賃金労働者であって、賃金や待遇のいい decent job においてはそれほど人手不足が広がっているわけではない可能性があるのではないか、と私は想像しています。加えて、我が国人口がすでに減少過程にあるという事実が、かなり印象として強めに企業マインドに反映されている可能性があります。ですから、マインドだけに不足感があって、経済実態として decent job も含めた意味で、どこまでホントに人手が不足しているのかは、日銀幹部は確信しているようですが、私にはまだ謎です。賃金が物価上昇に見合うほど上がらないからそう思えて仕方がありません。特に、雇用については不足感が拡大する一方で、設備については不足感が大きくなる段階には達していません。要するに、低賃金労働者が不足しているだけであって、低賃金労働の供給があれば、生産要素間で代替可能な設備はそれほど必要性高くない、ということの現れである可能性を感じます。

photo

日銀短観の最後に、設備投資計画のグラフは上の通りです。設備投資計画に関しては、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、大企業全産業で+2.9%増でしたが、実績は+4.0%でしたので少し上振れました。規模別に見ると、繰り返しになりますが、大企業が+4.0%増、そして、中堅企業が+7.7%増、中小企業が▲3.6%減と、中小企業の厳しさが伺われます。日本では企業間格差は産業間や地域間よりも規模感格差が大きいのが特徴なのですが、今回の日銀短観の設備投資計画にはこの規模間格差が現れているのかもしれません。いずれにせよ、日銀短観の設備投資計画のクセとして、年度始まりの前の3月時点ではまだ年度計画を決めている企業が少ないためか、3月調査ではマイナスか小さい伸び率で始まった後、6月調査で大きく上方修正され、景気がよければ、9月調査ではさらに上方修正され、さらに12月調査でも上方修正された後、その後は実績にかけて下方修正される、というのがあります。今回の3月調査では全規模全産業で+3.3%増の高い伸びが計画されています。昨年と同じ水準なのですが、カーボンニュートラルを目指したグリーントランスフォーメーション(GX)やデジタルトランスフォーメーション(DX)に向けた投資がいよいよ本格化しなければ、ますます日本経済が世界から取り残される、という段階が近づいているような気がして、設備投資の活性化を期待しています。

|

« 森下選手の3ランからようやく今季初得点初勝利 | トップページ | 大学院生と京都に花見に行く »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 森下選手の3ランからようやく今季初得点初勝利 | トップページ | 大学院生と京都に花見に行く »