帝国データバンク「2024年度賃上げ実績と初任給の実態アンケート」の結果やいかに?
先週木曜日の4月18日に帝国データバンクから、現在の日本経済の焦点のひとつとなっている賃上げなどについて「2024年度賃上げ実績と初任給の実態アンケート」の結果が明らかにされています。連合の第4回回答集計結果によれば、平均賃金方式で回答を引き出した3,283組合の「定昇相当込み賃上げ計」は加重平均で15,787 円・5.20%に達するものの、うち300人未満の中小組合2,123組合は12,170円・4.75%と目標の5%を下回っています。まず、帝国データバンクのサイトから調査結果の概要を4点引用すると以下の通りです。
調査結果
- 2024年度の賃上げ実施割合は77.0%も、全体の3社に2社は「賃上げ率5%」に届かず
- 規模別、「小規模企業」の賃上げ実施割合は65.2%と全体を10ポイント以上下回る
- 2024年度に新卒社員を採用する企業の割合は45.3%。「大企業」76.2%、「小規模企業」23.7%と二極化
- 初任給、3社に1社が20万円未満。大企業と中小企業の間で「格差拡大」の懸念
わずかに1,046社からの回答があって、サンプル数は決定的に不足している可能性があるものの、とても重要なデータが含まれている可能性があり、帝国データバンクによるpdfの全文リポートからグラフを引用しつつ、簡単に取り上げておきたいと思います。
まず、リポートから 2024年度の賃上げ実績 のグラフを引用すると上の通りです。今年2024年4月時点の数字です。賃上げを実施したのは調査対象企業の77%にとどまり、しかも、賃上げ率が+5%以上となるのは26.5%にしか過ぎません。グラフには「賃上げ率5%未満67.7%」とありますが、賃上げを実施したものの+5%未満となる企業がほぼ半数の50.5%となる計算です。6社に1社の割合となる16.6%の企業は「据え置き」という回答ですし、今もって「賃下げ」もあったりします。どうも、連合の集計結果とは大きな違いがあるように感じられるのは私だけでしょうか。
続いて、リポートから 『賃上げ』割合 のグラフを引用すると上の通りです。企業規模別になっており、見れば明らかな通り、そもそも、小規模企業の賃上げ割合が極端に低くなっています。なお、帝国データバンクの定義によれば、「小規模企業」とは小売業・卸売業・サービス業では従業員5人以下、製造業ほかでは従業員20人以下、となっています。リポートでは、「原料費などの高騰を完全に価格転嫁できていないため大幅な賃上げ実施は難しいが、従業員の士気向上のためわずかながら賃上げを行った」と、賃上げ+1%の出版・印刷業者の声が紹介されています。企業サイドとしても、従業員の士気やモチベーションを重視する意向がありながらも、苦しい台所事情が伺えます。
続いて、リポートから 2024年度 新卒社員の採用状況 のグラフを引用すると上の通りです。これも企業規模別になっており、規模が大きいほど活発に新卒社員を採用していることが読み取れます。ただし、注意せねばならないこともあり、すなわち、それなりに新卒採用ができるであろう企業があると想像される一方で、リポートでも「採用活動を行ったものの人材を獲得できなかった企業もあった」と指摘されている点です。大企業と中小企業、そして、小規模企業の中で規模別に採用が厳しい企業がどの規模かは考えるまでもありません。
大学で日本経済論を教える身として、企業間格差を考える場合、地域別や産業別などはともかく、規模別格差が大きい点は身にしみて理解しています。賃上げと新卒採用について、帝国データバンクのアンケート調査結果からも規模間の格差が浮き彫りになっています。
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