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2024年5月16日 (木)

2四半期ぶりのマイナス成長となった1-3月期GDP統計速報1次QEをどう見るか?

本日、内閣府から1~3月期GDP統計速報1次QEが公表されています。季節調整済みの系列で前期比△0.5%減、年率換算で▲2.0%減を記録しています。2四半期ぶりのマイナス成長です。なお、なお、GDPデフレータは季節調整していない原系列の前年同期比で+3.6%、国内需要デフレータも+2.6%に達し、6四半期連続のプラスとなっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

GDP年率2.0%減 1-3月、2四半期ぶりマイナス成長
内閣府が16日発表した1~3月期の国内総生産(GDP)速報値は物価変動の影響を除いた実質の季節調整値が前期比0.5%減、年率換算で2.0%減だった。2四半期ぶりのマイナス成長となった。品質不正問題による自動車の生産・出荷停止の影響で消費や設備投資が落ち込んだ。
QUICKが事前にまとめた民間予測の中心値の年率1.5%減を下回った。前期比年率の寄与度は内需がマイナス0.6ポイント、外需がマイナス1.4ポイントだった。内需のマイナスは4四半期連続となる。
GDPの半分以上を占める個人消費は前期比0.7%減で4四半期連続のマイナスだった。4四半期連続での減少はリーマン・ショックに見舞われた2009年1~3月期まで以来で15年ぶりとなる。
普通自動車や軽自動車に加え、携帯電話機など耐久財の消費が振るわなかった。暖冬の影響で電気代も減った。飲食サービスや証券関連手数料など金融サービスを中心にサービス消費はプラスに寄与した。
消費に次ぐ民需の柱である設備投資もマイナスで、前期比0.8%減だった。減少は2四半期ぶりとなる。商用車などの普通乗用車やトラックが押し下げた。掘削機などの生産用機械も落ち込んだ。研究開発費は増えた。
民間住宅は2.5%減少した。資材高や人手不足で建築費が高止まりし、着工件数が減少していることが響いているとみられる。民間在庫変動の寄与度はプラス0.2ポイントだった。
公共投資は前期比3.1%増で3四半期ぶりに増加した。政府最終消費は医療費の増加などで0.2%増えた。プラスは2四半期ぶりとなる。
輸出は5.0%減と4四半期ぶりに減少した。自動車の出荷が減ったことがマイナスに響いた。23年10~12月期に大手製薬会社が提携する米国企業から知的財産関連の使用料を受け取って一時的にサービス輸出が増えた反動もあった。
計算上は輸出に分類するインバウンド(訪日外国人)の日本国内での消費は前期比で11.6%増えた。年換算した実額は実質で6.5兆円と過去最高となった。
輸入は前期比3.4%減で3四半期ぶりのマイナスだった。原油や液化天然ガス(LNG)といった鉱物性燃料の輸入が減った。中東アジアの近海で武装組織による商船襲撃などを受けた物流の混乱が響いた。輸入はGDPの計算から差し引く項目のため、減少は全体の押し上げにつながる。
24年1~3月期の名目GDPは前期比0.1%増、年率換算で0.4%増と2四半期連続でプラスとなった。国内の総合的な物価動向を示すGDPデフレーターは前年同期比で3.6%上昇と6四半期連続でプラスだった。23年度の実質GDPは前年度比で1.2%増えた。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2022/1-32023/4-62023/7-92023/10-122024/1-3
国内総生産GDP+1.2+1.0▲0.9+0.0▲0.5
民間消費+0.7▲0.7▲0.3▲0.4▲0.7
民間住宅+0.7+1.8▲0.9▲1.4▲2.5
民間設備+2.5▲1.7▲0.2+1.8▲0.8
民間在庫 *(+0.5)(▲0.1)(▲0.6)(▲0.2)(+0.2)
公的需要+0.2+0.2+0.2▲0.1+0.8
内需寄与度 *(+1.3)(▲0.6)(▲0.8)(▲0.2)(▲0.2)
外需(純輸出)寄与度 *(▲0.2)(+1.7)(▲0.1)(+0.2)(▲0.3)
輸出▲2.4+3.8+0.3+2.8▲5.0
輸入▲156▲3.6+0.9+1.8▲3.4
国内総所得 (GDI)+1.7+1.6▲0.6+0.1▲0.5
国民総所得 (GNI)+0.4+2.0▲0.7+0.1▲0.6
名目GDP+2.2+2.6▲0.2+0.7+0.1
雇用者報酬 (実質)▲1.5+0.3▲0.9+0.0▲0.4
GDPデフレータ+2.3+3.7+5.2+3.9+3.6
国内需要デフレータ+3.2+2.7+2.5+2.1+2.6

上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、縦軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された1~3月期の最新データでは、前期比成長率がマイナス成長を示し、灰色の在庫のプラス寄与のほかは、消費をはじめとしてGDPの需要項目のいろんなコンポーネントが軒並みマイナス寄与しているのが見て取れます。

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まず、引用した記事にある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは前期比年率で▲1.5%の減でしたから、予想レンジの下限が▲3.3%とはいうものの、やや下振れした印象は否めません。季節調整済み系列の前期比伸び率で見て、GDP▲0.5%減のうち、内需寄与度が▲0.2%、外需寄与度が▲0.3%ですから、ともにマイナス寄与です。特に、GDPコンポーネントとして最大シェアを占める消費が▲0.4%の寄与を示しています。ただ、マインドを含めた消費のトレンドが決して低下しているわけではなく、次のグラフで見るように、雇用者報酬がここまで下がり続けながらも消費は全体として底堅い印象を持っています。引用した記事にもある通り、サービス消費は医療を含めて堅調です。ですから、1~3月期のマイナス成長のもっとも大きな要因は自動車の品質不正問題に端を発する工場閉鎖と考えるべきです。従来から、私は日本経済が自動車のモノカルチャーに近い印象を持っていましたが、まさに、この私の印象を裏付ける形で悪い面が出てしまった気がします。今さらながらに、生産面での自動車産業のすそ野の広さや波及効果の大きさを実感し、需要面でも幅広い消費に及ぼす影響の強さを再認識させられた思いです。私自身としては、60歳の定年まで東京で公務員をしていて、公共交通の便利さから自動車とは縁遠く、逆に、住宅に同じような影響力の強さを感じていたのですが、やっぱり、自動車のモノカルチャーかもしれないと思い直しています。この1~3月期については、公的需要が前期比伸び率+0.8%、寄与度も+0.2%と日本経済を下支えしたようです。岸田総理を「増税メガネ」とか、揶揄する向きがあるようですが、今期に限っては公的需要が増加している点は評価できます。ただ、公的需要+0.8%増のうち、公的固定資本形成、いわゆる公共投資が+3.1%増、寄与度でも+0.2%となっています。私も最近は政府財政から遠く離れていますが、ひょっとしたら、能登半島地震に伴うものなんでしょうか、それとも、年度末の駆込み支出なんでしょうか。能登半島地震の被災者はカッコ付きの「棄民政策」の犠牲になっている、と私はみなしていたのですが、見方を変える必要があるのかもしれません。でも、今少し情報が不足しています。

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最後に、上のグラフは、上のパネルが雇用者報酬、下のパネルが非居住者家計の購入額、すなわち、いわゆるインバウンド消費のそれぞれ季節調整済み系列の年額をプロットしています。もちろん、縦軸のスケールが1ケタ半くらい違うとはいえ、国内の消費に基礎を置くビジネスよりもインバウンドに頼る方が先行きの望みがありそうに見込む向きがあっても不思議ではありません。インバウンド消費は、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染法上の分類変更などに伴って、実に素早く過去最高を記録しています。もちろん、大いに円安がインバウンド消費の増加に寄与しているのはいうまでもありません。

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