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2024年5月15日 (水)

明日公表予定の1-3月期GDP統計速報1次QEは自動車の品質不正などを受けてマイナス成長か?

4月末の鉱工業生産指数や先週の家計調査をはじめとして、必要な統計がほぼ出そろって、明日5月16日に1~3月期GDP統計速報1次QEが内閣府より公表される予定となっています。すでに、シンクタンクなどによる1次QE予想が出そろっています。ということで、いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下のテーブルの通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、GDP統計の期間である1~3月期ではなく、足元の4~6月期から先行きの景気動向を重視して拾おうとしています。いずれにせよ、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
日本総研▲0.8%
(▲3.3%)
4~6月期の実質GDPは、自動車メーカーの出荷再開や家計の所得環境の改善に支えられ、プラス成長に復する見通し。連合の春闘第4回回答集計によると、2024年の賃上げ率(定期昇給含む)は5.20%と33年ぶりの高い伸びに。夏場にかけて、春闘で妥結された賃上げの適用が広がり、個人消費が回復に転じる見込み。
大和総研▲0.4%
(▲1.6%)
2024年4-6月期の日本経済はプラス成長に転じよう。自動車の挽回生産が複数の需要項目の押し上げに寄与するほか、所得環境の改善などを受けて個人消費の持ち直しも続くとみられる。
個人消費は、インフレ率の低下や積極的な賃上げなどを背景に増加が続くと予想する。サービス消費を中心にコロナ禍からの回復余地は依然として大きく、実質賃金の持ち直しなどを受けて緩やかに回復するとみられる。また、国内の自動車生産体制は4月中におおむね正常化したとみられることから、挽回生産による耐久財消費の増加も期待できよう。
住宅投資は減少傾向が続くとみられる。住宅価格の高騰が続く中、持家を中心に軟調な推移が続く公算が大きい。
設備投資は増加に転じよう。日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(日銀短観)によると、3月調査時点における2024年度の設備投資計画(全規模全産業、除く土地、含むソフトウェア・研究開発)は前年度比+4.5%だった。3月調査時点としては比較的高水準であり、企業の投資意欲は引き続き旺盛だ。2024年度にはこれまで先送りしてきた更新投資や能力増強投資、人手不足に対応するための省力化投資などが徐々に発現しよう。デジタル化、グリーン化に関連したソフトウェア投資や研究開発投資も底堅く推移するとみられる。
公共投資は減少すると予想する。「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」の執行が下支えするとみられる一方、建設業などにおける人手不足が重しとなるほか、一部で1-3月期に大きく増加した反動が生じる可能性がある。政府消費は医療費の増加などを受けて、小幅に増加しよう。
輸出は、財・サービスいずれも増加するとみられる。前述した自動車の挽回生産のほか、海外景気の堅調な推移やシリコンサイクルの回復局面入りなどが財輸出を押し上げよう。サービス輸出はインバウンド消費の持ち直しや知的財産権等使用料、一部の業務サービスなどの趨勢的な増加が続くとみられる。
みずほリサーチ&テクノロジーズ▲0.5%
(▲2.1%)
1~3月期は年率▲2.1%のマイナス成長となり、経済活動が停滞したことを示す内容になる可能性が高いと予測するが、令和6年能登半島地震や一部自動車メーカーの生産停止といった一時的な下押し要因による影響が大きい(みずほリサーチ&テクノロジーズは、波及効果も加味して、これらによる自動車減産の影響により1~3月期のGDPが最大で▲0.8%程度下押しされた可能性があるとみている)。こうした一時的な下押し影響が一服する4~6月期にはプラス成長に転じるとみられ、自動車生産が持ち直すことに加え、春闘賃上げの効果が徐々に顕在化することが押し上げ要因になるだろう(ただし、自動車生産については、昨年末以上に稼働率を引き上げる余地は小さく、一時的な下押しが顕在化する前の水準には回復するとしても、それ以上の大幅な挽回生産は見込みにくい)。
2024年の春闘については、高水準で推移する企業収益や人手不足の深刻化等を受けて、前年を大きく上回る賃上げ率が実現しそうな状況だ。連合構成組合の賃上げ回答(第4回集計)は+5.20%と前年を大幅に上回る高水準(前年同時期対比でのプラス幅は+1.51%Pt)になっており、筆者が想定していた以上に強い数字だ(組合員数300人未満の中小企業も+4.75%と第3回から上方修正されており、これも想定外の強い数字である)。夏の最終集計にかけて中小企業の集計が進むにつれて下方改定される可能性がある点には留意する必要があるが、第4回集計時点では人手確保を目的に中小企業でも賃上げに取り組む企業の裾野が広がっていることを確認できる内容であり、最終集計も前年を大きく上回る水準(賃上げ率は5%台、ベアは3%台)で着地する蓋然性が大きくなっている。高水準の賃上げ率を背景に、所定内給与も4月以降徐々に伸び率を高めていくことで、実質賃金は改善に向かうことが見込まれる(ただし、大企業中心の連合集計値と比して毎月勤労統計は中小企業の割合が高いため、名目賃金の伸び率の加速度はやや抑制される可能性が高い点には留意が必要である)。株高による押し上げに加え、生産の回復に伴う自動車の国内販売の持ち直し等も重なり、4~6月期の個人消費は増加基調で推移すると予測している。
ただし、各種物価押し上げ要因により、物価上昇率が当面高止まることで賃上げによる押し上げ効果が減殺されてしまう点には注意が必要だ。東京都における高校授業料の実質無償化が下押し要因になる一方(東京都区部のコアCPI前年比に対しては▲0.5%Pt程度の下押し影響があるが、全国ベースでは▲0.1%Pt程度の影響とみられる)、再生可能エネルギー賦課金の引き上げや政府による電気代・ガス代支援策の終了を背景にエネルギー価格の再上昇が見込まれるほか、賃上げに伴う人件費の上昇はサービス物価を中心に物価押し上げ要因になる。いわゆる「2024年問題」の影響もあって運送業の人手不足深刻化により物流費の上昇が見込まれることに加え、昨秋以降の円安や足元の原油価格上昇に伴う輸入物価再上昇によるコストプッシュ(いわゆる「第1の力」)が食料品など財価格の下げ渋りにつながる公算が大きくなっており、コアCPIベースのインフレ率は夏場にかけて前年比+2%台後~+3%前後で推移する可能性が高まっている。実質賃金の前年比マイナスは当面継続し、個人消費の回復ペースが抑制される可能性が高い。また、サービスや半耐久財については、前述した1~3月期のうるう年要因の反動減が押し下げに働く可能性が高い点に留意が必要だ。
設備投資についても、4~6月期はプラスに転じるとみている。日銀短観3月調査における2024年度の設備投資計画(全規模合計・全産業、ソフトウェア・研究開発を含む)は前年比+4.5%と、3月調査時点としては高い伸びとなった。資材価格高騰等を受けて2023年度に実行しきれなかった投資が2024年度に繰り越された面もあるが、自動車や化学、生産用機械(半導体製造装置含む)等では過去の実績を大きく上回る設備投資計画になっており、EV関連投資需要の高まりや半導体市場の回復観測等を背景に、旺盛な企業の設備投資意欲が確認できる内容だ。先行指標である機械受注(船舶・電力を除く民需)をみても、1~2月平均は10~12月平均対比で+2.1%と非製造業を中心に持ち直している。後述の海外経済減速が重石になる一方、インバウンド需要の回復や、半導体関連産業の在庫調整の進展等が押し上げ要因になるほか、DX・GX関連投資や人手不足対応の省力化投資も顕在化することで、先行きの設備投資は回復基調で推移するとみてよいだろう。
輸出については、自動車生産の持ち直しや世界的な製造業サイクル・シリコンサイクルの回復が押し上げ要因になる一方、海外経済の減速が財輸出の逆風になるだろう。米国経済は、1~3月期の実質GDP成長率が前期比年率+1.6%と減速したものの、在庫や外需のマイナス影響が大きく、良好な雇用所得環境を背景に個人消費など内需は堅調な推移が続いている。それでも、これまでの金融引き締めの影響が企業部門を中心に顕在化することで、2024年前半にかけて景気は緩やかな減速基調で推移すると予想している(4月のPMIをみると米国は金利上昇や物価高を背景に新規受注が鈍化するなど景況感がやや弱含んでいる)。欧州経済については、金融引き締め効果の顕在化を受けて、2024年前半は軟調な推移になる可能性が高い。特にドイツでは、安価なロシア産ガスからの切り替えに伴う採算性の悪化等を受けた構造的な競争力の低下が今後も生産回復の足かせとなる可能性が高い。中国経済は、1~3月期の実質GDP成長率が前年比+5.3%と市場予想対比で上振れたものの、足元の小売売上高や固定資産投資、工業生産は力強さを欠き、景気回復の持続性には不透明感が強い。不動産販売は底ばいでの動きが続いているほか、在庫調整が続く中で不動産投資も減少基調で推移しており、当面は不動産部門の調整が経済活動を下押しする状況が続く見通しだ。こうした海外経済の動向を踏まえると、財輸出の力強い回復は当面期待しにくいだろう。機械受注(外需)をみても、1~2月平均は10~12月平均対比で▲1.7%と弱含んでいる。
一方、インバウンド需要の回復は継続が見込まれる。夏場にかけて航空便数が拡大する見込みであり、円安傾向が継続すれば先行きも2019年超えの訪日外客数が続く可能性が高いだろう。ただし、訪日外客数についてはタイやマレーシアなど一部の国で増勢が既に一服しているほか、一人当たり消費単価についても平均泊数(観光・レジャー目的)が徐々に縮小するなど、高水準ながらも回復ペースが鈍化する可能性が高い点には注意が必要だ。
さらに、政府の「デフレ完全脱却のための総合経済対策」、並びにその財源として成立した2023年度補正予算を受けて、防災・減災、国土強靭化の推進に係る公共事業が4~6月期も一段と進捗することが見込まれ、公共投資は増加傾向で推移しよう。
以上を踏まえ、4~6月期の日本経済は、海外経済の減速が輸出を下押しするものの、自動車生産が持ち直すほか、高水準の企業収益が賃金・設備投資に回ること等により内需が持ち直し、年率+2%程度のプラス成長になる可能性が高いと現時点で予測している。
ニッセイ基礎研▲0.4%
(▲1.6%)
2024年4-6月期は、2024年春闘の結果を受けて名目賃金の伸びが高まる中、所得・住民減税による可処分所得の押し上げ効果もあり、民間消費が5四半期ぶりに増加すること、高水準の企業収益を背景に設備投資が増加に転じることなどから、現時点では年率1%台後半のプラス成長を予想している。
第一生命経済研▲0.4%
(▲1.4%)
先行きについては緩やかな持ち直しが予想される。1-2月の落ち込みが響いたことで、自動車生産は1-3月期で見れば大幅減少となったが、3月単月では反発がみられ、4、5月も増産計画が示されている。自動車生産が正常化に向かうことが目先の生産押し上げに寄与する見込みだ。自動車減産の影響で1-3月期に下押された分が回復に向かうことで、個人消費や輸出等でも反発が予想されることから、4-6月期はプラス成長が見込まれる。その後も、24年後半に実質賃金のプラス転化が見込まれることが下支えになることで、個人消費は緩やかに持ち直すだろう。製造業部門の下押しが弱まることや底堅い企業収益を背景として設備投資も緩やかに増加する可能性が高い。これまで景気の足を引っ張ってきた内需に持ち直しの動きが出ることで、景況感も徐々に改善に向かうと予想する。
もっとも、物価上昇による実質購買力の抑制が消費の頭を押さえる状況は残る。再エネ賦課金の引き上げや電気代、ガス代の負担軽減策の終了でエネルギー価格が大幅に上昇することに加え、円安や原油高によるコスト上昇分の価格転嫁が行われることもあり、物価は当面高止まる可能性が高い。名目賃金の上昇率拡大により実質賃金は24年7-9月期にプラス転化し、消費を支えるとみているが、物価上昇の影響で実質賃金の増加幅は抑制される可能性が高い。コロナ禍からのリバウンドも終了したなか、個人消費の回復ペースは緩やかなものにとどまるとみられ、景気に加速感が出るには至らないだろう。
伊藤忠総研▲0.2%
(▲0.9%)
2023年4~6月期は、物価上昇の鈍化と賃金上昇が一段と進み実質賃金が前年比でプラスに転じるとみられ、個人消費の拡大が加速しよう。設備投資は日銀短観で確認された強気の計画が実行に移されることで再び増加に転じる見込み。米国経済の減速が予想され、欧州経済は底ばい、中国経済も回復力に欠けるため、輸出には多くを期待できないものの、実質GDP成長率は内需主導で前期比プラス成長を取り戻すと予想する。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング▲0.3%
(▲1.3%)
2024年1~3月期の実質GDP成長率(1次速報値)は、前期比-0.3%(前期比年率換算-1.3%)となり、日本経済は2四半期ぶりのマイナス成長に陥ったと予想される。物価高が続いていることに加え、能登半島地震や一部自動車メーカーの品質不正問題による工場稼働停止の影響、10~12月期にサービス輸出が一時的な要因で高い伸びとなったことの反動減等が下押し要因となった。
三菱総研▲0.5%
(▲2.0%)
2024年1-3月期の実質GDPは、季節調整済前期比▲0.5%(年率▲2.0%)と、2四半期ぶりのマイナス成長を予測する。
明治安田総研▲0.5%
(▲2.1%)
先行きについて、まず個人消費は、春闘における高めの賃上げが段階的に給与に反映されることや、定額減税などの政府の経済対策が下支えとなり、持ち直しに向かうと予想する。設備投資は、脱炭素・デジタル関連が引き続き底堅く推移するほか、自動車の生産・出荷再開が回復に寄与するとみる。半導体市況の一巡で製造装置等の増産に係る投資需要が増加することも追い風となろう。一方、外需は停滞気味の推移が続くと予想する。財輸出に関しては、中国景気が力強さに欠ける推移となることなどから、年度前半を中心に低迷持続が見込まれる。インバウンドは引き続き外需の下支え要因になるとみられるが、2024年度の日本景気の回復ペースは緩やかなものにとどまると予想する。

見ての通り、今年2024年1~3月期はマイナス成長ということでコンセンサスがあります。しかも、そのマイナス成長の原因は自動車の品質不正問題であり、改めて自動車産業について生産面での裾野の広さ、消費面での位置づけなどを、良くも悪くも確認した形となりました。私のように周囲に自動車産業で働く知り合いがなく、自分自身が自動車に乗っていない人間には、少し意外だった気がしますが、産業や耐久消費財として、日本における自動車の重要性を思い知らされた気がします。ただ、マイナス幅はややばらつきが見られ、年率でも▲1%に届かないとする伊藤忠総研から、▲3%を越えると予想している日本総研まで、かなりの幅があります。私の直感では▲1%台後半のあたりで、▲2%を超えないのではなかろうか、と考えています。ちゃんとした根拠はありません。
他方で、自動車生産は3月から正常化しつつあり、したがって、足元4~6月期はプラス成長が見込まれています。自動車にまつわる事情はペントアップが主ですので割愛するとして、円安が進行しているにもかかわらず外需の停滞が予想されています。私自身は、4~6月期の外需はやや上振れリスクがあると考えています。欧米先進国のソフトランディングと円安がその要因です。たっだ、中国の不動産市場次第では下振れリスクも顕在化する可能性が否定できません。それでも、4~6月期は内需に支えられたプラス成長に回帰する、というのが大方のエコノミストの緩やかなコンセンサスだろうと思っています。
最後に、下のグラフはニッセイ基礎研究所のリポートから引用しています。

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